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続・ゆらゆら揺れるワークとライフ

二年半経った現在でも伝説的(?)に語られる、私が今の会社に採用される決め手となった質問と、それに対する解答がある。
質問の方はごくごく一般的な
「あなたの苦手なことを教えて下さい」
で、当時の面接官(現在の上役)が何故中途採用でそんなしょうもない質問(現在の上司談)をしたのかさっぱりわからないが、そのときの私の解答が想定の斜め上どころか、鋭角30度くらいの猛スピードで面接官たちの思考をスパーンとぶったぎったらしい。

『え……っと、完徹です』
『あ、完全なる徹夜? です。さすがにずっと起き続けてはいられなくて。今も朝の五時くらいまではなんとか仕事できるんですが、動けなくなるので出勤時間まで二三時間は布団で寝るようにしています』
『ですからこちらでも、せめて三四時間は眠らせていただいて、健康的に働きたいと思っています!』

それ、健康じゃ、ないよ。

ちなみにそのあと
「徹夜したときの面白エピソードはありますか」
という更にアホな質問を畳み掛けられたのだが、本当に上役は何を考えていたのだろう。

実際、苦手なことなんてこれっぽっちも考えていなくて、新卒時代は「長所にも短所にもなる定番解答」を使い回すだけのスルー質問だったため(今思うとそれも微妙だ)、本当にあわてて、一瞬頭が真っ白になったところで思わず出てきた、みたいな解答だったのだが、最終面接でも「徹夜エピソードについて……」と振られた挙げ句、入社後上司に

「社長が、今度のやつはすごいよ、せめて二三時間は寝かせてくださいって言ったんだよ、と興奮していた」

と言われたことから考えるに、私はこの解答のお陰で人生の分岐点を無事に通過できたらしい。
何がプラスになるかなんてわからないもんだ。

***

旦那が転職を考えている、らしい。
もともと希望してついた職種だったが、30歳を間近に思うこともいろいろあるようだ。

確かに、疲れを表情ににじませながら帰ってくる姿を見るのはやや切ないものがあるし、最近は夕飯を食べたら体を縦にしておく元気もないようで、一度二階の寝室(メゾネットタイプ)へ向かったら、階下に戻ってくる可能性は限りなく低い。まあ帰ってくる時間が22時を回ることもざらなので、気持ちは本当によくわかる。

よくわかる……のだ、が。
こちらもフルタイム勤務(たまに持ち帰り)→夕飯作り→食べるの流れが終わると、無○良品の人をダメにするソファの上でダメになることしばしばである。
風呂掃除(先に入りたい場合は私が、その他は旦那が)、洗濯(干すのは二人だったり一人だったり)、食器洗い……旦那がやらないのならば、やるのは私だ。だって、夫婦って二人しかいないんだからな!

そんなある日、「皿を洗うよ」と声をかけると、ベッドに寝ていた旦那がガバリと起き上がった。
「いや、オレやる」
「いいよ、寝てなよ」
「や、やる」
そして旦那は言った。

「だって夫婦だから」

…………。
おおぅ…………。
一見すると脈絡なく感じる会話だが、ここしばらく自分が考えていたことと見事にシンクロした。

転職検討の理由の一つには、主夫業務のキャパ作り、も含まれているのかもしれない。
多分。
そうであってくれ。

***

私が転職をしたのは、いつか家庭を持って子どもを産み育てるなら、この会社(前職の編プロ)は無理かも、と思ったからだ。

私のいた部署には独身者か、子どもは既に大きく、かつ自分がメインで稼がなくてはいけない人か、小さい子どもがいるけれど、実家と義実家がすぐそばにいて、孫育て体制バッチリ、という特殊な環境下にいる人か、しかいなかった。
世間的によくいると思われる、旦那と子どもがいて、夫婦で協力して子育てをする、みたいなモデルケースがなかった。

転職しよう。

で、新しい会社で2、3年たったら結婚できるかもしれないから(当時予定は未定)、なるべく子どもがいる人が多い会社で、産休育休整っているところにしよう。
結婚するまでは、必死に働きますから。
どこかの会社さん、お願いしますよ。

……それなのに何であんな(冒頭)面接内容だったのか意味がわからないが、私はそこそこ安定した会社で、定時に上がってごはんを作る、そんな兼業主婦生活を送れるようになった。三、四時間寝れば動けるやつ、とどっさり仕事を押し付けられずにすんだのは幸いである。

***

今現在、旦那(普段は家事めっちゃやるが、疲れているときは見るからに生きる屍なので倒れさせる他ない)の激務ストデイ(激務、ゲキマー、激務スト)に自分がなんとか日常家事をこなせているのは、私自身に激務経験があり、深夜に仕事をしていたあの記憶があるからだ、とか思わなくもない。

もし夫婦二人とも激務だったら……と考えると、ゾッとする。今でさえ余裕がないのに、ぐちゃぐちゃの部屋で毎日インスタント食品(たまになら全然オッケーと思うの)をくらい、洗濯できずにこっそり同じ下着やヒートテックを身に付ける、そんな姿が目に浮かぶ。

夫婦になると、どうしても相手のワークライフバランスが自分のワークライフバランスに影響してくる。
この人生が自分のものであり、自分がその主役であることに間違いはないが、一人芝居が二人芝居になり、場合によっては登場人物が次々と増えることで、物語は思わぬ展開を見せる。
誰かと生きていくのなら、脚本は必ずしも自分の都合通りになるとは限らないのだ。

***

オチも結論もなく恐縮だが、結婚して得た実感として、これから家族を持つことを考えている人、そして転職を考えている人に、ちょっと聞いてほしくなったトピックである。

(2017/1/11)

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