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胸骨正中切開で縦隔腫瘍を摘出した話(3:検査)

PET検査(造影CT検査)

前回少し触れたが、PET-CTや造影MRIはそれぞれ保険適用外だと約10万円の費用がかかるが、保険適用だと約3万円くらいで済む(3割負担の場合)。健康診断や人間ドックで癌検査オプションを付けると20万円以上の費用がかかるのは、これらの検査が全額自己負担になるからだ。
だからこの時点で自分の診断名には「病名:癌」とはっきり書かれている。
正しくは「癌疑い」なのだが、制度上、医師から癌と診断されないと諸々の検査が保険適用にならない。
医師は何回も「気にしないでください」と言ったが、それでも診断名に癌と書かれているのはあまり気分の良いものではない。

PET-CTとは造影剤(微量の放射性物質を付加したブドウ糖)を用いて行うCT検査だ。検査6時間前から絶食し、体内の血糖値を低くしておく。そこへ造影剤を注入すると、造影剤の付いたブドウ糖が脳や器官に取り込まれる。もちろん細胞分裂が活発な癌細胞があればそこにも取り込まれる。取り込まれた造影剤は微量の放射線を放出するので、その瞬間をCT撮影すると癌細胞の有無や場所が判明するというものだ。すごいことを考えるものだと感心する。
予約した日時に病院併設の検査センターに行き、検査前の問診を受ける。
問診では前日の食事や飲み物の内容や摂取時間を詳しく聞かれ、糖尿病の検査で行われるようなペン型の採血機で血糖値が低いかどうかを確認される(痛くはない)。
血糖値に問題がなかったため、手術着のような服に着替えて検査室へ。
検査はまず太めの注射針で造影剤を投与され、漫画喫茶のような個室に移動する。
造影剤の中のブドウ糖が体内に行き渡るまで約1時間、その個室で安静にする。安静と言っても、ただ座っていればいいというレベルの安静ではない。
・なにも考えない。
・動かない(トイレは可)。
・音楽も聞かない。
・目を動かさない。
検査前にブドウ糖が必要以上に消費されてしまわないように、極力なにもしないように指示される。特にブドウ糖最大の消費者である脳の活動を抑えるため、なるべく目を瞑ってじっとしているようにと指示されたので、その通りにした。テーブルの上にPET-CTのパンフレットも置いてあったが、もちろん読まなかった。
安静にして1時間後、電話で呼び出されて通常のCTよりも長めの30〜40分ほど撮影し、検査終了。
造影剤を早く排出するために500mlの水を渡され、飲み切ったら会計に進む。
検査センターに来たときは気がつかなかったが、待合室には圧倒的に癌患者が多いことに気がついた。
20代と思しき若い方も多く、病衣の人もかなりいる。抗癌剤の影響で髪の毛が抜けてしまったのか、大半はニット帽をかぶっていた。
運命とは残酷だとつくづく思った。
なぜこの人達が癌に侵され、必死の戦いを続けなければならないのかわからなかった。
語弊のある言い方だが、自分は今まさに運命の当落線上にいる。
もしかしたら自分も半年後や一年後、このような姿でここに座っているのかもしれない。
帰宅後、下記のツイートをして病気であることを初めてTL上で明かした。

造影MRI検査

PET検査から数日後に造影MRIを受けるため、再度検査センターを訪問。
今度の造影剤は「ガドリニウムDTPA」という薬剤を使うのだが、比較的アレルギーが起こりやすい。現に自分の前に検査を受けた60代らしい男性は造影剤の点滴後に全身の皮膚が赤くなり、検査は急遽中止になった。そして2回目はアナフィラキシーショックが起こりやすいため、生涯同じ造影剤は使えない。

今回はPETのような飲食に関する制限はないが、代わりに検査中はずっと造影剤を点滴注入され続ける。
太めの点滴を刺し、軽く造影剤を入れてアレルギーのチェックを行うと、幸にしてアレルギーが出なかった。「花粉、ハウスダスト、犬」と結構なアレルギー体質のため医師も心配していたが、杞憂だったようだ。
点滴を刺したまま通常のMRI撮影を何回か行った後、技師が「はい、では今から造影剤を入れますね。結構な勢いで入れるので少し刺激がありますが、ビックリして動かないでください。痛かったらすぐに教えてください」と言った。
次の瞬間、ギュルルルルルッ! と温かい液体が点滴を刺している肘の内側から肩へ上がってくることがわかった。
おそらく水流の勢いが強いのと、体温に合わせてある程度薬液を温めている影響だろうが、体内を液体が駆け上がる感触というものはなかなかに新鮮なものだった。

これで血液検査、PET-CT(造影CT)、造影MRIの検査の全てが終了した。
結果がわかるのは1週間後。
良性であることを祈るのみ。

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