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Vol.3『商店街が衰退していく理由』

みなさん、こんにちは!

前回のVol.2では、商店街発生の歴史や、現状についてお話ししました。

今回は、商店街衰退の原因についてお話ししたいと思いますが、「商店街は本当に衰退しているの?」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。

なんと、中小企業庁(令和3年度)によると、「衰退」と回答した商店街が令和3年度では約67%で、「繁栄」と回答しているのが5%にも満たなかったのです。

図1 商店街の最近の景況

まず前回の投稿で、商店街と把握されている数は13,408件とお話ししました。
図1の令和3年度は、4536件の有効回答数を得ることができましたが、回答を得ることができなかった商店街はおよそ9000件であり、その数は衰退の恐れがあることを表していると考えられます。
事情があり、回答できなかった商店街ももちろんあると思います。
それにしてもこの有効回答内の「衰退」と回答した商店街と、有効回答外の衰退している恐れのある商店街の数は、すさまじいです。

以上の調査から、私は商店街が衰退していると判断し、この研究を進めることにしました。

商店街が衰退してしまっている要因に外的なものと、内的なものがあると考え、振り分けてみました。

外的要因: 大型店の進出

ショッピングセンター(イメージ)


1974年に、店舗が一定の面積以上の大型店には届け出が必要となり、大型店規制の意味合いがある大規模小売店舗法(大店法)が施行されました。

これにより、大型店が出店する際は、近隣商店街と話の折り合いをつけたうえで届け出をしなくてはなりませんでした。

(そりゃそうですよね、大型店にお客さん取られちゃうし。)

そこで、話し合いやもめ事を避けるために、商店街に反対されにくい郊外に、ショッピングセンターや大型スーパーマーケットが乱立しました。

その規制はだんだんと緩和され、2000年に大店法は廃止されました。そして、中心市街地の再生・活性化を目的に、新たに大規模小売店舗立地法(大店立地法)が施行されました。
これにより、様々な種類のお店が進出しやすくなり、大型店出店の自由度も高まりました。

大型店の進出が、中心商店街の衰退を加速させた要因の一つというわけです。

駐輪場(イメージ)

自動車でショッピングセンターや大型スーパーに行くことは今では珍しくありません。自動車で行けば、行きたいところは大体行けますし、収納スペースがあるので、いくつものを買ってもOK!

私たち消費者からすれば、良いこと尽くしですね。

そういえば、私の母も近くの商店街にはいかずに、車で ‟○ーケー″ に買い物に行っていました。大体のものはそこで揃います。

…しかし、この状況に商店街はどうでしょうか。

郊外での生活には自動車が欠かせない。こうした郊外住民を対象とした郊外のスーパーマーケットは駐車場を備え、新たな「自動車のある生活」に対応していた。となると、日常の買い物でわざわざ自動車が停めづらい街なかの商店に行く理由はなくなってしまった。
辻井啓作(2013).『なぜ繫栄している商店街は1%しかいないのか』.阪急コミュニケーションズ

行く理由があまりなくなってしまいました。
それでは打開策として、商店街の近隣に大型駐車場や駐輪場を設ければいいのではないでしょうか。

いやいや、それだけで解決する単純な問題でもないようです。

外的要因だけでなく、内的要因にカギが潜んでいるかもしれませんね。

内的要因: 商店街が抱えている問題

商店街内部はいったいどんな問題を抱えているのでしょう。

図2 商店街の抱える問題

図1の通り、中小企業庁(令和3年度)の調査によると、

「経営者の高齢化による後継者問題(72.7%)」
「店舗等の老朽化(36.4%)」
「集客力が高い・話題性のある店舗・業種が少ない又は無い(30.5%)」
「商圏人口 の減少(29.8%)」
「空き店舗の増加(18.4%)」

が上位を占めました。

これらの問題の中でも「空き店舗の増加」に着目して、研究を進めていこうと思います。

なぜ着目したのが、一位の「経営者の高齢化による後継者問題」ではなく、「空き店舗の増加」なのか?
その理由は、空き店舗を少なくするための対策が結果的に、上記で述べた「商店街の抱える問題」を解決することに繋がるのではないかと考えたためです。

空き店舗増加の原因

まず、空き店舗がどのくらいの割合で存在するのか見ていきましょう!

図3 1商店街当たりの平均空き店舗率の推移

図2を見ると、空き店舗率は2003年から上がり続け、2012年には約14.6%になり、その後の2015年から2021年まではあまり変化がないことが読み取れます。

これは、新しいお店が入らず、空き店舗がなかなか埋まらない状態が続いていることを表しています。

また、中小企業庁(令和3年度)の調査では、空き店舗の今後の見通しは、「増加する」と回答した商店街(49.9%)が最も多いことが分かりました。

この空き店舗率が高ければ高いほど、よりシャッター街に近づいていくわけですが、残ったお店を含めても活気がないように見えてしまいます。

「なんか暗~い雰囲気の商店街だな…」

そんな印象を持たれてしまうことでしょう。
それが負の連鎖を生み、商店街全体が経営不振に陥ってしまう、なんてことも。

まず、空き店舗とはどのような場合に発生するのでしょうか。

空き店舗は、退店(閉店や移転)を埋めるだけの出店がない場合に発生する。
正木久仁、杉山伸一(2019).『47都道府県・商店街百貨』.丸善出版

上記の場合に空き店舗は発生し、退店理由空き店舗が埋まらない理由についても、中小企業庁が調査報告書にて言及しています。

退店理由

図4 退店(廃業)した理由

図3を見てみると、退店理由として、68.1%とダントツで「商店主の高齢化・後継者の不在」が1位なのが分かります。

後継者の不在問題は、商店街が早急に解決すべき最大の課題と言えます。

空き店舗が埋まらない理由

空き店舗(イメージ)

空き店舗が埋まらない理由についても中小企業庁(令和3年度)の調査報告書にて言及があり、これに基づき、二つの立場の視点から見ていきます。

一つ目は「地主や家主等貸し手側の都合によるもの」、そして二つ目は「テナント等借り手側の都合によるもの」です。

以上、二つのそれぞれの視点から空き店舗が埋まらない理由上位3位を見ていきましょう。

【地主や家主等貸し手側の都合によるもの】
1、店舗の老朽化 
2、所有者に貸す意思がない 
3、家賃の折り合いがつかない

【テナント等借り手側の都合によるもの】
1、家賃の折り合いがつかない 
2、商店街に活気・魅力がない 
3、店舗の老朽化

店舗の老朽化がいずれも上位3位にランクインしていますね。
「店舗の老朽化」が改善されない理由として考えられることは、改修工事をするだけのお金がないことや、後継者もいなく、経営が難しいため工事も必要なくなってしまっていることなどが考えられます。

また、「所有者に貸す意思がない」といった理由に繋がってくるのが

集客力の低さに加えて、特に近隣型・地域型商店街では住宅併用が多いことが空き店舗対策のネックとなっていると言える。
正木久仁、杉山伸一(2019).『47都道府県・商店街百貨』.丸善出版

上記の理由ではないかと考えました。
たしかに一階はお店で、二階は家という光景は目にしますよね。

取り組みに対する意識

このように、商店街の衰退の理由には外的要因だけではなく、内的要因も強いことが分かりました。

ではこれまで取り上げた衰退の要因に対して、商店街または個店ではどのような取り組みをしているのでしょうか。
中小企業庁(令和3年度)の『商店街実態調査報告書』に記載されているものの中から、ピックアップしてご紹介します。

空き店舗対策

図5 商店街における空き店舗の発生に対する取組

まず、先ほど紹介した空き店舗問題に対してはどのような取り組みをしているかと言うと…。

なんと約58%と半数以上の商店街が「特に関与していない」と回答。

「ええっ…」
驚きの余り、思わず声が出てしまいました。

それ以外の取り組みを行っている商店街については店舗を誘致新規出店の促進するなどの対策を行っているようですが、その割合は約13%と低いです。

後継者対策

そして、後継者対策は商店街が抱える最も大きな問題のひとつです。
しかし、なんと9.5割超が「対策を講じていない」と回答。

図6 商店街における後継者対策

信じられるでしょうか。研修や、外部から募集をかけるなど対策を講じているのは4%のみ。

商店街として商店に関与することはあまり無く、まかせっきりのようです。

しかも、本作品にて大助かりしている中小企業庁は3年に一度、『商店街実態調査報告書』のために全国の商店街にアンケートを送り、それを基に報告書を作成しています。

つまり何を言いたいのかというと、「立て直さないとまずい」と考える機会は定期的に訪れているにもかかわらず、実行に移していないのはなぜ?!と考えてしまうのです。

きっと、立て直さなくても、大丈夫な状態が続いてしまっているのかもしれませんね。活性化がすべてでは無いと思います。
しかし、商店街を必要としている人はいるはず。地方だと特に。

例えば、運転免許を返納した高齢者の方だったり、幼い子供を連れた親御さんだったり。
ちょっとそこまでって買い物にぷらっと行けたり、こどもにおつかいも頼めます。
そんなときに必要なのは、「おかえり」って言ってくれる商店街だと思うんです。
毎日のおかずを買いに行って、ついでに店主と立ち話をしたり、見守ってくれる地域の人がいるから、おつかいも行かせられるし、子供も安心して育てられる。

そんな商店街が増えていけばいいな!と思っています。

個店の改善・活性化策

これまで「商店街」をベースに項目別の対策を見てきましたが、次は「個店」に目線を移して、改善・活性化策を見ていこうと思います。

図7 商店街における個店の改善策・活性化策について

図5を見ると、個店における改善・活性化策では「店舗改装、店内レイアウトの変更」を一部でも行っている割合が最も高く、その次にPOPやディスプレイ、チラシ等の「販売促進の強化」の割合が高いことが分かりました。

それでは繁栄している商店街と衰退している商店街を比べて、これらの取り組みの差はどのくらいあるのでしょうか。

図8 商店街の個店の改善・活性化策と商店街の景況との関係

図6をみるとやはり改善や活性化に対する取り組みの差は歴然です。
コロナ社会に合わせたテイクアウト販売や、決済方法を多様化させる等の対策は必須になってきています。
その情報をいち早くキャッチし、顧客のニーズに合わせて販売方法を柔軟に変えていくことが重要なのではないでしょうか。

さて!今回はここまでにして、次回以降は再生や活性化のためのお話をしていこうと思います。

今回の「取り組みに対する意識」でだんだんと活性化のためのヒントが見えてきたのではないでしょうか?💡

次回は商店街活性化の参考例として、『Vol.4 谷中銀座商店街について』の記事を投稿予定です!

地域活性化や商店街活性化、谷中商店街などのワードに興味を持っていただけたら嬉しいです。
是非スキとフォローお待ちしております!🤝

《参考文献》
・正木久仁、杉山伸一(2019)『47都道府県・商店街百貨』.丸善出版
・中小企業庁(2022).「令和3年度商店街実態調査の結果を公表します」.中小企庁https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2022/220408shoutengai.htm ,参照 2022-11-18).
・辻井啓作(2013).『なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか』.阪急コミュニケーションズ


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