糖尿病患者

基礎的知識

1.概念

 糖尿病は、非常に多様な不均一の疾患群であることが明らかになってきており、その疾患概念を1つにまとめるのは困難である。WHOは、糖尿病を「糖尿病は未治療の状態では、血糖が慢性的に上昇している状態(高血糖)によって認識される。糖尿病は口渇、多飲、多尿、体重減少などの症状を伴い、適切な治療がなさらなければ、昏睡や死に至るが、これらの症状の軽いもの、あるいは全く存在しないものもある。この高血糖や他の生化学的異常は、インスリンの合成、分泌の障害あるいは作用不足によるもので、また、糖尿病状態をもたらす病態はいくつもあり、病状の程度は主としてインスリン作用の不足の程度によって決定される。特に糖尿病患者では、網膜・腎臓・末梢神経に進行性の病変をきたし、さらに心臓、足、脳の動脈硬化病変の悪化をもたらす持続的な危険因子である。」と定義している。


アセスメント

アセスメントに必要な情報は以下のとおりです(患者の状態に合わせてアセスメントに必要な情報は増えていきます)


1.発症時の観察項目

(1)診断までの経過と誘因:主訴、家族歴、既往歴

(2)自覚・他覚症状:口渇、多飲、多尿、倦怠感、体重減少、合併症状

(3)検査データ:尿糖、血糖、OGTT、HbA1c、血液生化学検査(総T-P、中性脂肪、BUN、クレアチニンクリアランス)、眼底検査、胸部X-p、心電図

(4)治療方針・内容と患者の反応:食事・運動・薬物療法の種類、量、方法、施行状況、反応

(5)疾患に対する知識:内容(疾患の原因、症状、検査、治療、低血糖症状とその対処法、合併症、標準体重、食品交換表など)、程度

(6)疾患に対する反応、自己管理への意欲

(7)生活背景:食生活、家族構成、職業、活動の状態

(8)家族・周囲への反応、理解・協力の程度

(9)教育的医療スタッフ組織、教育プログラムの有無と内容


2.コントロール不良時の観察項目

(1)経過と原因:薬物の使用量、食事摂取状態・量、感染の有無と程度、疾患に対する理解度・意欲

(2)自覚症状と程度:口渇、多飲、多尿、倦怠感、腹痛、低血糖症状(空腹感、手指の振戦、発汗、不安感、頭痛、悪心など)

(3)他覚的初見:血圧、脈拍、クスマウル呼吸、ケトン臭、脱水症状(口腔粘膜や皮膚の乾燥)、意識レベル、神経症状(振戦、失語、片麻痺など)、水分摂取量と尿量(IN-OUT)

(4)検査データ:血糖、尿糖、尿ケトン体、電解質、動脈血ガス分析、血漿浸透圧、重炭酸塩

(5)治療内容とその効果・副作用:インスリン・輸液の種類、量、回数、時刻

(6)日常生活状況:清潔、排泄、睡眠、活動

(7)コントロール不良に対する患者・家族の反応


3.合併症発症時の観察項目

(1)発症時からの経過:罹患期間、コントロール状態

(2)合併症状の有無と程度

○ 眼の合併症状
 視力低下、屈折異常、調節障害
○ 神経障害
 ・四肢の自発痛、知覚異常
 ・歩行障害、眼瞼下垂などの運動障害
 ・悪心、便秘、下痢などの消化器症状
○ 腎障害
 浮腫、乏尿、全身倦怠感
○ 動脈硬化症状
 運動時胸痛、息切れ、間欠的跛行、足の冷感、足背動脈の触知不能
○ 感染症
 発熱、排尿痛、皮膚症状

(3)合併症に関する検査データ

(1)尿検査:(T-P、糖、ウロビリノーゲン、ケトン体、沈渣)
(2)血液生化学検査:(血清T-P、BUN、クレアチニン、尿酸、電解質、肝機能〉
(3)脂質:(総コレステロール、中性脂肪)
(4)眼底検査、視力検査、眼圧測定
(5)心電図
(6)胸部X-p
(7)神経伝達速度

(4)治療内容とその効果・副作用

○ 薬物療法(インスリンの種類・量)
○ 食事療法
○ 運動療法
○ 合併症に対する治療内容

(5)日常生活状況

(6)患者・家族の不安と反応


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