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私が着付師になるまで⑦

「その先」を探して

 公務員を辞め、自由に仕事を選べるようになった私にとっては、ひたすら経験を積むことが翌年の検定対策かなと思いました。しかしコロナ禍ではレギュラー勤務未経験の私など、どこも雇ってくれるわけありません。
 あの頃は「カリスマ」とか「ベテラン」といわれる程の美容師・着付師でもない限り、仕事は回ってこなかったのではと想像します。なぜなら、冠婚葬祭の集まりですら控えるよういわれていましたから。
 そんなわけで私は、着付の仕事ができるチャンスを探りながら、不織布マスクが品薄になった影響で大忙しの手芸材料店でアルバイトをしていました(なお、この手芸材料店では翌年以降も繁忙期に短期バイトとして働くようになるのですが、それはまた別の話ということで)。
 そして秋口、近所のフォトスタジオで求人があったので応募したところ、念願叶って採用されました。

ここで修業するぞ!

 私はこのスタジオでは最年長スタッフでした。
 この年齢とスキル不足のせいでしょう。私の仕事はアシスタント業務が中心で、衣裳準備と片付け・洗濯・縫い物・掃除などでした。接客オペレーションの覚えは悪く、使いにくいスタッフと思われていたかもしれませんが、その時できることをコツコツやろうと心掛け、やりがいを持って働いていました。
 一方、着付教室はというと、仕事の休日と開講日が合わなくなってしまいました。
 「先生、私、実はフォトスタジオの着付の仕事に就きました。教室はやめたくないのですが、当分通えないです」と電話で相談したところ、先生は「(仕事の方を)頑張ってね。こちらは2年間は休室扱いにできるから、それまでだったらいつでもいらっしゃい」とエールを送ってくださいました。
 先生、1年余りの間のご指導には本当に感謝しております。どうもありがとうございました!

美容師と(自称)着付師

 ここの美容師達は皆、私より一回りも二回りも年下でした。着付の経験年数は同じ位か短いかも…といったところです。
 入社間もない頃の相モデル練習のとき、私の着付は苦しいと指摘されました。交代し私がモデルになって着付けてもらうと、なるほど、確かに窮屈さがない。かといって緩くはない。
 主観ですが、当時の私のやり方との違いは以下のとおりです。

補正の作り方
 体型にもよるが、腰周りの補正はタオルを厚めに重ね、しっかり入れる。おかげで腰紐は締まっているのに食い込み感はない。
 既製品(パッド類・紐を縫い付けたタオル等)には頼らない。

裾の決め方
 
丈は撮影用なら椅子に座ったとき生足首が見えない長さ。七五三の外出用ならくるぶし位。要するにシチュエーションで異なる。
 シルエットは極端な裾つぼまりにしない。上前の褄先はほんの少し上げる程度で、正面からは下前が見えない。

襟合わせ
 衣紋の抜き加減はヘアスタイルを見て調整する。
 首が動かしにくくなるほど襟を詰めない。

個性に寄り添った着姿
 モデルの美しさを引き出すことと着心地の良さを追求すると、仕上がりはセオリー通りとは限らない。

 美容師一人一人に、どこで着付を習ったのか、または以前どこで働いていたのかは聞いたことがありません。
 これも流派なのか? はたまた着付の目的が異なるからか?
 断言できるものではないでしょうが、美容師の着付と、私が習ってきた着付教室の着付とで違いがあることに、ここで仕事し初めて気づきました。

自装では便利に使うパッドだが、他装で用意されていることはまずない!
だから補正作りのマスターは大事。

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