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【質問集②】『卒論講座』vol. 2

こんにちは!名古屋大学附属図書館サポートデスクの院生スタッフです。

サポートスタッフ企画、オンラインライブ開催の『卒論講座 応援編』(2021.10.11-10.22)とオンデマンド開催の『卒論講座 準備編』で寄せられた質問を、随時更新していきます。

講座に参加して頂いた方、これから参加する方、卒論執筆中の方にも役立つ質問をQ&A形式でまとめます。ぜひ参考にしてください。

『卒論講座 準備編』 詳細
『卒論講座 応援編』 詳細

【質問集①】『卒論講座』 vol. 1

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Q4. 実験などのデータの取り扱いや記述方法などについて教えてほしい。


A4. 実験などのデータの取り扱いを、3つのフェーズにわけて説明します。①は実験実施前や実施中であり、②・③は実験実施後のデータの取り扱いになります。

図7

① データの収集

実験によって得られるデータは、Excelなどの表計算ソフトで管理されることが多いです。実験実施日や測定条件、実験で測定する変数のデータ、測定誤差などを記入して保存します。データの管理について、紛失・漏洩・改ざんなどが起きないよう実験データは厳重に保管する必要があります。

大学によってデータの保存期限が定められていることもあります(名古屋大学における研究上の不正行為に関する取扱規程)。
(人に関する調査や実験では、得られるデータに個人情報が含まれることがあるため研究目的以外に使用しないという規定やデータファイルにパスワードをつけて保管することがあります。参考:日本心理学会 倫理規定)


② データの加工

実験から得られたデータをそのまま分析することもありますが、データの加工を行うことがあります。データの加工とは、欠損値、はずれ値の処理やデータの除去、カテゴリー化など実験から得られたデータを分析に用いるための準備をすることです。

データの加工の仕方や基準は研究によってさまざまです。得られたデータや研究の目的、先行研究を参考に行います。加工するときは生データが消えないように注意します。これは分析を進めていくうえでデータが消えてしまったときや処理に問題・変更があったときに対応するためです。生データをコピーしたファイルで加工を行うなどして、生データが残るようにしましょう。

③ データ分析

データ分析はExcelやR、SPSS、Pythonなどのソフトで行われることが多いです。具体的にどのような分析方法を用いるかは研究の目的やどのように仮説を検証するかによって変わります。指導教員の先生と相談して適切な分析方法でデータ分析を行いましょう。分析のやり方に関する書籍は多く出版されています。

「○○(分析に使用するソフト。例えばExcel) データ分析」と検索すると分析に関する書籍を調べることができます。

実験データの記述方法は、得られた実験データをどのように用いるのかという目的に応じて選びます。具体的には使用するグラフ、軸のデータ、書式を決めます。また、分析結果の記述方法は分野によって異なりますが、分野ごとである程度決まった記述方法があります。

専門分野の先行研究や指導教員の先生に相談するとよいでしょう。(名古屋大学の学生の方は、ぜひ、サポートデスク学習相談をご利用ください。)

図表の選び方や作成方法、結果の記述方法に関する書籍を下記に載せるので参考にしてみてください。

身延庄士郎
『新版 理系のためのレポート・論文完全ナビ』
講談社,2016年
[ 名古屋大学附属図書館|配置 / 請求記号  中央学3F、 407|Mi ]

酒井聡樹
『これからレポート・卒論を書く若者のために』
第2版. 共立出版, 2017
[ 名古屋大学附属図書館|配置 / 請求記号 中央学3F,816.5|Sa ]、[ 名古屋大学附属図書館|電子書籍 Maruzen eBook Library ]

白井利明・高橋一郎
『よくわかる卒論の書き方』
第2版. ミネルヴァ書房, 2013
[ 名古屋大学附属図書館|配置 / 請求記号 中央学3F,816.5|Si ]、[ 名古屋大学附属図書館|電子書籍 Maruzen eBook Library ]


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Q5. 私の属する学科の専門領域上、新たな内容を研究するということはほぼないため、自分の卒業論文にどのようにして独自性を持たせたらよいですか。


A5.  論文における学術的意義はとても大切です。以前なされた研究と同じような内容・研究する意義が客観的に理解できないような研究内容である場合、学術的意義が存在せず論文としての意味をなしません。そのため、新たな内容を全く含まない論文では、卒業論文として認められないでしょう。

しかし、学術的意義というものは必ずしも「世紀の大発見」のような研究結果のみを指す訳ではありません。学生に行える研究には限度があるので、「世紀の大発見」を目指す必要はありません。

例えば、「○○先生と同じ説を主張するが、自分は異なる研究手法を用いる」・「色々な説がある中で、自分は新しい~という観点から、○○先生の説が正しいと思う」のように、一抹のオリジナリティを含ませることで、論文の独自性は生まれます。

抽象的ではありますが分かりやすい例を挙げると、富士山登頂者(既に存在する学説など)は多く存在しますが、異なる登山ルート・新たな登山ルート(研究手法・自分なりの観点などというオリジナリティ)を用いて、山頂(既に存在する学説など)を目指すようなイメージです。


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Q6. 研究を進める中で、テーマが変わった場合、その背景を論理的にまとめるには、なにかコツがありますか。


A6.  新しいテーマに関連する先行研究を調べ、読みましょう。背景を論理的にまとめるためには、先行研究でどんなことが研究されているのか、なにが明らかになっているのか、まだ明らかになっていないことは何かなどこれまでの研究の蓄積を把握している必要があります。

先行研究を調べるためのおすすめの方法を2つ紹介します。


① レビュー論文を読む

 先行研究を調べるときに、テーマに関連するレビュー論文があると研究動向を把握しやすいです。レビュー論文とは、特定のテーマに関する概要と知見と示すことを目的として関連する先行論文をまとめた論文です。

レビュー論文を探すときは、新しいテーマのキーワードに加えて、「レビュー」や「研究」、「展望」というキーワードを入れて検索するとヒットしやすくなります。

② 文献から芋づる式に文献を探す

 他にも、新しいテーマに関する文献で自分の興味関心に近い文献から文献を探していく方法もあります。研究ではかならず先行研究が引用されています新しいテーマに近い文献が見つかったらその文献で引用されている文献を読んでみましょう。

引用されている文献をたどっていくことで先行研究ではどんなことが取り上げられ研究が進められてきているのかを掴むことができます。さらに、その文献を引用している文献まで検索を広げることで最近の研究動向を追うことができます。

 先行研究について調べたら、分かったことを整理しましょう。

 そして、自分のテーマ、卒論の問いを導出するためのストーリーを整理した情報をもとにして考えます。


図1


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Q7. 卒論を書いていて、集中力が続かないときがあります。どうしたらよいでしょうか。


A7. こまめに休憩をとるようにしましょう。根を詰めすぎると集中力が続かず、卒論の執筆が思うように進まなかったり誤字脱字などのミスにつながったりします。メリハリが大切になります。休む日は休み、取り組むと決めたときは全力で取り組みましょう。

 その日のうちに取り組む目標を立てることをお勧めします。卒論はやらないといけないことが多く、レポートに比べて書く分量が多くなります。卒論を書いていても終わりが見えないため、集中力が続かなかったりやモチベーションが低下したりしてしまいます。その日の目標を立てることで作業の終わりが明確になり、作業の区切りをつけやすくなります。

 ほかにも、作業する場所を変えてみるのも1つの手です。場所を変えることで気分転換することができます。自宅や研究室で作業しているのであれば、カフェや図書館を利用してみてはいかがでしょうか。特に図書館は集中して取り組むための環境が整っています。また、他の利用者が集中して取り組んでいるので、自分もやらないといけないとプレッシャーをかけることにもつながります。

 1日の目標を立てることにより終わりが見えない作業から取り組むことを明確化したり、環境を変えることにより気分転換をしたりとで集中力を維持して取り組むことができます。

図2


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Q8. 参考文献の整理の仕方を教えてください。


A8.  参考文献の整理という作業は論文作成において非常に大切です。大抵の論文では、他人が既になした研究結果に自身の独自性を少し加える、という場合が多く、必然的に引用や参照が多くなります。引用や参考文献を開示せずに他人の研究結果を自身の論文に記述した場合、剽窃行為になります。きちんとした引用や参考文献の作成のためにも、参考文献の整理は怠らないようにしましょう。

参考文献の整理法は大きく分けて3種類あります。

① オンラインストレージサービスを用いる方法

 オンラインストレージサービスとはオンライン上にデータや文書を保存できるサービスのことを指し、クラウドサービスなどとも呼ばれます。例えば、One DriveやDrop boxなどが挙げられます。

オンラインストレージサービスは無料で提供されているものも多いので、自身が読んだ文献についてまとめた文書・PDFの論文などを保存するのに最適です。

また、多くのオンラインストレージサービスはPCのみならず、スマートフォンでもアクセス・閲覧できることが多いので、外出先でも素早くデータを確認できるというメリットがあります。

② 文献管理専用のサービスを用いる方法

 文献管理専用のサービスとしてはMendeleyやRefWorksなどが挙げられます。

特にMendeleyは名大生であれば有料版を無料で使用できるのでおすすめです。(2021.10.28)


文献管理専用サービスでは、図書や論文のタイトル・著者名・雑誌名・発行年・論文へのURLなど、様々な情報を簡単に管理できます。また管理している文献や論文のデータを、別の文書へ簡単に挿入できるサービスもあり、論文の管理には非常に適しています。

文献管理専用サービスは、研究者や博士課程の学生など、アカデミック業界に身を置く多くの方に使用されています。

卒論執筆の段階だとまだ使わないかもしれませんが、今後の研究で他者との共有する手段として、文献管理専用のサービスは使う場合があるので、ぜひ知っておいてください。

 例えば、指導教員や研究室内の他の学生、学内外の共同研究者とオンラインで関連文献の収集・蓄積・共有をしたい場合などにもサービスを使います。

具体的には、ゼミ発表の参考文献をゼミ共有フォルダで共有する。研究室の必読論文リストを作成するなど、使い方はいろいろでしょう。

場合によっては、研究室内や、共同研究者が利用できるツールを選択する必要があるかもしれません。研究室などで周りの人、先生方が使っている方法を訊いてみるのも良いでしょう。


③ WordやExcelなどのソフトを用いる方法

 WordやExcelなどのソフトは普段から使用する機会が多いと思うので、最も身近で試しやすい文献整理の方法でしょう。

どちらも文献管理専用のソフトではありませんが、Excelは計算ソフトなので自身でタイトル・著者名などの項目を作成し管理することは十分可能です。

Wordは文書作成ソフトではありますが、単語検索機能がついているので、文書内から探している文献の情報を検索することは難しくないでしょう。

 以上、3種類の文献整理の方法についてご紹介してきましたが、どの方法を用いるかは人によって様々です。

いつでも素早く文献を確認したい場合はオンラインストレージサービスを、論文の細かいデータまでしっかりと管理したい場合は文献管理専用サービスを、使い慣れたソフトで整理したい場合はWordやExcelを用いる、というように、自身に適した文献整理の方法を用いるのがよいでしょう。

文献整理は後回しにすればする程困難になりますので、文献や論文を読んだらすぐに文献を整理する癖をつけましょう。そういう意味では、自身が使い慣れているサービスを用いることが個人的にはおすすめです。


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