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海苔をデザインして製品化するまで。

春の訪れを感じる、あたたかく過ごしやすい気候。
それは海苔漁もいよいよ終盤戦であることも教えてくれます。

海苔がおいしく育つのは海温が冷たい期間、秋の終わりから春にかけて。
初摘みから10番摘み以降まで、海苔を収穫し続けます。

《海苔網に海苔が付いている様子》

その度に海苔入札も行われますので、買い付けた海苔を休む間もなく製品化していかねばなりません。

昨年、海苔入札について記事を書きましたが、おかげさまで今年もおいしい良い海苔を買い付けることができました!

では買い付けた海苔をどうやって製品化し、店頭に並べていくのか?
通常の海苔屋さんとぬま田海苔の場合を比較しながら、本日は解説していきます。
どうぞゆるりとお付き合いください。

【入札後のサイクル】

『入札で良い海苔が買えた!』
この感動といったら…本当に言葉にできないほど。
でもその余韻に浸る間もなく、製品化し早く店頭に並べないといけません。

海苔入札で仕入→製品化→売上→次の入札で仕入

通常であればこんなサイクルで海苔を買い続けていくのですが、ぬま田海苔の場合は異なります。

初摘み入札で仕入→製品化→1年かけて販売→翌年の初摘み入札で仕入

初摘み入札で1年分の海苔を買い付け、専門業者で乾海苔(焼海苔の1つ手前の状態)で保管します。

《乾海苔の作業風景》

必要な分を取り寄せ毎月工場で加工、店舗に納品、こんなサイクルで1年を通し、おいしい海苔を提供しています。

ではどうやって製品化していくのか?

【製品化の流れ】

一般的に海苔屋さんは《〜海苔屋の有明海"特選"》のように、それぞれのブランドを代表する商品名で製品化します。
わかりやすく伝えると松・竹・梅でそれぞれ商品名があり、そのランクや価格に相応しい海苔を提供していく。

これは簡単なことではなく、それぞれの海苔屋さんに熟練の買付師や工場担当者がいて、しっかり海苔を見極めているからこそできる仕組です。

この場合製品パッケージも大量ロットで購入可能となり、販売価格も抑えることができます。パッケージがあるので製品化もスムーズですね。

ただ年によって中身の海苔が変われば『味が変わったかな?』と感じることもあるかもしれません。

ではぬま田海苔の場合はどうでしょう?

全型焼海苔《両開◯特①》

画像にある暗号のような言葉は漁場と等級
それをそのまま商品名にしています。
そのためオリジナルパッケージに貼るステッカーを毎年新たに作ることが必要に。
結果、時間がかかってしまうのですが、その分海苔の個性をお伝えすることができる。
漁場や等級、年によっても海苔のおいしさは本当に異なりますからね。

"海苔のその年ならではのおいしさや個性をデザインし製品化する"

そんな私たちの想いが詰まったステッカーデザインについて紹介します。

【おいしさを表に】

ぬま田海苔のパッケージデザインの中でも、大きな役割を担うのが"味見表"。

《味見表》

"風味/歯切れ/口どけ/前味/後味"
おいしさの違いを5つのグラフでわかりやすくしています。
他の海苔屋さんだと"色艶"も入ることが多いですが、ぬま田海苔には2等級以上の海苔しかありませんので、色艶は良いものばかり。
その分、おいしさの違いにこだわり5つに。

自分の好きな海苔の傾向を表で確認しても楽しいですし、自分で付け直しても面白いですよ。

初期モデルではステッカーデザインに入っていなかったのですが、『あった方が見やすい』とお客様からの声もあり改良しました。
英語表記もあるため、海外の方もプレゼントに使ってくれたりします。

ちなみにこの"味見表"は大森の海苔屋さん、私のお師匠さんと一緒に食べくらべし、作成します。
買い付けた海苔のサンプルが焼き上がりしだい、いつも一番最初に食べてもらっているのですが、私が買い付けた海苔の発表会のようでもあるので、毎回ドキドキです。

《味見表をつけている様子》

また海苔のプロだけではなく、ぬま田海苔のスタッフさんとも食べくらべし、色々な意見を参考にしながら最終決定しています。

【おいしさを言葉化】

もう一つ、大切な部分は海苔の名前の横にある紹介文です。

《海苔の紹介文》

この2行に、海苔の個性がぎゅっと詰めこまれていませんか?
他にも…

《両開◯特①》まろやかな甘さとコク 爽やかな磯の風味

《芦刈壱重1》じわり広がる旨味と風味   香り高く巻物に合う

など、全ての海苔が読んでいるだけで食べたくなる、おいしさがイメージできる文章で表現されています。

この文章を考えてくださっているのは"株式会社みづほ"さん。
ステッカーデザインだけではなく、パッケージや化粧箱など、ぬま田海苔のデザイン周りを多く担当してくださっています。

《ぬま田海苔の化粧箱》

フォトグラファ−の旦那さまと、テキストを考える奥さま、そして2人でデザインを考える、本当に素敵なご夫婦がやられている会社です。

《"みづほ"さんご夫婦と私/七夕祭り》

※HPは只今リニューアル中です。

また文章作成の話に戻りますが、前述の表作成の際に集めた感想と私が伝えたい内容をまとめて、海苔のサンプルと一緒に"みづほさん"にお渡しをしています。
実際に食べくらべしてもらい、ステッカーデザイン出来上がりしだい、校正確認となります。

気になるポイントがあればお伝えし、何度かやり取りする中で文章とデザインが完成。

"おいしさを言葉にする"
毎回大変ですが、やりがいのある大切なことだと思っています。

【いざ店頭へ】

ステッカーと海苔が届いたら、仕上げの貼り作業に入ります。
自分たちで1枚1枚大切にステッカーを貼り完成。
こうしてデザインされた海苔が店頭に並びます。

《ぬま田海苔店内》

ブルーの浅縹(あさはなだ)色は有明海の水面のマットなブルーを。
鉄紺(てつこん)色は有明海の海底の豊富なミネラルを。
スッテカーを貼ることで海苔の個性がそれぞれ浮かび上がってきます。

おすすめは販売開始したばかりの《鹿島第一壱◯1》
通好みの香りと味わい ほのかな塩気が後を引く』
"ほのかな塩気"とは…食べたい。
一壱1と"いち"が3つ、違った文字で並んでいるのも好きです。

《鹿島第一壱◯1》は歯切れの良さ、後味の強さが特徴

おすすめの食べ方は、発酵バターを一欠片合わせて。
ほんのり塩気のある、うま味の強い海苔なので、バターの油分で海苔のおいしさが口の中で続きます。発酵バターの強いコクや風味にもよくあいますよ。

《発酵バターを一欠片海苔へ》

おいしさの違いがある海苔だからこそ、その食べ方までデザインしてお届けできればと思っています。これからも様々なペアリングに挑戦していきますね。

以上、本日もお付き合いいただきありがとうございました。

ぬま田海苔へ何かリクエストがあればいつでもご連絡を。note/Twitter/Instagramどこからでもお待ちしております。フォローも大歓迎です。

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《ぬま田海苔 合羽橋本店 店舗情報》
〒111-0035 東京都台東区西浅草3-7-2
05017459617
[営業情報]
Open : 全曜日営業(11:00〜17:00)
※店内の予防対策にご協力ください。

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※漁場や等級について知りたい方はこちらの記事を。

※海苔の入札ついて知りたい方はこちらの記事を。


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