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#05 ナンバー2として判断をする基準は4つの段階で考える

私は、人の思考には4つの段階があると考えています。
まずは自分がどの段階で思考しているかを知るために、次の場面を想像してみてください。

「ある日、仕事で疲れ果てて電車の席に座っています。すると高齢の女性が乗ってきて、あなたの前に立ちました。あなたならどうしますか?」

「なんで自分の前に立つのだろう」「元気だったらすぐに席を譲るけど、今日は立ち上がる力もないほど疲れている...」など、どうしたらいいのかと葛藤もあるのではないでしょうか。

意思決定が必要な場面で、ナンバー2の理論で大切にしているのは、4つの思考の一番上の段階を目指し、美しい行動をとることです。

今回の記事では、思考の段階とは何か、ナンバー2にとっての美しい意思決定とはどのようなものかについて解説します。

思考の段階を表す三角形

思考の段階はわかりやすく三角形の図に表すと、次の4つの層に分かれています。今回は「満員電車でお年寄りに席を譲る」という事例をもとに解説していきます。

1、損得

三角形の一番下層の考え方は損得で判断することです。自分にとって得なのか損なのかを基準に意思決定をする段階です。電車の例でいうと「席を確保したのに譲るのは、自分にとって損だ」と考えて、何の行動もしない状態です。

2、善悪

2つ目の段階は善悪です。「高齢者に席を譲るのは若者として当然だ」「疲れているけど、譲らなければ悪になる」と、善悪の判断によって席を譲ります。席を譲る行為自体は良いことですが、自分で選択したというよりも、世間的な善い/悪いを基準に行動してしていることになります。

3、楽しいか楽しくないか

3つ目の段階は自分が楽しいか/楽しくないか(快い/快くない)を判断にすることです。電車ではぱっと立ち上がって席を譲り、相手が座ってくれたことや、ありがとうと言われて嬉しく感じる。この段階に至ると、人生観が変わってきます。

4、美しいか美しくないか

一番上の段階になると、美しいか/美しくないかを基準に行動できるようになります。「困っている人に席を譲りたい」という思いが湧き上がると、純粋に行動に移します。お礼を求めているわけではないので、気を遣わせないようにさっと歩いて他の車両に移動することもあるでしょう。

自らの行動が美しいか/美しくないかで判断できる段階に到達し、頭で考えているだけでなく行動することが経営の場面でも活きてくるのです。

ナンバー2としての美しい意思決定

ここでは、経営の場面において、美しい意思決定をどのように行えばいいのかを私の体験をもとに説明します。

東日本大震災が起きて1か月後、私は前職のトップと一緒に被災された宮城県のお客様の工場に行きました。

工場長から、工場の機械がすべて流されたため新しい機械を導入したいが、ほかにも大きな被害があったという説明を受けました。工場長の淡々と話す姿からは、被害を真正面から見つめると耐えられないくらい苦しみ、その中で乗り越えて工場を再開しようとされている姿が伝わってきました。

その工場長の想いを聞き、トップは何のためらいもなく「新しい機械を全て無償で差し上げます」と即決で伝えました。

これは美しいか美しくないかという段階での意思決定です。

「工場のためになることをしたい、被害を受けた人の助けになりたい」という想いから、損得に関わりなく申し出たのです。

私もトップの思いに大いに共感しました。同時にナンバー2は、会社の経営も考えなければなりません。

当時私たちの会社は、無償で機械を提供すると経営が成り立たなくなるくらいの状態でした。そこで工場長と相談し、原価の金額だけをいただき、機械を納品させていただくことになりました。トップの価値判断をバランスよく形にすることができました。

ナンバー2の役割は、論語と算盤のバランスをとり、経営として成り立たせながら、社会のために美しい意思決定を行うことなのです。

美しい意思決定は連鎖する

実は、この話には後日談があります。
しばらくして、工場長は他の地域の総責任者になり、エリア全体で使う機械を刷新する際に、私たちの会社の機械を導入すると連絡をくれました。

「震災後いろいろな業者と話したが、儲けゼロで提案したのは御社だけ。恩を返すべきだろう」と周囲の承認を得たとのことでした。私たちの会社には、次々と機械の注文が舞い込んできました。もちろんトップはこのような後日談を想定して無償での納品を決断したわけではありません。連絡をいただいたときはとてもびっくりしました。

美しい意思決定、美しい行動どれほど大切かがわかる事例だと思います。震災の時のトップの意思決定が、後々の関係性にもつながったのです。

このように「美しい/美しくない」を基準に価値判断することは、経営においても力を発揮するのです。

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