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合法麻薬「お給料」について

締切つらい・ひとりで寂しい・固定給がほしい

以上3つの悲しみと欲望により、4年半続けた「専業フリーライター生活」を一旦終了させたのが2019年10月のこと。


「4年半続けた」なんて言っても、ライター仕事1本で安定収入つくってバリバリ食ってましたぜ! なんてことは全くない。

労働バランスは「めちゃくちゃ働く:ぼちぼち働く:すげー働かない=1:5:4 」くらいのもんで、めちゃくちゃ働いて稼いだお金をすげー働かない時期に平気で食いつぶすので、収支としては黒字<赤字の月が多いはず。

それに、ライター1本で稼いでいたわけでもない。ライター初期は朝キャバの副業をしていたし、その後も日銭がほしくなったら「インテックス大阪で転職イベント会場設営!」みたいな日雇い労働もやったりした。日給12000円。Amazonの倉庫でも働いた。時給1450円。見たこともないエグめのアダルトグッズを無心で棚に収めた。化粧品メーカーの工場でも働いた。ベルトコンベアで流れてくる商品の糸くずを取り続けるだけの8時間はわたしに「生きる意味とは」という根源的な問いを与えた。時給985円。

自由度が高くて国内外いろんな場所にいける、けど怠惰でルーズでどちらかと言えば労働抜きに楽しいことだけしていたい派な自分の場合、フリーライターという仕事は「無職と紙一重のフリー(ライ)ター」になってしまう。

専業フリーライターを辞めようと決めたとき、わたしの貯金は5ケタだった。2か月後の家賃がやべぇ。血眼で求人サイトを漁りまくった。


で、会社員になった。


といっても、そもそも新卒2年で3社退職している「天性の会社不適合疑惑」を背負った人間である。正社員ですんなり採用されるとも、週5出社の規則正しい生活にすぐなじめるとも、病まずに長く働き続けられるともまず思えない。

そこで、とりあえずお試し代わりに契約期間が数ヵ月と短めの派遣社員(制作職)に応募した。それが昨年11月。そして今年6月末で契約終了。お疲れさまでした。ありがとうございました。


貯金が7ケタになった。

おめでとうございます。ありがとうございます。プアめな我が人生における3年ぶり2度目の快挙。


これはちょっと衝撃だった。「お金を稼ぐためにとてもがんばった」という感覚は特になく、「月~金・9時~18時(残業有)と決められた時間だけ出社して決まった仕事をやっていたら勝手にお金が貯まっていた」のである。

仕事とプライベートの区切りがつきにくく、日々締切がくるために24時間なんとなくスイッチが切れないフリーランス時代から考えると、収入はもちろん「明確にオンオフのある日常」を手に入れたことは革命的な変化だった。

移動・引っ越しジャンキーなだけでもともと金遣いは荒くない、けどそもそも稼ぐ気概もない。心もとない貯金残高を見つめながら「家賃大丈夫かな、飲み会行って大丈夫かな、よさこいの遠征行けるかな、パソコンぼろぼろだけど買い替える余裕あるかな」なんて細々としたお金の心配をするのがデフォルトだったわたしにとって、その作業とストレスがない現状は、端的に言って中毒的な快適さがある。


マジで、お給料ってすごい。お給料って偉大。愛は世界を救うしお給料はわたしを救う。

「金と会社の奴隷になるな!」なんてカッコいい言葉に頬を打たれても「奴隷でなにが悪い!お給料様ぁ!」と跪いて上司の靴を舐めるくらいには教祖的な求心力がすごい。

経済的・それに伴う精神的な安定と労働力を引きかえに生きる立派な奴隷にオレはなる!



とも思い切れないから困っている。煮え切らない奴隷。


期間限定で会社員をしたことはとても良かった。理由はお給料だけではなく、自分の「好き嫌い・得手不得手」が今まで以上に明確になったことが大きい。

仕事内容ひとつとっても、自分が好き&得手な「取材・雰囲気づくりも含めた現場のディレクション」なんかは、自分も楽しいし周りからの高評価も得られた。

一方で、ここでは明言しないが嫌い・不得手な業務になると、あまりの憂鬱さに会社に行くのが怖くなり、ずいぶん久しぶりに胃痛がひどくて眠れない夜も過ごした。

上司や同僚はとても優しかったしお給料様から経済的な安寧を得ることはできた、けど、それらを手放すことより「仕事のことを考えるとほんのり憂鬱になる日々を過ごし続けること」のほうがよほど怖かった。


嫌い・不得手なことをすると病むし他人に迷惑をかけるので、これから愉快で健やかな人生を過ごすためには、こと自分のような0か100かの極端な人間は「好き・得手」のみで仕事・生活を考えたほうがきっと良い。

これまでやったいろんな業務、これまで経験した正社員・契約社員・派遣社員・フリーランス・レギュラーバイト・日雇いといった雇用形態、さらに30年目のお付き合いになる自分の性格や特性をふまえて、これからの仕事や働き方についていろいろと考えてみた。


その結果、「ぼくのかんがえるさいきょうのおしごと」が頭のなかで爆誕した。

おめでとうございます。ありがとうございます。


事業計画などとは口が裂けても言えないが、こんな風に働いて、こんな風に発信して、こんなものも商材にして、こんな感じでお金もらえたらとっても嬉しい楽しいダイスッキ☆じゃん最高じゃ~~~~~んみたいな妄想が膨らみまくって止まらない。

ちょっと下積みが必要だけど、実現したら絶対楽しいじゃん

きっといい感じになるじゃん

だったらやるっきゃないじゃん



でも、お給料様とはいったんサヨナラじゃん!!!?!?!?



ってな感じで、思考がいったり来たりしていた6月でした。

どっかで会社員しながら空き時間にそっちをがんばる道もあるんだろうけど、経験上それだと「嫌い・不得手」に脳内リソースとられてぐったりしちゃってそのうち頑張らなくなる。極端で不器用な人間なので、やるなら100%やるに舵切りたい。

もう90%くらい気持ちにケリはついてるけども、それでもまだ10%でわたしを揺さぶるお給料様はすごい。

一度味をしめると怖くて手放せない。それってもはや合法麻薬。


お給料に決して罪はないけれど、あまりの魅力につい道を踏み外しそうになる。せっかく無職になれる7月は、絶賛ヤク抜き期間にします。

読んでくださってありがとうございます◎