「ロマネ・コンティは大した事無い」
ポロっとこうおっしゃったお客様がいらっしゃいました。
ロマネ・コンティとはおそらく世界で最も高価なワインとして、果てしなく高いワインの代名詞的な存在のワインです。
恐れ多くもその世界一高価なワインに対して、「大した事なかったよ」とおっしゃるのです。
値段を考慮してこれは普通は有り得ない感想なのですが、私はたぶん本当に「やっぱり大した事無かったんだな」と共感しました。
今回はあえてこう誤解を招くような切り出し方で、始めていこうと思います。
1. そもそもロマネ・コンティとは?
・名称:Romanée-conti
・生産地:フランス ブルゴーニュ
・葡萄品種:ピノノワール
・メーカー:DRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)
・市場価格:1本(750ml)100万円は下らず、良年のワインなら200万円〜300万円
高級ワインで有名なあのオーパス・ワンが市場価格4万円〜6万円なので、良い年の値段で比べればこれはオーパス50本分に相当します。
2. 単一ワインとブレンドワイン
値段の話の一例としてなぜオーパスワンを出したのかという事に、実は意図的な目的があります。
それはまずロマネ・コンティと、オーパスワンの両者には決定的な違いがあるからなんです。
まずロマネコンティの原料となる葡萄の品種はピノノワール1種ですが、オーパスワンで原料として使用されている葡萄は、
・カベルネ・ソーヴィニョン70%~90%前後
・カベルネ・フラン10%未満、
・メルロー10%未満、
・プティ・ヴェルド 10%未満、
・マルベック1%~2%
これら計5種類の葡萄のブレンドで作られています。
両者の味わいは、各原料の違いから明らかに異なる印象を呈しますが、それではこの1種類の葡萄で作ったワインと5種類をブレンドして作ったワインではどちらの方が優れているのかと、これを決める事は絶対できません。
比べる土俵が全く違うからです。
そして、どちらにもそれぞれの魅力というものが存在しているからです。
3. ピノノワールとカベルネ・ソーヴィニヨン
さらにフォーカスしたいポイントが、オーパスワンはカベルネ・ソーヴィニヨンという葡萄が主な原料だという事です。
このカベルネ・ソーヴィニヨンという葡萄品種と、ピノノワールという葡萄は全くと言ってよいほど違った個性を持つ品種です。
カベルネ・ソーヴィニヨンから作れるワインには、「色が濃く、がっしりと飲みごたえが抜群な力強い印象」。
それに対して、ピノノワールのワインには、「透き通るような色に、滑らかで優しく染み込んでいくような印象」が、感じられます。
どっちが良いのかではありません。これに関してはどっちが好きかです。
4. あれ?
この違いを踏まえてからまた最初に戻ってみると、もし「カベルネ・ソーヴィニヨンが自分の好みだ」という方がロマネコンティを飲んでみたその時に、
「あれ?この前飲んだオーパスワンの方が美味しいかも?」
と感じたとしても、何も変なところはありません。その方がむしろ値段に物怖じをせず、純粋な直感の感想を言ったまでの事です。
好みからすれば、当然オーパスワンの方が美味しく感じるでしょう。
5. 人それぞれの価値観
「高価なワイン=美味しいワイン」を定義とするならば、美味しいと思えるのかどうか、それがそのワインの真の価値を判定する基準になるという事になります。
そして、何が美味しいと感じるのかは人それぞれです。
全く食に対して関心の無い方もいれば、世界中の美味しいものを食べ歩く美食家もいます。
その両者の口に入れる物に対する価値感には、子供と大人程の差があるはずです。
6. 世界一高価なワインを探す旅へ
この話の結論で、結局私は何が言いたいのかというと。
自分にとって世界で最も高価なワインとは、別に雲の上ほどにあるとは限らないという事です。
値段が高いからといって、今の自分にとってそれが相応に高価な物という訳ではないのです。
それは「自分の身の丈にあったものを選ぶべし」と言いたい訳ではなく、「本当に高価なワインとは、必ずしも値段が全てでは無い」という事を言いたいのです。
とてつもなく感動してしまう程のワインは、もしかするともっともっとあなたの身近な所にあるかもしれないという事。
ぜひ今後のワインを探す際に、そんな心持ちで臨んでみてはいかがでしょうか?
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