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奏(騒)楽都市OSAKA ―思い出のゲーム3選その3―

学生時代、とりわけよくプレイしたゲームが三つある。
20年以上が経過したので、記録しておくことにした。

奏(騒)楽都市OSAKA

(1999年、TENKY/キングレコード、PlayStation)

――この星で、初めて全世界に己の言葉を響かせるのは誰だ?――

「都市シリーズ」で著名な川上稔氏が総監督を務めたゲーム。
「奏(騒)」と表記しているが、本来は「奏」の下に「騒」がある一つの漢字で、川上氏の創作である。
同名の小説と設定は共通するが、登場人物には直接の関連はない。

小説から2年後、1998年の大阪が舞台となる。

過去の出来事によって宇宙開発が不可能になり、ゆえに長距離ネットワークが存在しない世界において、大阪に全世界広報塔BABEL(高さ3333m!)が完成しようとしていた。その初使用権がなぜか学生に与えられることになり、新聞、ラジオ、テレビを使ったBABEL争奪戦が繰り広げられることとなった。
学生同士でそれらのメディアの売り上げを競い、勝ち抜いた者がBABELを用いて世界に言葉を届けることができる。こういう世界観の物語である。

主人公は、BABEL争奪戦に参加するため、東京から転校してきた学生。この世界では都市間の交流は薄いので、転校生といえど異邦人である。何人かの候補の中から仲間となる広報委員を選び、編集長として彼らと新聞を発行しながら学生生活を送る。当然、平穏な生活なわけはなく、学生同士、あるいは企業の思惑に巻き込まれながら、BABELを求めていくことになる。

このゲームの特徴は、圧倒的なイベント数とテキスト量。
イベント数は1,300、総シナリオは文庫にして17冊分だそうだ。
新聞の発行数を競う、という性質上、記事になるニュースを探すのが日々のミッションになるのだが、小ネタ、スクープ、ときにはガセネタまで、驚くほどに種類が多い。

仲間に指示を出し、記事を集める

「BABEL出場者の軌跡」、「大阪を動く企業工作員」など、硬派な記事から、
「南大門学院、青カビに死す」、「十尺玉暴発!」といったおふざけ系、
「0対122、試合放棄せず」といった、元ネタを知っていればクスリと笑えるものまで、より取り見取りである。

体育大会では、42.195kmの助走をした後の走り幅跳び(ファウルすれば助走からやり直し)など、いちいちスケールが大きいのも楽しい。

また、BGMがクラシック音楽ばかりなのも印象的で、火曜日から土曜日までの音楽はホルストの「惑星」だし(残念ながら、月は惑星ではない)、主要人物のテーマ曲も、「コッペリア」、「威風堂々」、「魔法使いの弟子」など、キャラクターにマッチしたものが選ばれている。

若き日の川上氏が全力投球で遊んでいるのが随所に感じられるこのゲーム。
システム面は意外なほど癖がなく、非常にプレイしやすい。

それでいて、「初めの寄せの部分ではバカやって、中盤くらいからキャラクターが見えてきて、終盤一気に重くなる」との川上氏の言葉どおり、やりごたえも十分。

決してメジャーな作品ではないが、置鮎龍太郎、屋良有作、池澤春菜の各氏など、声優陣も豪華で、ファンならプレイして損はない。


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