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行動主義心理学

18世紀の人間機械論や反射学の発展、さらに19世紀のダーウィンの進化論の影響から、人だけが意識を持った特別な存在である見方に対する疑念として、客観性をより重視する心理学が芽生えてきた。
 モーガンが提唱した「モーガンの公準」と呼ばれる解釈原理はその一例でこれによれば、動物の行動を解釈するとき、低次の心理的尺度(物理的あるいは生理的といったより単純な尺度)で解釈できるならば、それより高次の心的能力の結果として解釈してはならない。例えば、猫が水を飲むという行動を解釈するとき、体内の水分の減少を検知して行動が促進されていると解釈できれば「ネコは水を欲している」という主観的な解釈を禁止されることになる。
 このような動向の背景として、ワトソンを中心とする行動主義改革が起きた。彼は科学的な実験心理学が対象とできるのは客観的に観察可能な行動のみと考え、それまで意識を伴った内容として記述されてきた感情や欲求あるいは言語・思考などの概念を全て行動に置き換えた。そして、行動を生体に対する環境(stimu-lus)と反応(response)の頭文字をとってS R主義とも呼ばれる。
 同じ頃、ロシアでは、パブロフが条件反射と呼ばれる現象を発見した。犬の口の中に食べ物を入れると唾液が分泌されるのは反射だが、彼は、食べ物を与える前に、メトロノームの音を聴かせた。その結果、犬はメトロノームの音を聞いただけで唾液を出すようになった。これは条件づけと呼ばれ、ワトソンはこれこそが行動主義が研究すべきテーマであり、学習とは、経験によってある刺激と反応は結びつくことであると考えられる。これは、イギリスの連合主義を意識を排除して受け継いだものであり、SR連合主義とも呼ばれる。
注釈:人間でレモンや梅干しをイメージした時に唾液が出るのは先天性の反射ではなく、後天的に学習した結果で起きている。
 行動主義者の中にも、条件反射は、受動的すぎてヒトを含めた動物の学習原理にはなり得ないと考える人たちがいた。例えば、空腹のネズミをレバーを押すと餌が出てくる仕掛けの中に入れておくと、最初は偶然押していたレバーを餌を取るために押すようになる。スキナーはこれをオペラント条件づけと呼び、パブロフが発見した条件付けをレスポンデント条件づけと呼んで区別した。レバーという刺激と押すという反応に連合が形成されるという点ではSR連合主義だが、この連合はネズミが能動的に環境に働きかけなければ形成されない。この能動性を重視した立場は、新行動主義と呼ばれる。

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