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旅に出たくらいじゃ人間変わらねぇ!「日本をゆっくり走ってみたよ」


#マンガ感想文

日本をゆっくり走ってみたよからいの娘のために日本一周~  吉本浩二

旅行ではなく旅に憧れます

ぼくは四十代の男性ですが旅に憧れています。計画的な旅行ではなく、風の吹くまま的な旅です。小学校のころは「男はつらいよ」の寅さんや、「裸の大将放浪記」の山下清に憧れていました。

青年期には猿岩石がヒッチハイクをするテレビ企画が人気でしたし、旅とは違いますがカナダやオーストラリアにホームステイをするのが流行ってまして、知人でも何人か経験者がいます。

大人になると生活にしがらみだらけで「ここではないどこかへ」逃げ出したくなるじゃないですか。おまけに旅に出ると自分探しという6歳の独か、殻をやぶって仮面ライダーでいうところの新フォーム?が手に入って成長するイメージを持っています。

仕事のなくなった漫画家が日本一周

で、この漫画。仕事の途切れた漫画家がバイクで日本一周するんですよ。36歳の独身漫画家なのですが、実家に帰った好きな女がいるのですよ。その女に会うために、唯一の趣味であるバイクのツーリングの途中で寄ったといえば自然に再会できる……そしてどうせなら日本全国1周すればタフな男になれるのでは?

そんな理由で日本一周の旅に出ます。

そして日本1周した暁には宇都宮にもどり、女と再会する約束をしてもらいます。そのときに告白する流れ……できましたね。

旅先で話しかけられても

旅の醍醐味といえば美しい風景や、美味な特産物などがありますが、なによりも人との出会いです。

けれど感動的な出会いは特にない。

それどころか、淡路島にて食堂で働いている青年に馴れ馴れしく声をかけられ「泊まるとこ紹介しよか?」と親切に言ってくれているのに「キャンプ場でテントしてるから」とことわり「合わし

すてのきとはなんでも聞いてや」「ここの玉ねぎは日本一うまいんや」とフレンドリーに接してくれているのに

「あいつ、オレに何をもとめてんだ?」

と、戸惑う次第ですよ。この消極性じゃ一皮むけようがありません。

好きな女のために日本一周してるのに風俗に行っている…

そこまで正直に描かなくていいのに、ちょいちょい風俗に行っている描写があるんですよ。面白いからいいんですけどね……。

大学時代の友人たちに会いに行く

特に感動的な出会いはないですが、日本全国に散らばった大学時代の旧友たちや、元アシスタントに再会してああだこうだやってる部分は面白かったです。実家に帰ったら父の浮気が原因で両親がギスギスしていたり、ゴシップ的に楽しめます。

やっぱり一人でいてもドラマは起きず(そもそも人見知りする)ブックオフで買った推理ものの小説を、テントで読みふけるのが楽しみになっていた展開に驚きました。東京の生活といっしょじゃね?と気づくくだりなんか、かなり好きです。

そして好きな娘と再会する。

ここまでレビューを読んだ方たちは、恋の行方はどうなるか、なんとなく察していると思いますが、結末は読んでからの楽しみに。巻末にその娘との対談(活字)が載っていて、赤裸々に語っています。攻めた内容です。

ちなみに映像化もされている。

ちなみに濱田岳さん主演でドラマ化もしています。こちらはまだ未視聴なんですが、漫画とは違う展開を見せてくれるのかもしれません。

作者の吉本浩二さん、いまはこの漫画がすごく売れてるっぽいです。この漫画もドキュメント風なのですが、作中では結婚していて子どももいます。モラトリアムをうまく卒業して、大人になったんだなと安心します。

相変わらずスケールの小さいセコい思考回路で、読んでいて共感ばかりというか、応援したくなる人柄です。漫画がバカ売れしてもそのままの貴方でいてほしいです。

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