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はんぶん素人のわたしが福祉の現場でお仕事をしています

はじめまして。〔ぬりえラボ〕という、オリジナルの塗り絵画像を無料で印刷できるサイトを2018年から運営しています。

現在約500画像を公開していて、学童保育や福祉施設、保育所などの活動を指導する方に役立てていただいたり、個人の塗り絵愛好家の方々に楽しんでいただいたりしています。

わたしが制作している塗り絵は、お仕事として携わっている福祉施設での絵画指導の活動のなかから生まれたもので、施設利用者さんの好みや適した難易度にあわせて線の細かさやテーマを工夫しながら描いたものです。

今回は〔ぬりえラボ〕の人気塗り絵の紹介をしつつ、福祉のお仕事にかかわって感じたこと。サイトを作るに至ったいきさつなどを振り返ってみようかと思います。

太陽と月の寓話

太陽と月の寓話

この作品は、塗り絵を作り始めた頃に描いたものです。

わたしは知的障がいのある方のアート活動の指導をしていて、お仕事をさせていただいている社会福祉法人さんにはいろいろな施設があり、ご高齢の方や10代20代の若い施設利用者さんや学齢期の子どもたちと、複数の施設で絵画・創作活動をしています。

このお仕事をさせていただくようになった最初のころ、それまでも絵画や美術の指導を生業としてきたのですが、やはり福祉分野の門をたたくことには不安もありました。

でも思って案じていたよりも飛び込んでみると、「別に何もかわらない」
というのが大ざっぱに言えば正直な感想でした。

施設を利用するみんなは、それぞれに生きにくさと困りごとがあって強いこだわりがあります。でもそれはずっと絵ばかり描いてきて、頑固でこだわりを捨てきれず器用になれない自分とどこか似ていて、こういったらなんですが「ここ、落ち着く」という懐かしいような不思議な感覚がありました。

人の感じ方は千差万別なこと、音の聞こえ方や光に対する反応、敏感さと繊細さ。人はみんな違う。

私は化学繊維に弱くて、木綿と絹以外の服が肌にふれるとかゆくてかゆくて1日中つらい。ウエストや手首がゴムだと肌が赤く腫れてしまう。でも見た目は健康そうに見られていたので、そういう泣き言に耳を貸してもらえることはまず無かった。

直射日光にも弱くて、運動会では私の顔が学年でいちばん真っ赤っ赤になってた。高校時代のクラスマッチ然り。わたしは教員免許も持っているのですが正規の教職員の道を選ばなかった理由の大部分は
「遠足とか運動会は私にはムリ」だから。
わかってもらえるとは思えないので親にも言いませんでしたね。

てことで私は支援する側の立場で福祉の世界に居ることになったのですが、メンタル的には支援される側の気持ちにやたら共感してしまう。
施設職員の先生方のように障がいのある施設利用者さんの安全管理をしたりケアをしたりという責任がない、なんとなく中間の立場なのです。

そして職員の方々が
「個々の感じ方の違いやこだわりを受け入れる」
という姿勢で利用者さんと接してらっしゃるのです。

わたしはどちらからも影響をうけます。

・感じ方が人と違ってうまくいかなかったり辛かったりする自分
・強いこだわりがある人を受け入れて良い方に導いていく役目

わたしの中に「支援する側」「支援される側」の両方の視点がうまれました。

福祉の現場にはいろいろな知恵の積み重ねがあります。

肯定的なメッセージを渡すこと。
個々の違いをうけいれるということ。

職員の先生方の姿勢に次第に影響をうけ、それぞれの利用者さんの様子を教えてもらい、手探りで勉強を始めたり、こうしてみたらと提案もする。

福祉の専門家としての資格はないけれど、美術分野はいちおう専門。

教えられ学ぶ立場であり、教える立場。
支援する側される側の、なにかどちらにも属さない不思議な浮遊感です。

そのことでわたしの中に、ふたつの視点がうまれました。

自分がこれまで感じてきたことは、よくあるよくあることだし変なことじゃない。ずっと隠してきたけれど恥ずべきことなんかじゃない。ほかの人は平気でも自分にとってはどうしようもなく不快で嫌なことはある。

という困っている自分を自覚することと、

がんばったね辛いね、でもおかしくないよ大丈夫だよ。そしたらこういう風にやり方を変えてみるのを試してみようか?。嫌だったらしなくていいけどちょっとだけやってみない?。何か変わるかもよ。

という、自分を優しく導く視点。

思えば自分に厳しかったのだなあ。不都合な自分は無いことにしてた。だから時々爆発して、迷惑かけてしまったりもした。

生きやすくなったのです。結論からいうと。

息がしやすくなったのです。

しんどさの事象が解決したわけではなかったのに、ほぼいろんなことすべてが解決した。いやそれは無いかな言いすぎかな。でも、

なんとかなるさね、と思えるようになったわけです。

そして、そのころの気持ちを思い出させてくれるのがこの、ごくごく初期に描いた塗り絵なのです。


2匹のネコと花もよう

2匹のネコと花もよう

この塗り絵は、お仕事をしている施設にいた白ネコちゃんがモデルです。
過去形なのは、いまはお空に戻ったからで、みんなに愛された気高い雰囲気のネコちゃんでした。わたしもたくさん遊んでもらった。ありがとう。施設で塗り絵をつくることのメモリアルな一枚です。


ぐるぐる動物大行進

ぐるぐる動物大行進

そんなこんなで施設でのアートの活動を通して、施設利用者のみんなの為に描きはじめた手作りの塗り絵が時間をかさねてずいぶんとたまってきました。

塗り絵の原画はたぶん同じものは二度と描けないので大事にファイルしてとってあります。それが部屋の棚でどんどん積み重なっていくのを見て、

これって一生たまり続けていくのかしら、

と、素朴に思いまして、なんのためにこれ大事にしてるんだっけ、という気持ちがふくらみました。

もともと、絵画教室的なことを立ち上げるんだろうなと、ぼんやりと未来を描いてはいたのです。ですが元からやっていた絵画講師の仕事と、それに加えて福祉の仕事でほぼ1週間がいっぱいになり、それをやめてまで、

場所借りて生徒さん募集して家賃はらって納税して、の
完全フリーランスの一国一城の主が夢、ということでもなかった。

でもやっぱり、なにか立ち上げたいな、自分にしかできないオンリーワンなこと発信できる人になりたいな、という思いはあったわけです。

そんなこんなで、棚にあふれる塗り絵原画を眺めながら、

「あ~、これかもな~」と思い至ったのが3年ちょい前。
さっそく原画をスキャンしまくり、まず無料のWixサイトをつくってみて、
あ、独自ドメインじゃなきゃお話にならないのね、と。
そして何の知識もないままにWordpressに挑みまして、なんとかかんとか自分のサイトを立ち上げました。

その際に、施設の職員の先生方にいろいろなアドバイスをもらったのですがやはり保育福祉をうたうにあたり、充実させるべきは「子ども向けコンテンツだな」という思いにいたって、知育の要素を取り入れたものや苦手だけど虫とか描いたりなどなどなど保育のための図案の充実にはげみました、その試行錯誤の中でのヒットがこの動物をテーマにした塗り絵です。

「動物塗り絵」で画像検索すると、けっこう上のほうで表示されます。おかげさまでGoogleでは今のところ1番めです(鼻息)。

この塗り絵がきっかけでサイトを知ってくださるかたも多くいらして、これもメモリアルな一枚です。

そして2020年。おうち時間の過ごし方が関心をあつめる年となり、
塗り絵、無料塗り絵というものが世の中で必要とされている、ということを実感した一年になりました。

わたしにとっては発表の場であり、ほんのすこしでもお役に立てたらな、の場。〔ぬりえラボ〕をよろしくお願いします。


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