見出し画像

テレビ局がnoteを始めてみるまでの話②  ~「noteの徳力さんにぶっちゃけて相談してみた 前編」~

こんにちは。『日テレR&Dラボ』です。
今回も始まったばかりのこのページを開いてくださってありがとうございます!

「テレビのことしか分からない」私たちが、外の世界の方々と沢山知り合いになって、逆に日テレのことももっと知ってもらって、何か一緒に新しいことがやりたい!と思ってはじめてみたのがこの「note」です。

★決意表明はこちら↓↓↓

今回は「分からないことは素直に教えてもらおう企画」第1弾!
企業の人がやるnoteって何をかけばいいのか?どんなことに気をつけなくてはいけないのか?
溢れる不安と疑問を解消するべく、「ド直球」にnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんにお願いして私たちの悩みと不安を聞いてもらいました。

この座談会では、noteの使い方に留まらず、これからのメディアのコミュニケーションについて話題がどんどん広がっていきました。


■コロナ禍で今問われること…
  「自分たちの会社は何者なのか?」

西:徳力さん、今日はお忙しいのにお時間作っていただいて有難うございます!

徳力:いえ、大丈夫です。僕はこういう話をするの大好きなんで!

西:いきなり個人的な話になるんですが…、私は30年間ほとんどドラマ制作の部署に身を置いてきて、その狭い世界のことだけを考えれば生きていけるというところがどこかであったんですよね。
でも、R&Dラボに来たときに、「このセクションは日本テレビの未来のことを考える部署だ」と言われて、どんな役割が果たせるんだろうとずっと自分自身に問いかけていて…

北澤:確かに異動してきた時、私も「R&Dラボってどういう部署なのか」よくわからなかったです。今でもまだよくつかみきれてないぐらいで(笑)

西:ですよね(笑) そんな中でも、今なんとなく思っているのは…、R&Dラボというのは、日テレといろんなところが繋がっていくための「窓」のような部署になっていけたらいいんじゃないかと。
そして、窓として発信するにはnoteがいいんじゃないかという話になって、今日は徳力さんに色々お話を伺いたいと思ったんです。

土屋:最近、ベンチャーも含めていろんな企業と会えば会うほど、「広報部を窓口に…」と言っている時代ではなくなりつつあるなと思う事が多くて。だがら「日テレが外と繋がる窓」をこのR&Dラボで開こうというのは本当に早急にやらなきゃいけないことだなと思ってます。

西:なんとなく今、「窓」として外と繋がることでテレビの正しい立ち位置をきちんと見つめていかないと、テレビの魅力を失ってしまうんじゃないかという危機感があるんですよね。

徳力:なるほど…。このコロナ禍で「自分たちの会社は何者なのか」ということを、今全ての産業が問われています。お話を伺うと、日本テレビさんもまさにそれを問わないといけないフェーズが来ているんだと思いますね。

画像1

徳力:例えば、インターネット初期の新聞社さんが陥りがちだったのは、自分たちが「紙の新聞を作って配達する会社」だと思ってしまうことです。本来は「ニュースを欲しがっている人に届ける」ことの方がが重要な役割だったはずなのに、紙の方に資源を寄せちゃったことが、インターネットにおけるニュースを届ける役割をYahoo!やLINEに取られてしまった要因の1つになっていると言われています。

テレビ局の方々も同様で、自分達のことを「地上波の電波を使って番組を届ける会社」とだけ思ってしまっていると、せっかくのインターネットの無限のチャンスをスルーしてしまうと思います。
例えば「日本に楽しいコンテンツを提供するのが仕事」と考えれば、地上波で番組を見せるというのは1つの手段でしかなくて、YouTubeも使えばいいし、Netflixのようなサービスも番組を提供する一つの手段になり得る、というような。

「自分たちが本当にやらなくちゃいけないことは何なのか」という「軸」を一本持っておくと、流行りものに揺さぶられすぎずに、それをうまく使っていく…という風に対応できると思います。

■インターネットの強みは「バズり」ではなく
「ファンを積み上げること」

画像2

徳力:noteの活用の仕方を議論していく前に、日本テレビさんが「このR&Dラボでテレビをどう変えていくのか…」、もしくは変えないという選択肢も当然ありますが…、この議論が個人的には先だと思っています。

やはりテレビは今でも日本において本当に強力なメディアであり中心ですよね。
いわゆるマスマーケティングの象徴であるテレビの影響力は、実は日本においてはまだほとんど変わっていません。多くの人がテレビを見ているという状況が日本にはあって、ケーブルテレビ社会だったアメリカとは全然違うというのはまず念頭に置いておいたほうがいいと思います。

今日は象徴的な図を持ってきたんですよ!

(図を共有しながら)インターネットでバズが広がるというと、こっち側の「お祭り型」の図をイメージする人が多いんです。短期的に盛り上がるというものですね。

画像3

でも、実はTwitterのトレンドになるだけでは世の中の話題にはならなくて、それを更にテレビが取り上げるから「お祭り」のような凄いことになるんです。
例えば、炎上の場合も同じです。ネットだけで炎上しても実はそんなに大きな炎上にはならないですが、ネットメディアがそれを炎上だと取り上げて、最近ではその日のうちにYahoo!トピックスに出て、それを翌日テレビが情報番組で取り上げる…、そんな形で大炎上になってしまうんです。

加藤:確かに、良い方の「お祭り」の例だと、NiziUも最初はHuluの配信コンテンツだったのが、情報番組の「スッキリ」で特集されたことで幅広い視聴者に届き、そこで初めて知ったという人も結構いましたね。

徳力:一方で、インターネットが本来向いているのは、Twitterのフォロワーを増やすとかFacebookのファンを増やすというような、こっちの「ファン獲得型」なんですよね。
でもテレビ局の方は、インターネットで話題にして番組を見てもらおうと、インターネットを「お祭り型」に使おうとする方が多い印象です。しかし実はテレビのチャンネルで報道すること自体が一番の話題になるので、ネットでちょっと話題になったところで、そんなに視聴率に影響しないんですよね。

でも、最近ではTBSの「逃げるは恥だが役に立つ」に象徴される新たな動きが出てきています。今までのドラマはだいたい初回の放送が一番山で、2回目以降(視聴率が)減っていくのが普通だったじゃないですか。一方、「逃げ恥」では、ドラマがTwitterで話題になりファンが増えていくことによって、視聴率が右肩上がりに増えていきました。これは理想的なネットの話題化を組み合わせた成功事例だと思っています。

松本:「逃げ恥」は、Twitterと恋ダンスとストーリーの人気が相乗効果して「国民的な人気」になっていくパワーをみて、他局ながら「すごいな。頑張ってほしい」と思いました!局とか関係なく、テレビの可能性を広げてくれた感じがしましたね。

徳力:これって、実際に見た人がファンになると、その人がTwitterやInstagramという小さいメディアを持っているので、この人が周りに教えて視聴者が増えるという、ファンがファンを増やすサイクルが起こることによるものなんです。
今までテレビ局の方は、広告主が喉から手が出るほど欲しいリーチの枠を存分に自分たちで使えるので、あまりこうした「ファン獲得型」側の問題意識を持たなくても、視聴者を増やすことができていたと思います。一方でネット上においては、このファンがファンを増やすサイクルを作れるかどうかが肝です。
この「ファンを積み上げること」「コミュニティを作っていくこと」に意味があると思っていただけるかどうかが、テレビ局の方々がnoteのような地道なコミュニケーション系の取り組みをやるべきかどうかにおける最初の分岐点になります。
「マス」的なアプローチと「コミュニティ」的なアプローチの、大きな考え方の違いが立ちはだかるんです。


■「個人の顔」が見えないものは好きにならない
 コミュニティの時代

画像4

徳力:また、マスマーケティングとネットで象徴的な違いがもう一つあります。
「組織」の論理と「個人」の論理の違いです。
マスの時代というのは、通常「組織」の論理が前面にたって動いているんですね。テレビ局も通常は、番組というものが会社を代表しているので、テレビ局内の個人が表に出る必要は薄かったと思います。
でもインターネット上のコミュニティは人間社会なので、「組織」といった顔の見えないものよりも、「個人」を出すことが重要になります。大袈裟に言うと、人間って「組織」とおしゃべりしたい人はいないんですよ、たとえばTwitter公式アカウントにしても、「組織」にしゃべらせると宣伝っぽくなってしまうので、日本では「中の人」という「組織」と「個人」をブリッジする存在が出てきたんですよね。

一方で、「組織」の論理からすると「個人」の発言ってリスクなんですよね。でも、お客さんがそれぞれの「個人」を好きになってくれることで、会社全体も好きになってくれる可能性があるわけです。
例えばですけど、番組をずっと楽しみにしていたのに終了になってしまってがっかりしている人がネットにいたとして、その番組のスタッフが「終わってしまってごめんなさい」とお詫びをするとか…

久野:それはかなり斬新ですね!一番、番組が終了してがっかりしているスタッフから直接謝られると。

徳力:そしたら、きっとその視聴者の人も「仕方がないですよね」と返してくれると思います(笑)
でも、「組織」の論理だと、番組が終了したから謝るという発想って出てきにくいですよね。

土屋:「個人」の話でいうと、先日(WOWOWで放送している)「電波少年W」のコミュニティ担当たちと話をしたときに、「電波少年W」のTwitterアカウントが4000人から全然伸びないっていう悩みを打ち明けられて。
調べたところ、実は「電波少年W」がスタートしてから(プロデューサーである)俺のアカウントのフォロワー数が伸びているらしいです(笑) やっぱり視聴者にとっても、「こいつ(個人)から聞いた方が生の声が聞こえるんじゃないか」と思うのではと。
なので、中の人間=個を引っ張り出す、引き合わせるみたいなことをやると、いろんなものが開けてくる気がしますね。

徳力:誰にどんな話が刺さるかというのは、実際に喋ってみないとわからないんですよ。
例えば、「金曜ロードSHOW!」のプロデューサーの方と以前「ソーシャルテレビ・アワード」でお話したときにすごく感動した話がありました。「『金曜ロードSHOW!』をやめた方がいいんじゃないか、みたいな話はずっとあるけれども、それがなくなると日本の映画文化みたいなものがなくなっちゃうんじゃないかと思って(続けていこうと思う)」とおっしゃっていて、めっちゃ感動したんですよね。
確かに、日本人の多くはテレビで初めて映画に触れて、そこから映画館に行くわけで。
実は番組に関わる一人一人にそういう思いがあるじゃないですか。でも残念ながらそういった裏側の努力って伝わっていないですよね。

テレビ局の方々の話を聞いて、個人的にもったいないなと思っているのは、実はすごく思いを込めて番組を作っていて、その番組の中では伝えきれない色んな努力が裏側にあるけれども、それはやっぱり地上波の放送時間を使っては伝えられないので、視聴者に知られないんですよね。
なので、そういった思いをnoteなどで伝えてみると、何かが起こるかもしれないですね。

後編は…
■ネットを活用することでテレビがアップデートできること
■「褒められ体験」が足りない私たち
■そして…R&Dラボのnoteは何を書く?

テレビがもっと「個の顔」を出すことの意義から、「自社のファンと触れ合う大切さ」へとトークが続きます。

★後編はこちらでご覧いただけます↓↓↓


★私たちがnoteを始めた理由、決意表明はこちら↓↓↓


この記事が参加している募集

noteの書き方