ナナバン

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マガジン

  • 雑文集

    ブログやnote、ツイッターに書いたあれこれのアーカイブ。

  • 140文字の感想文

    ツイッターに書き散らした、小説や映画なんかの感想。

  • 切り抜き小説

    小説の一部を切り抜いてみれば、想像力がムラムラします。

  • 写真のひとこと

    トイカメラの写真と、何らかのテキスト。

  • 私的広告年鑑

    街で見かけた広告を、全力でおもしろがるシリーズです。待て、新作!

最近の記事

20240324

ツイッターで人気のネタアカウントなどを見て、ひとつもおもしろく感じられないことがまあまあある。でもそれをあえて口にすると、「俺、人とは違うからさ」と履き慣れない個性をさも愛用品のように身につけて颯爽と歩く大学生みたいで恥ずかしいから黙ってるんだけど、まあ、つまらないよね。

    • 映画『落下の解剖学』(2024)

      映画『落下の解剖学』を観た。タイトルとキャッチコピーを見て、てっきり事件の真相に迫っていくようなサスペンス映画だと思っていたのだけど、まったく違った。いまの(少なくとも僕の)家族観や夫婦観を問い直す、法廷ドラマだった。裁判結果を聞いた息子の表情が印象深い。あと、犬の存在感がいい。 いまという背景があるから作られて、いまという背景があるから考えさせられる映画なのかもしれないと思った。かと言って押し付けがましさはない。そこの距離感というか捉え方と見せ方がうまいのかなあと感じた。

      • page23 都会の狩人

        街の再開発で、一帯は工事が行われている。簡易フェンスに掛けられた垂れ幕には、次のように書かれていた。「バス停移動中」。我々はまず、バス停を捕まえなくていけないようだ。どこかで止まっていればいいのだが。

        • 20220727

          メガネを新調してガッツリ視力を補正したのだけど、ネットを見たり本を読んだりするのは以前の度数がちょうどよくて、家では古いほうを掛けている。するとつい、出掛けるときにも古いメガネのままになることが多くて、なんのために新調したんだろうと思っている。

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        記事

          page22 彼は家族

          息子は学校から帰るなりキッチンへやってきて私に尋ねた。「ねえ! 昔はタロウも喋れたって本当?」タロウとは飼っているペットの名前だ。私は息子の顔を見て、注意を与える。「帰ったらまずは充電でしょ」それは私たち機械が地球の主役となって人間を飼い始めてから、幾世代も経った日の午後。

          page22 彼は家族

          『極北』 マーセル・セロー/村上春樹 訳

          小説をひとつ読み終えたとき、「こんなにもおもしろいものがあったのか」と驚嘆し、感動し、それを拙いながらも文字にし、誰かへ伝えたくなることがある。あるいは少し先の自分に、記録を残したくなる。僕は今までにあまり多くの小説を読んでこなかったから、けっこうな頻度でそういう機会に恵まれる。 若い頃にもっと本を読んでいればなあと思わなくもない。その後悔は、十代の僕がどう感じたのだろうという好奇心に起因する。けれど過ぎた時間はどうしようもない。なによりも、眼鏡が欠かせないとはいえ僕の目はま

          『極北』 マーセル・セロー/村上春樹 訳

          page21 人情噺

          男が蕎麦を手繰ると一匹の江戸っ子が釣れていた。まだ子どもの江戸っ子だった。男は不憫に思い逃がしてやった。てやんでえと言って江戸っ子はつゆのなかに消えた。後日、再び男が蕎麦を手繰っていると、海老天が釣れた。男はあのときの江戸っ子を思い出し涙した。こうして蕎麦つゆはしょっぱくなった。

          page21 人情噺

          『悲しみ』 レベッカ・ブラウン/柴田元幸 訳

          どことなくシチュエーションが不鮮明で、けっきょく最後までぼやけていた。いや、わかるといえばわかるし、書かれている通りなのだろうけれど。しかしそういった不鮮明さが、かえって別離の本質をくっきりと浮かび上がらせているように思えて、僕はとても好きだった。 (この短篇をどこで読んだのか思い出せない。アンソロジーみたいなものだったような気がするのだけど)

          『悲しみ』 レベッカ・ブラウン/柴田元幸 訳

          page20 生き残るための犠牲

          太古の昔、地球には大型連休がいた。彼らは様々な種に進化を遂げ、支配者として君臨した。なかには120日を超える超大型連休もいた。しかし栄華の時代は長く続かなかった。隕石の衝突とその後の気候変動により、大型連休は徐々に姿を消した。現在見られる九連休などの小型連休は、その子孫たちである。

          page20 生き残るための犠牲

          20230611

          きょう出掛けているときに聞こえてきた会話で興味深かったのは、大学生くらいに見える女性二人組が「ZARAって高いよなあ」「うん、ZARAはいいわ」と話していたことだった。もちろん金銭感覚に個人差はあるし、学生時代はとにかくお金がないものだけど、今はZARAが高いと言われるんだなあと思った。

          page19 生態調査

          白地に黒い縦縞の入った服を着て、男たちは棒で球を叩き、地面を走り回る。周囲には大勢の人々が詰め掛け、怒号と歓声が飛び交う。春から始まるその奇妙な祭りは秋まで続く。縦縞集団が一人を空中に投げると、呼応して人々は川へ投身を図る。報告を聞いた宇宙人たちはざわめいた。なんと野蛮な種族だ!

          page19 生態調査

          page18 ドア・トゥ・ドア

          満員電車が辛いと彼は言った。だったら車で通勤するかいと彼は聞かれた。車の運転は苦手なんですと彼は答えた。じゃあ自転車でもいいよと彼は言われた。夏は暑いし冬は寒いじゃないですかと彼は言う。じゃあどうしたいのと相手は辛抱強く尋ねた。彼は真剣に考える。ジップライン通勤はダメですか。

          page18 ドア・トゥ・ドア

          20230517

          こんばんは。Steady&Co.世代です。 Steady&Co.世代であり三木道三世代でありB-DASH世代です。 Steady&Co.はアルバム『CHAMBERS』を1枚出しただけの限定ユニットだったけど、00年代の日本における音楽の流行りというか、社会の空気感をギュッと詰めた音楽だったような気がする。いま聞いてもカッコいいと思うんだけど、それは当時の僕が熱心に聞いていたからかもしれない。 みんなで聴こうぜチェンバース!

          page17 サングラスは投げられない

          高速道路を走っていた。後ろから赤い回転灯の光が見えた。光は徐々に近づいてこちらの後ろに付き、停止を求めた。路肩に寄って止まると、中から二人の男が降りてきた。「ご存知なかったかもしれませんが」と一人が言った。もう一人は無線で何か話していた。「マラソンコースはこの下なんです」。

          page17 サングラスは投げられない

          page16 猿の話

          山から猿が下りてきた。そのとき初めて、自分の住む町の山に猿が居ることを知った。猿はコンビニへ入っていき、ツナマヨのおにぎりを取っていった。レジにはどんぐりが二つ、置かれていた。山から猿が下りてきた。そのとき初めて、自分の住む町の山に居る猿は、ずいぶん律儀な性格なのだと知った。

          page16 猿の話

          『野火』 大岡昇平

          大岡昇平『野火』を読んだ。丸谷才一によると、現代口語文を生み出したのは明治以降の小説家たちであったという。つまり僕らが使っている、この文章というものは、せいぜい150年くらいの歴史しかない。そうして見たときに、本作は現代口語文のひとつの到達点なのではないかと感じた。圧倒される。 文章の良し悪しについては様々な見方があるにしても、ひとつ確かなのは「伝えたいことが伝わるか」だと思う。つまり中身によって文章は変わる。新聞記事と恋文がまったく同じ文章にはならないように。そして小説が

          『野火』 大岡昇平