中国広告紹介「武侠ドラマ風!進化した中国の地方旅行宣伝動画」
皆様こんにちは、日本はやっと涼しくなってきましたね!暑さに負けていましたが、今では少し元気になってきた中国出身のイミンです。
では本編へどうぞ!
嬉しいことに、日本も少しずつ水際対策の緩和が進み、インバウンドの盛り上がる未来が見えてきました!
そんなわけで今日は中国の地方創生に関するバズ動画の事例を二本紹介します!
キーワードは「地元のイケメン」と「観光局長」です。
まずは知っている人も多いかも知れませんが、「地元のイケメン」の話題から。
2020年後半、四川省甘孜藏族(カンゼ・チベット民族自治州)理塘(りとう)県に住むチベット族青年「丁真(テイシン)」さんが中国のSNSで大人気となりました。同年11月末に、丁真さんは地元の観光大使に就任し、彼が出演した地元のプロモーション映像「丁真の世界」は配信初日に1,200万回再生を達成し、一躍時の人になりました。
地元の美少年が意外にもバズったことに着目し、今まで無名だった甘孜の美しさをより多くの中国人に宣伝しようと考えたのがこの地域の地方観光局局長を務める劉洪(リュウ・コウ)さんでした。
地方観光局の局長は公務員という立場ですが、劉局長はインフルエンサーの顔を併せ持つスーパー公務員でもあります!
2021年3月、丁真さんを中心にした地方観光宣伝チームを率いて広東省に訪問した際、熱狂なファンに囲まれた丁真さんを劉局長が助けようとしました。その時、背が高いハンサムな劉局長が一部の丁真ファンに注目され、SNS上で偶然話題になりました。
「この人局長本人なの!?めっちゃ格好いいげど!」「背も高いし頼れそうな男」「局長もDOUYINでデビューしたら絶対人気者になる!」などのコメントが相次ぎ、丁真さんのバズに相乗りする形で注目されたのです。
これをチャンスと見た劉局長は、同年4月中旬に個人アカウントを開設し、10秒から30秒くらいの尺で、劉局長が甘孜のおすすめ観光スポットを紹介する短尺動画を投稿し始め、瞬く間に約100万のフォロワーを獲得したのです。
アカウントの概要欄には、「ふるさとの甘孜を宣伝できるならば、インフルエンサーになりたい!」と書かれています。
2022年6月からは、歴史感が溢れるいわゆる「武侠ドラマ風」の姿に変身するビフォーアフター動画が6本連続公開され、2022年8月末の時点で、総計213万回の「いいね」を獲得しました!
ここで「武侠ドラマ」について簡単にご説明を。「武侠ドラマ」とは、中国時代劇の一種であり、武術に長け、義理を重んじる人々を主人公にした、80年代から現在に至るまで幅広い年代の間で流行り続けるファンがとても多いドラマの一大ジャンルです。
最初公開された動画を一緒に見てみましょう。
こちらの動画では、甘孜の自然の風景の中で「現代」から「古代」へタイムトラベルをしていると思わせる様子が10秒以下の短い時間に凝縮されています。余計なセリフや大袈裟なエフェクト、豪華な衣装を一切使わず、人物、風景、そして音楽の組み合わせでシンプルなビジュアルを視聴者に魅せる方向性のようです。
こちらの動画では、劉局長がスーツから中国の伝統的服装に変わり、河で船を漕いでいる様子が映っています。このシンプルな動画が16万以上のいいね数を獲得しました。
「武侠ドラマを作って!」、「今までのコーデの中で一番似合う!たくさん撮ってほしい!」、「風景とよく馴染んでいる!」などのコメントが集まり、大好評でした。そして、次の日には2本目の武侠風動画を公開しました。
(ちなみに、こちらの動画は75.5万のいいねを獲得してシリーズの中で最もバズった動画になります。興味がある方はぜひご覧ください!)
2本目の動画に対しても相変わらず「自然過ぎてまるで本物の侠だわ!」、「古代ドラマみたいな風景!」などのコメントがありましたが、「馬がいればさらに侠のように見えるかも!」というアドバイスも確認できます。そうしたら、次の動画には馬を登場させました!
ファンの声を反映させる姿勢を見せ(しかも本当にカッコ良すぎてメロメロ…!)、好感度を非常に上がったのも納得ですよね。
ただ、このような動画はコンテンツ性が薄く、風景と服装が変わらず飽きてしまうという問題があります。新鮮味が感じられなくなり、いいね数も減少する傾向が見え、ピークも終わったと思われた時に、当アカウントはこのシリーズをきっぱりと完結させました。
6本の動画を通し、劉局長のDOUYINアカウントのフォロワー数が、約115万から170万人台にまで増えていました。また、その間WEIBOのトレンドにも2回入りました。SNSで注目されることにより、マスメディアからのインタビューも増え、SNSで劉洪局長を検索する人も再び増えました。
良い宣伝のサイクルが生まれたと言えますね。
劉局長によると、このシリーズ動画を投稿し始めた理由は2つあるそうです。
一つ目は、「地方観光局の仕事として、経費の節約しつつ、宣伝する方法を探す必要性があった。自分のアカウントから発信することは、あの段階では最も安い手段」と述べていました。
二つ目は、「ここには大自然があり、風景が綺麗な場所がたくさんある。そこに行くと何か即興で何かを創りたくなる。前にもチベット民族服装を着て撮った動画が好評だったので、自然にあの武侠シリーズは生み出された」とのことです。
では、実際に沢山の旅行客が甘孜に訪れたのでしょうか?
その答えは残念ながら、NOでした。
というのも、このシリーズがバズった後、中国では新型コロナウイルスが発生し、多数の地域がロックダウンされたり、国内移動が規制されてしまったため、国内旅行も近隣に行かざるを得なくなり、遠く離れていた甘孜を旅行先と選ぶ人は増えなかったのです。
しかし、劉局長作品のコメント欄では、「コロナが収束したら甘孜に行って、劉局長にあいにく!」「連休に行く準備をしたのに規制されて行けなかった!悔しい!開放されたら絶対甘孜に、劉局長の動画ロケ地に行ってみる!」などのリプライが大量発生しました。
即効性は出せなかったものの、劉局長の作品をきっかけに、甘孜への認知を広げたことは事実でしょうし、移動がしやすくなるタイミングで甘孜に沢山の観光客が足を運ぶかも知れませんね!
今回のバズを分析してみると、
① バズに瞬間的に相乗りした
イケメン「丁真(テイシン)」さんのバズに相乗りするタイミングを逃さなかったことが全てです。
② 流行りやすいフォーマットにはめ込んだ
観光情報をあえて詰め込まない流行に乗った動画作りで若い世代から「遊び方を分かっている仲間」という支持を得ることができたのです。
③ コメントに即反応
「○○が見たい!」というコメントに即レスすると、ファンはコメントをしたくなるもの。まさにSNSの遊び方を分かっている好例です。
④ 意外なトップセールス
普段SNSなんてやりそうにない組織のトップの人間が本気で遊ぶことの意外性は今の中国において「流量密码(リョウリャンミーマー)」と呼ばれています。意味はトラフィックのパスワード、という意味です。これは日本でも参考にできると思います。
最後に、トップセールスの実例をいくつか紹介します。
例えばシャオミ(小米)のCEOである雷軍(ライグン)さんは、DOUYINでは1千万人以上のフォロワーを持っています。アップルのCEOティム・クックは新製品発表会にしかほとんど顔が出しませんが、雷軍は本人出演する動画を日常的に投稿しています。
また、元中国海軍少将の張召忠さんもbilibiliアカウントを開設し、頻繁に投稿していました(2020年9月まで)。
このようなとんでもない大物や意外な肩書を持っている方々が自らSNSで情報を発信することは、この時代ならではの傾向でしょう。
こうして、中国の流行やインサイトなどを理解することで、SNS上のバズに近づけることができます。観光関係の事業者さんや自治体さんの中で、広報に行き詰まりを感じている方がいらっしゃいましたら、お気軽に中国SNS事情の専門家である「ぬるぬる」までご相談ください!
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