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デイケア

私の行っているデイケアに、やたらと他人のやること為すこと、果ては生活のことや仕事のことにまで、口を挟んで来る通所者がいる。
最初は“また言ってる・・・はいはい”と受け流していた。正確には、受け流しているつもりだった。
けれども、ようやくその人はとにかく他人のことを否定したい、他人の生きる道を遮りたいとの一心で、あんな風に発言しまくっているんだと私も気が付いた。
本人は、はっきりとした自覚のもとにそうした発言をしているのではないらしい。
どうも無意識の衝動が、その人にあんなに周りの人間を傷つけ、自分の価値を貶める真似に駆り立てているらしい。
元々は、陽気な気質のその人からは、しだいに一人二人と遠ざかり始めた。
私もスタッフに相談して、その人から物理的に離れることにした。
デイケアに来るような人は、それまで社会から疎外されがちで、ましてそれなりの歳の人間は余計に“辛い日々”を過ごして来たのは、容易に想像出来る。
そして、そんな日々が少しずつ人の心をねじ曲げ、社会や他人に対する反感を育んだであろうことも察しがつく。
だけど、そんな人間同士がせっかく集まって、お互い心を寄り添わせながら、なんとか明るい希望を今からでも見出だそうとする場所で…。
私が、そしてポッキリ逝ってしまったのは、その人に背後から二度も「シラガーッ」、「**さんっ、シラガーッ」と“斬りつけられた”ことに因る。
私は、その人やほかの人にも最近、「自分で髪を染めるからどうしても襟足がうまくいかない」と洩らしたことがあった。
だから、人から見たら、私の耳元から首に掛けて、変に白い髪が現れるのはギョッとするだろう。
なので、不躾とは言え、最初の「シラガーッ」は“ただの気づき”だとして赦せる。
でも、二度目の「**さんっ、シラガーッ」はもう無意識とは言え、悪意があったとしか受け止められない。
それも、周りの人に聞こえるような大きな声で…。
私のこの白髪は、今までの人生のなれの果てであって、それまでを否定されたら、私の存在はこの世で皆無に等しくなってしまう。
それに、「後ろは染められない」って前から言ってあるのに、私はどうすればいいんだろう?
その後から、私は肩から背中に掛けて、すごく重みを感じるようになってしまった。
そして、以前にもましてうつがひどくなった気がする。
もうデイケアには行かないという選択肢もある。
でも、スタッフはいい人ばかりだし、最近親しくなった別の通所者もいる。
正直、ぱったり行かなくなるのは嫌だな。
かと言って、あの人に退所を迫るのもちょっと…。
あの人は実家暮らしで、近所の目もある。
昼間デイケアに来る必要があるらしい。
私は、そんな煩わしさがない。
うちでずうっと“仕事”してればいい身分。
私が、もうデイケアに行かなければいいかな。

経世済民。😑