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【外国語学習⑯】外国語で考える能力を身につける方法(前編)-外国語学習者の母語依存傾向-

こんにちは!
名古屋大学附属図書館サポートデスクの院生スタッフです。
今回は、「外国語で考える能力」及びそれを身につける方法に関する記事の1コマとして、外国語学習者の「母語依存」傾向及びその問題点についてご紹介させていただきます!

外国語学習者の「母語依存」傾向

中央図書館サポートデスクのスタッフとして学生さんからの学習相談を受け付ける時に、外国語の学習について、次のような困りごとをよく聞きます。

 「文法や単語はきちんと覚えているのに、実際に外国語を話す場面では全然思い浮かばない…」

 「外国語でコミュニケーションを行う際に、頭の中にずっと翻訳をやり続けるので、すぐ疲れちゃった…」

 外国語を勉強中のあなたも、こうした戸惑いを感じたことがありませんか?

 人によって問題点がそれぞれですので一概的に言うことができませんが、以上のような戸惑いから、一つの共通性のある問題を見出せるのではないかと考えます。
それは、外国語運用を単なる「アウトプットしたいことを外国語に訳す」及び「読んだ・聞いた外国語を自分の母語に訳す」こととみなす、という傾向です。

 例えば、「外国語の文法と単語をもっと記憶したら、そこから今の気持ちを伝える言葉を見つけられるはずだ」とか「相手となかなかコミュニーケーションをできないのは、相手が話した単語の意味がわからないためだ」、とあなたが思ったことはありませんか?
多くの学習者は、書いたり話したりする場合、母語で考えたことを原本に、それを外国語の言葉に訳してからアウトプットし、そして読んだり聞いたりする場合では、外国語を母語に訳してから理解してみる、という習慣があります。

 こうした習慣は、勿論それなりの合理性を持ちます。
特に、外国語学習の初期には、文法にも単語にも未熟ですので、母語を媒介に学習を進めるのは避けられない段階かもしれません。
日本語で書かれたテキスト・辞書を片手に、外国語の文法や単語などを勉強するのは効率的で楽でしょう。
しかし、この手軽さのために、多くの学習者は、その語学力がかなりの水準に及んでいるのに外国語の学習で引き続き日本語に過度に頼ってしまうために、いわゆる「母語依存」の傾向が現れます。

母語依存のデメリット

では、母語依存は実際の外国語運用の場面でどのような問題を引き起こすのでしょうか?
今回は、よくある二つの問題についてご説明します。

 第一に、頭の中の日本語を外国語に訳してアウトプットすることが、「和製英語」のように外国の方には通じない表現をよく生み出します。
言語は常に国や地域の社会文化と歴史に結び付いているものであるため、日本では一般化している言葉遣いであっても、外国語に訳し他国の方から見ればおかしくなる可能性も決して低くないです。
こうした事例は、グーグルで「和製英語」や「ネイティブに通じない英語」で検索すれば多く出てきます。

 第二に、頭の中で翻訳作業を繰り返す勉強法は、骨ばかり折れて成績があがらない結果になるおそれがあります。
というのは、こうした勉強法では、多くの時間をかけても勉強中に実際に外国語を運用している時間が短いです。
実は外国語を使っている時間は、自国語で考えてきたことを外国語に訳すとき、及び外国語で受け取った言葉を自国語に訳すときに限られます。頭の中の思考や知識の整理は日本語で行われるため、外国語の練習にはほぼなりません。
そのため、一見すれば語学学習に長い時間をかけているにも関わらず、実際に外国語を扱う時間が少ないです。これは、コスパが低い勉強法ではないでしょうか。

 母語依存の改善可能性

 母語依存傾向のデメリットを問題視している上、次に考えるべきのはその改善策でしょう。

 しかし、外国語学習者(特に第一外国語勉強中の方々)にとって、母語への依存から脱却することは、なかなか困難に見えるかもしれません。 私と学習相談をした方から、下記のようなお声を頂いたことがあります。

 「私は日本語と英語しかわかりません。英語もうまくしゃべれませんし、英語学習のときもし日本語を使わなければ、他の頼れる言語は無くなるのではありませんか。」

 この見方は一見すれば「言う通り」感があるでしょうか。この方の気持ちがよく理解できますが、以上の見方には、実はある思い込みが含まれていることを指摘した方が良いと思います。
「英語力が十分に上手でなければ英語で思考・勉強するのは不可能だ」という先入観があるかもしれませんが、この一見不可能な好循環が実際に実現できるということが、語学教育の研究者・従事者たちにとってほぼコンセンサスになっております。
外国語で考える能力を身につけることで、変な和製英語を作り出してしまうことが多少なりとも防げます。また思考中にも外国語を使う時間が増えれば、文法・語彙運用の熟練化をさらに速めることができます。

ここまでご覧になった皆さん、外国語で考える習慣についてご興味を持って頂けたら嬉しいです。

次回の記事は、語学学習者が外国語で考えるのは実際にどんな感じなのか、そして外国語で考える能力を身につける方法について、ご紹介させて頂きます!
ご興味のある方は、ぜひ次回の更新もご一読ください。

勉強を続ける上で、少しでも皆さんお役に立てれば幸いです。
また次回!
(英語スタッフ)

#英語学習 #外国語 #コミュニケーション

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