閉鎖病棟に入る(6)
わたしは元少年Aを弁護したいわけではないし、同室の少年を断罪したいわけでもない。彼の妹は辛くも無事だったという。ひょっとすると「妹を金づちで殴った」というのも、彼の虚勢を張った言葉だったのかもしれない。とはいえ、ここに措置入院させられる程度のことはやったわけだ。すべてが嘘だというわけでもないだろう。わたしは知ったのである。世のなかには「人を傷つけてはいけない」という感覚を、器質的に持つことができない人がいるかもしれない可能性を。そしてそういう人には、テレビのコメンテーターの義