【読了004】ミネット・ウォルターズ『養鶏場の殺人/火口箱』
ミネット・ウォルターズの作品ってどれも分厚くてなかなか気軽に手に取れないんですが、こちらは中編集ということでさくさく読めて、しかも面白かったので大変良かったです。良かったんですが、
……あれ、私かな……?
……あれ……私かな……?
という感じでね、ちょっと、作者の意図とは全く違うところで一人ダメージを受けていました。こういう人間ってやっぱり自分以外にもいるいんだなって、若干安堵のような思いも抱いたり……慰めにはならないですが。
『養鶏場』の方は実話ベースだそうで、緩やかに破滅に向かっていく二人を周囲が完全に放置しているのが何とも言えないですね。エルシーの方の両親が彼女を完全に放置する気持ちは分からないでもないですが、ノーマンの方の親御さんはもうちょっとどうにかしてあげられなかったのか。
エルシーはもちろんあんなでしたけど、ノーマンの方にも若干、何かあったんじゃないかな……という感じがちらほら。かけ合わせちゃいけない……というか、セットにして放っといたら確実にややこしいことになるのが目に見えてる二人ではあったなあ、と。
『火口箱』の方で残念だったのが、知識不足で「アイリッシュとイングリッシュの関係」をよく分かってなかったことですね。こういう本を100%楽しむためにも、やっぱり世界史の勉強はちゃんとしなきゃな……
過去と現在が行き来する手法は混乱するので苦手だし、狭い村の中での差別や偏見がどんどん膨らんでいく様子がすんごく息苦しいし……なんですが、全然目が離せなかったです。
ミネット・ウォルターズは人間のイヤな部分を描くのが上手いですね。それだけじゃなくて、「黒か白かだけでは片付かないところ」を描くのも。
読みやすいし興味深いし、ミステリーとしてもすごく高品質。得した気分になれる中編集でした。
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