見出し画像

赤ちゃんの鼻詰まり、おっぱい

赤ちゃんが、乳を吸えない。うまく、吸えない。
最初、それは小さく生まれたからなのだと思っていた。小さい口では、乳首を咥えることが難しいのだと。
でも、それは違った。ただ、彼は鼻が詰まっていて、乳が吸えないのだった。
鼻詰まり、それはとても苦しい。鼻が詰まっていると気持ちよく眠れないし、鼻が詰まっている間中はずっと、気がそちらに散ってしまうものだ。私は鼻炎持ちなので、鼻が詰まって乳が吸えない彼の気持ちは、よくわかる。鼻が詰まっていると、何事にも集中できないというものだ。
生まれたばかりの数日の間は、本当に乳首を咥えることが難しかったのだと思う。たったひとりでお腹の中から出てきて、たったひとりの力で乳を吸うことを体得しなければいけないのだから。それはうまくいかなくて、当然だ。見よう見まねも、何もないところからの生の始まりで、生まれ出てきた赤ちゃんの、大変な仕事である。考えても、ちょっと想像し難い。
出産後の入院中は、たくさんの助産師さんに手伝ってもらいながら、授乳と哺乳をこなした。それでも、授乳はうまくいかなかった。私の授乳が軌道に乗ったのは、退院して家に帰った後だった。
赤ちゃんの鼻詰まりに気がついてから試行錯誤の結果、赤ちゃんの鼻詰まりの解消に手放せなくなったものがある。それは、京都の清水寺に通ずる二年坂にある店、竹の店かめやまの耳かきだ。このかめやまの耳かきに出会って以来、私の耳はこの耳かきしか受け入れない。絶妙に指に馴染む柄に、人の気持ちを読むような竹のしなり具合。耳の穴にぴたりと吸い付く匙。それが耳の垢をかき出すと同時に、耳の内部をマッサージする。柔らかな竹の感触が、何とも気持ちいい。友人のスペイン人が日本に旅行した際に、お願いをしてわざわざ買って来てもらったほどに、この耳かきは手放せない。この耳かきの匙の部分に綿を巻きつけると、赤ちゃんの鼻の穴の大きさにちょうどいいのだった。

画像1

体重が増えると、鼻が少し詰まっていても、乳を吸えるようになった。そして鼻が詰まると、泣いて訴えてくる。口で赤ちゃんの鼻水を吸い出すという話を聞くれけど、そんなことができるだなんて、とても信じられない。かめやまの耳かきが手元にあって、本当によかったと思う。手元にある減った在庫を買い足しに、今すぐにでも京都に行きたいものだ。

画像2


この記事が参加している募集

#子どもに教えられたこと

33,172件

サポートをする。