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鬼束ちひろ『Tiger in my Love』

 今回は昔から大好きな一曲をご紹介します。
 リリースされたのは2002年。私が高校生の頃かぁ……私がこの曲を初めて聴いた年が思い出せませんが、大学生の頃には知っていたはずなので、かれこれ20年は推しているようです。ビンテージものです(笑)。

 鬼束ちひろさんと言えば、『月光』や『私とワルツを』を挙げる人が多いですよね。それらと並列して、タイアップとなったドラマ『TRICK』の名をセットで挙げるパターンも(笑)。

 その2曲も私は大好きなのですが『Tiger in my Love』の世界観は一味違っていて、前者が、穏やかな月夜に物思いにふけるイメージだとしたら、後者は勇ましく月夜を駆けて行く感じです。両者は真逆の名曲だと思います!


歌詞の感想と考察

 この記事では1番をメインに語らせて頂きます。
(全部挙げるとキリがない!)
(なお、今回は考察が多めの文章です。笑)

『Tiger in my Love』……訳すると「私の心の虎」ですね。いったいどんな心だというのでしょうか?

貴方がその醜さに怯えるために全てが鏡であればと願った
小さな小さな足跡たちはいつも傷口ばかりを掻きむしった

1番Aメロ(前半)

 いきなり不穏なワードが並びますね!
 これは攻撃的だと感じる方もいらっしゃることでしょう。でも、私は違うと考えています。その理由は続きを読むと理解できるのです。

私は遠くへ?
出来るだけ遠くへ?

1番Aメロ(後半)

「私は遠くへ?/出来るだけ遠くへ?」と疑問符が付いているのは、目的地が特にないけれど、とにかく遠ざかろうとする意志が読み取れます。ここにいてはいけない……つまり、ここから離れることが目的なのです。

 ここに何があるのか? それは少なくとも冒頭の「貴方」が入るでしょう。「貴方」から離れなければならない、なぜならば、まるで「小さな小さな足跡たち」が「いつも傷口ばかりを掻きむしった」ように感じるから。

 おそらく、この「貴方」はお人好しな性格で「私」に近づこうとしているのです。しかしその優しさが歯痒く感じられて、「私」は遠くに行きたくてたまらないのです。

 ……皆様、おわかりですか?
 私達は既に、心の中の虎に、既に対面しています。

一人だって気付いた瞬間在り余る悲しみは柔らいだ
泥を塗っては冠を與えたりいつも寝場所なんて無かった

結局このしなやかな心にかなうものなんて無い

1番Bメロ

「私」の虎は孤独にいます。心の中に、安息の地などない。ただ、泥を塗ったり冠を作ったり、やることに枚挙のいとまは無さそうです。
 それに対して「私」は、しなやかと言うのです。
 しなやか、滑らか。自由な心という意味でしょうね。
 私の自由な心は無敵だよ。そう自負しているのです。
(この「しなやかな心」のフレーズは、個人的に一番好きです!)

私を土足で荒らしても 余白など無くても
全てはこの肌に触れる事さえ出来ない
貴方には決して見えたりしないでしょう?
Tiger in my Love

1番サビ

 自ら孤独を選び、自由でいることを選んだ「私」の心は、決して他人に汚されることはありません。生身を土足で荒らされ、たとえ清さや美しさが損なわれたとしても、本当の「私」には触れられてすらいないの。だって、「貴方」には見えないでしょう? 「私」の心に棲む虎が……。

温水温によるサビ訳文

 ……すぅ~(吸って)。
 ……カッコイイ(吐いて~)。

 若い頃は気づかなったけれど、改めて歌詞を読み込むと、鬼束さん自身に意図があるかわかりませんが、若干アドラー心理学ちっくな心の在り方が、歌に込められている気がします。新たな魅力を発見です!


歌詞アラカルト

 前述通り、この記事では1番の歌詞をメインに紹介していますが、他にも表現が秀逸だと思える箇所はあります。

「言葉など要らない」と言って誰かが森に導いてくれれば
鋼の様な皮膚が裂けて妖精が出て来るとでも思ってるの?

2番のBメロ。自問自答している様子がいじらしい局面。

この腕が千切れたとしても 自分の手を離したくなかった
振り返れば今は あの花の色も見える
満ちない私を認めて
「早く次のを」

Cメロ大好き人間! …いやしかし、切ないですね。

 こういう「どういうこと?」って読み込みたくなる歌詞を書ける鬼束さんの歌を、私は好きです。
 きっと繊細かつ、根が素直なんだと思います。
 ユニークな視点で音楽を作れる人です。素敵だ!


作曲について

『Tiger in my Love』については、作曲についても太鼓判を押したいです。
 実は、既にYouTubeのコメント欄でも語っています(笑)。

ジミーに共感してもらっていて嬉しい驚き!

 序盤のね、バーンバーン……っていうピアノの和音が、虎が駆けている足跡みたいに聴こえちゃうんですよね。どうしても。

 この曲はピアノでの作曲なのでしょう。
 全体的にピアノが、そしてベース?が協奏する感じ。
 あと、ドラムが入って、ジャズっぽいテイスト。

 ピアノで虎を表現する……。
 そしてカッコイイってすごいわ……!


 もし興味が少しでも湧いたら、是非聴いて頂きたいです。そして気に入れば、何回でも聴いて頂きたいです。
 そんな貴方には、いつか見えることでしょう。
 心を棲み処とする、虎の眼差しが……。


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