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この世にたった1箱の“稀(まれ)”な海苔を、どうしても買いつけたかった理由。

海苔屋には誰しも一度は買ってみたい、という憧れの海苔があります。

佐賀県の"有明一番"
福岡県の"旬優"
熊本県の"初特"

以前私のnoteで海苔には等級がある、というお話をしました。
上に並ぶのは限られた海苔にしかつけられない勲章のような等級。

ただ等級はあくまで評価であって、美味しいかどうかは別。
なぜなら見た目の評価が大きいからです。

見た目だけではなく、美味しさにもこだわった等級が佐賀県にあります。
"稀"な量にしかない認められないという"味推(あじすい)"。
入札会場で出会ったその海苔を食べた瞬間、ある方たちの顔が浮かび『この海苔をどうしても製品化して届けたい』という想いが込み上げてきました。

今日は海苔のマニアックなお話と、尊敬する師匠について。
ご興味ある方はゆるりとお付き合いください。

【海苔の等級おさらい】

そもそも海苔には漁場名と等級があります。
店頭に並ぶ際は海苔屋さんの商品名で販売されるため知られることはありませんが、買い付けの際は正しい名前でやり取りされます。

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最初が漁場名、次に等級です。
漁場が見えると、有明海の中でも佐賀?福岡?熊本?産がわかり、なおかつどのエリアで収穫されたかもわかります。

等級は収穫時期を表す等級、タイプを表す等級、グレードの3つに分けることができます。

画像の《芦刈壱重1》で解説すると、佐賀県の芦刈漁場で収穫された、初摘み(壱)の、重さがあり巻物にも適した(重)、1等級の海苔(1)となります。

同じ漁場で、初摘みから10番摘み以上まであるため、各県ごとに初摘みを表す等級というものが存在しています。
簡単なおさらい↓

初摘みを表す等級:推、初、壱、旬、①
タイプを表す等級:
・◯等級→小穴が空いていて口どけしやすい海苔
・混等級→青海苔が多くブレンドした海苔(青海苔が少ないと"飛”等級)
*他にもいっぱいあります!
グレード:
1~7まで存在、数字が少ない方が評価が高い。1を超える特や優も。
数字に"上"がつくとより上物、という評価になります。

詳しくは私のnote《自分好みの海苔の選び方 〜海苔のシングルオリジンとは?〜》をご参照ください。

ちなみに入札とは、海苔屋さん競り市のようなものです。

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佐賀の入札であれば佐賀県で収穫された様々な漁場の海苔の等級が並び、その海苔に対して買い付け担当が札を決めていきます。
オークションではなく各海苔屋が同時に札入れをし、1番高い評価(高い金額 の札入れ)をした海苔屋が買う権利を得ます。
入札についてはまた別の機会で詳しくお伝えできたら。

【"味推"等級とは?】

"推"はこのような海苔につく等級です。

最初の3日間で摘採された海苔で、味・焼き色ともに良好と思われるもので、支所が責任を持って推奨できるもの。

海苔業界では収穫のことを"摘採(てきさい)"と言います。
基本的に初摘みは対象期間が1週間程度あるので、3日で摘採された"推"はより早摘み。
そして見た目、特に色・艶などを厳しく求められます。
その名の通り、まさに"推しの海苔"ですね。

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では"味推"とは?

"味推"は"推"等級の対象品から更に味覚検査を実施して選抜したもの。

そもそもは"推"等級なのですが『これは美味しい海苔ができた!』と更に検査機関に依頼して得る等級です。
しかしながら、その門は狭く認められない時もあるそう。

漁師さんは良い評価を得たい、検査員は責任持って評価しなければいけない、どちらも『良い海苔を世に出したい』という想いのぶつかり合いです。

そんな中、私が入札会場で出会った"味推"がこちら。

【鹿島第三味推上2】

今回、鹿島漁場では"味推"等級が数箱出品されていました。
その中で衝撃的な美味しさだったのが《鹿島第三味推上2》です。

サクッとした歯ぎれに口どけの早さ、香りの広がり方、最初から最後まで口の中で感じる海苔のうまみ。
佐賀県の初摘みで出品された47,000箱の中のたった1箱の"稀"な海苔でした。

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鹿島第三漁場で採れた、3日の早摘みの"推"等級で、厳しい味覚検査を通った、限りなく1等級に近い2等級の海苔、となります。
箱とは一般的に海苔が入った"海苔箱"のことで、最大で全型海苔が3,600枚入ります。

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多いときは同じ漁場と等級で100箱以上採れるので1箱というのはかなり少なく、ぬま田海苔としても購入したのは初めてでした。

この海苔を食べた時に、感動と同時にある方たちの顔が思い浮かびました。
私の尊敬する”田中正造(まさぞう)商店”の2人のお師匠です。

『これはきっとお2人が好きな味だな。』

なぜなら、おそらく小穴があることで1等にはなれなかった海苔だったのですが、その分本来の"推"にはないような口どけと前述の完璧な美味しさだったからです。

『製品化して真っ先に食べてもらいたい!』

自分たちにできる精一杯の評価をつけ、無事にこの《鹿島第三味推上2》を手に入れることができました。

【尊敬する2人の師匠へ】

”田中正造商店”は海苔の本場・大森の知る人ぞ知る名店。
左が代表の田中友祥さん、右が買付け担当の後町正さん。

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共に海苔業界のレジェンドであり、私に海苔屋として必要なことを教えてくれ、今も教わっている尊敬するお2人。
ぬま田海苔がなんとか海苔屋を続けてこれたのは、色々とサポートしてくださったから。本当に感謝しかありません。

その功績は『食べて美味しい海苔こそが良い海苔だ』という評価を大事にし続けてきたことです。
ぬま田海苔でも人気の"◯等級"の海苔。今でこそ認められていますが『見た目が美しい海苔こそが良い海苔』と昔はそうではありませんでした。

周りに何を言われようとも『食べて美味しい海苔こそが良い海苔だ』と評価し続けてきた結果、加工海苔業界で初となる内閣総理大臣賞を受賞されます。ここから海苔業界に新しい流れが生まれました。

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ただ残念ながら2020年に引退されています。
ぬま田海苔の店舗で『大好きだった海苔屋さんが引退してしまった。』というお客様のお話を聞くと、”田中正造商店”のことでした。

そんなお2人が繋いできた流れを、ぬま田海苔の先代の想いと共に受け継いでいきたい。
だからこそ感謝の気持ちと決意表明も込めて、海苔を届けたかったのです。

『美味しい良い海苔だよ。』
お2人が言ってくれたその言葉が本当に嬉しかった。
そして多くを語らない姿を見て同時に『まだまだ良い海苔はあるよ。』と言っているようにも感じました。精進せねば。

【この夏の贈り物に】

店舗でいつも感じることは『誰かに大切なものを贈りたい』という想いは、贈る人・贈られる人・そのお手伝いをする人まで幸せにする力がある、ということです。
きっとその幸せがまた新たな幸せを生む、まさに幸せの連鎖ですね。

夏の贈り物といえばお中元。
皆さんが心から推したいものを、大切な方にお届けしてみませんか?

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こんな素敵な笑顔が見れたら最高ですね。
師匠の舌はごまかせないので、毎回どんなリアクションかドキドキなんです...笑顔が見れて本当に良かった。

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海苔好きに贈り物をしたい!という方にはぬま田海苔から新しい詰め合わせのご提案もあります。
良ければぜひ覗いてみてください。

《うまみと五島そうめん詰め合わせ》

《初摘み"稀"詰め合わせ》

幸せのおすそ分けをもらいながら、大切に包ませていただきますね。

以上、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

ぬま田海苔へ何かリクエストがあればいつでもご連絡を。note/Twitter/Instagramどこからでもお待ちしております。フォローも大歓迎です。

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《ぬま田海苔 合羽橋本店 店舗情報》
〒111-0035 東京都台東区西浅草3-7-2
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