見出し画像

お肉と前歯とお肉のお話

今日もバルセロナは曇り空。
今にも雨が降り出してきそうなどんよりとした曇り空。
天気予報アプリでは本降りにはならなそうなのだけれども、念のために傘を持って家を出た。

昨日は一日中、パソコンと対面して煩悩から沸き起こる謎の情熱を打ちこんでいたから、帰宅時にはふくらはぎがぱんぱかぱん、になっていた。
だから今朝は、自宅からだいたい1,4㎞くらい先にあるスーパーまで歩いて向かう。
※グーグルマップ調べ

わたしが住んでいる家は坂道が多い場所にある。
勾配がきつい場所なのだけれど、今は『行き』だから楽な下り坂。
まさに、行きはよいよい帰りはつらすぎるからバス使う、立地。

扉の鍵を閉めたことを確認して歩き出すと、先ほどまでパラパラとまばらだった小雨が、次第にポツポツと粒を大きくしていった。
自宅から一番近い大通りに出たあたりで、雨は「傘があったほうがイイね」程度には強くなっていた。
地元民からしてみれば、一時的な通り雨程度の感覚なのだろう、道行く人々はほとんどが傘をさしていない。
軒下を選んでできるだけ雨に濡れないように歩いている。

個人的な主観ではあるが、まあ実際に、このくらいならすぐに止んでしまうだろうしね。

てくてくと、傘をさしつつ歩くこと約20分。
小雨であってもなぜかいつも靴下まで濡れてしまうくらい、わたしは雨の日の歩き方がへたくそだ。
傘の持ち方がよくないのだろうか。
それとも、気が付くと、ばちゃり、と足が突っ込んでいるからだろうか。
雨の日の水たまりには気をつけているのだけれど、なぜかいつも避けられない。
水たまりからは、抗えない何かの引力が発生しているのだと思う。

実際には、たんに普段からぼーっと街を眺めながら歩いているせいで足元がおろそかになっているだけ、なのだけれども。

なんにしても濡れた靴下って気持ち悪いよね。
中途半端に湿った状態っていうのがまた、蒸れて臭くなるんだよね。
あと靴を乾かさなきゃならないのも、時間かかるんだよね。
靴を一足しか持っていないから、乾くまで家から出られないんだよね。
まあ、そんなことはさておくとして。

今日のお目当ては、スーパー定休日前で割引になる、お肉たち。
定期的に沸き起こる食欲が抑えられない時期、とくに、なんか無性にお肉が食べたくなる時期、に突入したからだ。
もちろん定休日前だから、鮮魚類も割引になっていたりするのですが、先に奪われてしまいました。
半額バナメイエビちゃん。
だがバナメイエビちゃんは来週特売されるので、我慢する。
それよりも、お肉です。

お肉コーナーには、鶏肉、七面鳥肉、兎肉、挽肉、豚肉、羊肉、牛肉、腸詰肉、丸焼き鳥、ハンバーグ用成型済み肉など、多種多様なお肉が陳列している。
だいたいのスーパーにはこれだけの種類がありますが、ちょっと大きめのスーパーだとさらに未スライスの豚塊肉なんかも販売されています。
ちなみに、薄切り肉はありません。
精肉の店頭販売をしているお店であれば、店員さんに「生ハムくらいの薄切りにして」ってスペイン語で頼めば薄切り肉も手に入るそうですよ。
※バルセロナでスペインの大学進学を考えている方向けのアドバイザーをされている日本人の方から教えてもらいました。
参照:『Barcelonando』 https://www.kaedetaniyoshi.work/
スペインの大学で学びたい、と『真剣に』考えている方は、どうぞご検討くださいませ。
※ちなみにわたしは有料相談を申し込みました。

ところで、わたしの前歯、六本は偽物です。

差し歯というか、いわゆるブリッヂという方法で抜いた歯の部分を補ってもらいました。
以前からしょっちゅう、前歯の一本が欠けたり折れたりしていました。
その都度、治療をお願いしていたのですが、その隣の歯の状態が悪化して、神経が腐って死んでおりました。
さすがにその歯はもはや抜く以外の方法はなかったのです。

それで抜けた歯の空間をどう埋めるかと歯科医に相談したところ、インプラントかブリッヂを提案されたので、後者を選びました。
さすがにインプラント費用は工面できません。
ブリッヂにするなら以前から何度も折れまくっていた歯もカバーしようということで、めちゃくちゃ削られました。
結果的に、ブリッヂを支える両端二本の歯以外は、上の前歯はほぼありません。
歯がないと、食べる楽しみが本当に激減してしまいます。

歯は、大事にしましょう。

そんな大事にしなければならない、偽物の前歯の件です。
わたしは歯並びが悪いわけではないはずなのですが、どうも若干、嚙み合わせが悪いようです。
といいますか、若干、そう、若干ね、受け口で顎が出ています。
だから咀嚼すると下の歯が前歯の裏側にむっちゃくちゃヒットします。
※これはもう骨格の問題だから、そのように生んだ両親の責任です(わたしは悪くない)、と歯医者さんからのお墨付きです。

ちなみにわたしは、小さいころから硬いお煎餅を好んでいたり、食事の時には最低でも30回は噛んで食べなさいと言われて育ってきました。
だからめちゃくちゃ顎の力は鍛えられています。
どのくらいかといいますと、昔、噛まれるのが好きだという特殊性癖を持っていた知人がいまして、その方は噛まれても後が残りにくいのだと申告していました。
痣がつきにくい体質だったようです。
その方の許可をいただいたので、全力で噛みつかせていただきましたところ、めっちゃくちゃキレイに歯型が残り、内出血させてしまいました。
数日はそのあとが消えなかったそうです。

そんな実績があるくらい嚙む力が強いのです。
そんな噛み力がご飯の度に前歯の裏側にヒットしまくっていたら、折れます。
接着剤も、取れます。
せっかくのブリッヂも、取れます。
落ちまくります。

自分の、鍛え上げられた強靭な顎の力のおかげで偽物前歯は何度も取れました。
外れるたびに歯科医に連絡しました。
だんだんと、申し訳なくなってきました。
だって、直すときの費用は無料だから。
今の住所から引っ越さないかぎり、あの歯医者さんに通い続けます。
めちゃくちゃ親切料金設定だから。
※スペインでは、歯医者は自費診療になります、公的保険の対象外です。少しでも費用を抑えたいなら、プライベートの保険に入るしかありません。
※歯の掃除の費用が、一回50~70ユーロです。

余談ですが、以前、職場の上司が娘さんに、
「将来お金持ちになるためにはどんな職業についたらよいか?」と尋ねられて、
「歯医者か公証人だ」
って答えた、という話を思い出します、ことあるごとに。

長くなりましたが、そのような次第で、わたしはできるかぎり前歯に負担がかからないような、やわらかい食べ物を選んでいるつもりなのですが、実際のところ、お肉って、どうなのだろうか?
回答:調理方次第。

わたしは、インターネットという文明の利器を駆使して、お肉を柔らかくする方法を調べました。
できるだけお肉がやわらかくなるような下ごしらえをするのです。

代表的な方法は、
「ヨーグルトに漬ける」
「玉ねぎをすりおろしてくわえる」
「お砂糖をくわえる」
でした。
※これ以外にもあるかもしれませんが未調査です。

まずはヨーグルト漬法です。
初めのうちはその予想以上の効力に感動を覚え、常にヨーグルト漬け法でやわらなくしていました。
しかしだんだんと、使用後ヨーグルトの使い道に困ってきました。
捨てるにはもったいないので、使用済みヨーグルトで肉用のソース作りに挑戦しましたが、なかなかうまくいかず、あきらめました。
さらにスペインにきて初めて食べたギリシャヨーグルトの美味しさに目覚めてしまい、ヨーグルトは美味しい食べものだという新しい認識が更新されました。
それ以来、お肉を柔らかくするためにヨーグルトは使っていません。
だって、ギリシャヨーグルトめちゃくちゃ美味しいから、そのまま食べたいんです。

そのため、現在では使うのはもっぱらお砂糖と玉ねぎです。
(※正確には玉ねぎの汁、らしいです)

さらに重要なものがあります。
掃除洗濯にも使える万能の白い粉、『重曹』です。
スペインではベーキングパウダーやドライイーストと同じ場所に陳列しており、たいていのスーパーで気軽に購入できます。
※日本では購入経験がないのでどの場所にあるのかわかりません。
しょっちゅう使うので1㎏入りの袋を買います。

当初こそ掃除目的で買っていましたが、だんだん重曹を溶かして使うという作業が手間になってきて、最近では『lejia』入りのスプレー洗剤を使うようになったので、今ではもっぱらベーキングパウダー代わりにしたり、お肉を柔らかくするために重曹をつかうようになりました。
あと、パスタの食感を生ラーメンに変えたいとき、です。
ただ、火にかけると灰汁がものすっごいでてきます。
分量を間違えると、重曹独得のなんかいやな匂いが鼻につきます。
※『lejia』:苛性アルカリ溶液、灰汁、漂白剤のこと

しかし多少のことならば気にしません。
※以前手が滑って大量投下したことがあったのですが、そのときはさすがに、つらかったです。

ちなみにお肉の種類ですが、牛肉は基本的に高いのでまず選びません。
ハンバーガー用に成形されたお肉だったり、ミンチ肉が半額の場合は、候補に入ります。

基本的に選ぶのは、豚肉と鶏肉、七面鳥肉です。
スペインでは『薄切り肉』というものは存在しません。
薄切りで存在している状態を確認できるものは、生ハムかサンドイッチ用のお肉くらいです。
もちろん、生ハムも一本まるごと販売がされているので、薄切られていない状態でも購入可能です。

それでは、お肉をやわらかくするためにだいたいいつもやっている下ごしらえの説明に参ります。

大きめのボウルに、すりおろしたしょうが、すりおろしたたまねぎ(めんどくさいときは、みじん切りやめちゃくちゃ薄切りにすることでも可能とします)、しょうゆ、砂糖、重曹をちょびっと、あとはお好みの調味料、にんにくやらハーブやら、を入れて混ぜます。
これで漬け汁の完成です。
そこに豚肉を投入して、揉みこみます。
鶏肉でも可能です。
ひき肉には重曹を入れたことがないためわかりません。
※ボウルに先にお肉を投下してから漬け汁材料を投下してもいいと思います。むしろ普段はお肉が先でやってます。

まんべんなくお肉に漬け汁がいきわたったら、あとはジップロック的な袋に小分けして、冷凍庫にぶち込みます。
これで下ごしらえは完成です。

調理するときは、一晩か一日か二日くらい、冷蔵庫に移動させて解凍させます。
基本的に揚げ物が大好物なので、大量の油で調理します。
その前に、大きめのボウルを用意して、そこに大量の小麦粉を投下します。
小麦粉のお布団の中に、解凍した肉たちを漬け汁ごと投下します。
小麦粉をまんべんなくこれでもかというくらい隙間なくまぶしたら、フライパンで揚げ焼きします。
中火か弱火でじっくりと、完全に火を通しまくる心意気で焼きます。
理由は、「冷凍保存していたとはいえ賞味期限が近いために値引されたお肉を使っているから」、です。

手間が面倒くさいことと、容器がないという理由のため、溶いた卵にくぐらせてパン粉をつけたりとかはしません。
小麦粉で十分、肉のうまみを閉じ込めてくれる、とかたく信じています。

焼き上がったお肉は、お好みでマヨネーズをかけたり、しょうゆマヨをかけたり、ハンバーガーソースをかけたり、ケチャップをかけたりしていただきます。
お肉を揚げ焼きしているときにフライパンの隙間で一緒に目玉焼きを作って、火を止めた後にお好みのチーズを肉の上にのせて余熱でとろけさせてから、パンではさんで食べても美味しいです。
パンの代わりに湯通しして柔らかくしたレタスで巻いて食べても、とても美味しいです。
ちなみに自分は目玉焼きには、しょうゆをかけたくなります。

ちなみに、カレーやシチューなどに使うぶつ切り塊肉の場合は、大きい鍋にお肉を食べたい分量、投下します。
鶏肉でも可能です。
鶏肉の場合は、骨付き手羽元、手羽先、手羽元先が一体の状態、一羽丸ごと、などの状態で販売されています。

まずはショウガをおろします。
このときしょっちゅう、利き手の関節あたりの皮も一緒にすりおろしてしまい、凄惨な事件が起きた状態になりますが、いつものことなので気にしません。
手間をかける心のゆとりがあれば、ニンニクを一個、一粒ずつ皮をむいて、全部投下します。
めんどくさければ皮付きのままでも問題ありません。
仕上げにほんの少しの重曹と、大量のお砂糖を投下。
この段階で、重曹とお砂糖をお肉に刷り込んでおくと、なんとなくお肉全体に重曹の効果がいきわたって柔らかくなるような気がします。

あとは、大量の玉ねぎと、お好きな野菜を小さく切ってぶちこみます。
包丁を使うのめんどうなときは、ニンジンだったら、ショウガをおろしたときに、一緒にすりおろします。
お野菜でお布団をかけてあげる感じで、お肉を覆います。
そこにあとはもう、すきな調味料をぶち込みます。
わたしは固形の『CALDO』と呼ばれる、西洋だしの素的な奴を3、4個、指先ですり潰して粉状にしながら全体的に振りかけます。

最後に、できれば電気ポットで沸しておいた熱湯を注ぎます。
わたしが使用している調理器具が、IHのポータブルコンロなので、水が沸騰するまで若干時間がかかるのです。
あと、お湯をかけることで粉末状のだしの素も溶けるし、具材を通してお湯の温度も下がるから低温調理っぽくなるような気がするからです。
もちろん水からの調理でも全く問題はありません。
ただわたしの場合は、鍋に材料を入れすぎるため、火にかけている間になべ底をかき混ぜることができないので、鍋が確実に焦げるのです。
カレーを作ると100パーセント鍋底が焦げます。
実績があります。

お湯を入れて火にかけたら、あとはもう、弱火で30分くらい放置します。
最近はタイマー付きのコンロもあるので、時間をセットしておけば火事にもなりません。
沸騰状態が続いてきたらもう一段階火力を弱くして、また10分とか20分とか適当に放置します。
ちなみに灰汁とりはしません。
気になる場合はキッチンペーパーなどをかぶせておきますが、確実に吹きこぼれます。
吹きこぼれたときの掃除の方がはるかに手間がかかるので、できるだけ沸騰する前にそのあたりの火加減を調節します。
だいたい1時間くらい弱火でじっくり煮込んだら、灰汁も溶けて消えています。
火を止めて、最後は余熱で放置します。

「料理は冷めるときに素材に味が染みていく」
というような話を以前どこかで聞いたことがあるような気がします。
でも、あつあつのお肉もおいしいので、鶏肉の場合は、おでん感覚で煮込みながらパクパクつまんでしまいます。
お肉が減ってしまったら、追加で投入しましょう。
見切り品のお肉であるという大前提を失念しないように、カビが生える前に食べきりましょう。

このくらいすれば、たいていのお肉はやわらかくなります。
むしろ、部位によっては煮込みすぎて逆にパッサパサになったりします。
そんなときは、煮込み汁をぶっかけていただきます。
あまった煮汁で、汁を吸収する系の炭水化物を煮込んでも美味しいです。


今回はお肉を柔らかく調理してたべるお話、でした。


最近は『carnicería(精肉店)』コーナーが無いスーパーでも肉塊を取り扱うようになってきたようです


バルセロナ愛を込めて執筆しております。 記事を評価してくださった方はぜひサポートをお願いします!(._.)!生きる糧になります!( ;∀;)!