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家を買ったら、仕事がついてきた。

はじめての村役場

あれは今年の3月30日のことだった。よく覚えてる、というよりも、スケジュール帳に書いてある。「13:00 山添村役場」
はじめての村役場である。

なぜ村役場へ行ったのか。
前回も話したように、山添村では移住をすると補助金をもらうことができる。そのためには古民家バンクを利用して家を購入する必要があり、必要書類提出のため役場へ行ったのだ。

先住者である友人から、役場の担当課に連絡を入れてもらっていた。「地域振興課の〇〇さんを訪ねればいいよ」と言われ、言われるがままやってきたわけである。カウンターへ行き担当者と話していると、奥から哀川翔を彷彿とさせるおっちゃんが出てきた。
哀「オモロイことやってるらしいじゃないの」
私「え?私のことっすか?」
どうやら友人が連絡した際に「こんなことやっている人が次に住みます」と紹介してくれていたようだ。そしてこの目の前の哀川翔は、私が訪ねてくる前にネットでいろいろと私のことを調べてくれていたらしい。

さっきから「哀川翔」とだけ紹介しているおっちゃんは、地域振興課の課長である。そろそろ哀川翔はやめよう。
何で奈良に来たのか、奈良でどんな仕事をしてきたのか、なぜ山添村へ引っ越すことにしたのか。課長に、私のこれまでの人生を話す。
すると課長は今出会ったばかりの私にこう言った。
課「うちの観光協会入りなよ」
私「え??」
(中略)
課「仏像好きやねんなぁ?」
私「はい」
課「うちの村長も仏像好きだから、今から村長室行こう」

はじめての村長

山添村役場は、平成29年に完成したばかりのピカピカな庁舎。その3階に村長室はある。課長はガツガツ村長室へと入っていく。
課「村長、この子、今度〇〇(大字名)に引っ越してくるんやって。仏像好きや言うさかい、連れてきましてん」
村長とはこうも簡単に会えるものなのか。アポなしで村長室を訪れたにもかかわらず、そのまましばらく村長と仏像談義。
課「村長、この子、観光協会の職員にどうかと思うんですけど」
村「ええやん、入りな!」
私「えぇ???!!!」

数十分いただろうか。さすがに村長も公務があるようで「次あるから」と出て行った。それでも課長と私は村長室で駄弁っていた。なんだ、この放課後のサークル感。
怒涛のような時間だった。そういえば私は、古民家バンクの書類を出しに来ただけだった。それにもかかわらず観光協会に誘われ、村長にまで会った。どうする?私。

数日後

山添村役場で謎の時間を過ごしたその週末。私は京都にいた。
私が誘われた山添村観光協会は、クラブツーリズムの顧問をアドバイザー役として置いている。まずは顧問に会ってみよう、ということで、クラブツーリズムの京都事務所まで来たのである。
私「はじめまして、安達です」
顧「安達さん、そもそもうちでガイドしてくれてるよね」
話が早い。クラブツーリズムの仕事をしていてよかった。自己紹介するまでもなく、過去の私の仕事を知ってくれている。
私は普段、それほど多くはないが、"ホトケ女子"の名でガイドの仕事をしている。クラブツーリズムのツアーでは、数年前に7ヶ月連続で奈良県の社寺をまわるシリーズを、昨年は聖徳太子ゆかりの地を巡る2泊3日ツアーを実施した。
そうなんです、私、クラブツーリズムツアーのガイドしてるんです。
顧「山添村としてもちょうどこういう人材探していたわけだし、いいじゃない」
私「ありがとうございます」
ポンポンと話が進み、お昼でも食べに行こうかと近所のお寿司屋さんに向かう。京都で寿司…。ランチとはいえ恐ろしく高いかと思ったら、普通の料金で安心する。寿司、好き。

5月1日

はじめての山添村役場から約1ヶ月。私は新たな名刺をもらっていた。右下にいるのは、山添村のキャラクター「てんまるくん」である。カラス天狗だ。引っ越す前から、個人的に好きなゆるキャラである。

2022年5月1日、私は山添村観光協会のコーディネーターとなっていた。

改めて時系列を復習すると、
・山添村の家を勧められる
・家の購入を決断
・契約
・役場に書類提出
・山添村観光協会のコーディネーターになる
お気づきであろうか。この時点ではまだ、私は山添村に引っ越していない。更にいうと、家を買ったら後から仕事がついてきた状態だ。棚ぼたにもほどがある。

家を買うことも、観光協会に入ることも、全くの想定外である。家を買うのはさすがに2ヶ月ほど悩んだが、観光協会はほぼ悩まなかった。なぜなら、それより前にもっと大きな決断(家の購入)をしてしまっているから。家買ったんだ、きっと観光協会の仕事もなんとかなる。
あとはやはり何と言っても“必要としてもらえたこと”が嬉しかった。たまたまとはいえ、山添村に引っ越すことになり、「さぁてこの村でどう暮らしていこうか」と、完全に右も左もわからない、知り合いもいない状態で、仕事をいただけるというのは本当にありがたい。仕事を通じていろいろな人に出会うだろう、多くのことを学ぶだろう。おそらく、一人で暮らしているだけでは得られないものが、ギュギュッとこの仕事に詰まっている。

家を買った、仕事も決まった。私の山添ライフはどうなっていくのだろう。
いよいよ、山添村での生活が始まる。

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