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『雑草はなぜそこに生えているのか』稲垣 栄洋

『身近な雑草の愉快な生き方』がとても良い本だったので、稲垣さんの雑草シリーズ2冊目。「中高生の理科の教科書を意識した」と書かれる本書は、植物の生態について基礎からわかりやすく書かれていて、面白いだけでなく、環境や生物についての勉強にもなる一冊です。

雑草とは 「弱い植物」

コンクリートの隙間でもたくましく生えてくる雑草は、実は植物の中では競争力のない弱い植物である。その証拠に、私達の生活でよく見かける雑草たちは、森の中では生きられない。強いから都会でも生きていける、ではなくて、弱いから都会に進出しているということ。

雑草は「適応力」がすごい

よく見る雑草「スズメノカタビラ」

弱い変わりに変化への適応がものすごい柔軟なのが雑草の大きな特徴。例えば、道端や公園などあらゆる場所に見られるスズメノカタビラという雑草は、環境に応じて穂をつける高さを自在に変えることができる。何もなければ30cmほどに付く穂は、人間が草刈りを頻繁にする場所だと地面ギリギリで付くこともある。そして、その種を別の場所に持っていくとその子孫もまた地面ギリギリで穂をつける。雑草は、短期間で遺伝的な変化を起こせることで人間に近い環境で生き延びてきた。

さっさと妥協してしまえ

こんな雑草の生き方をみて、稲垣さんが引用する言葉が心に響く。

中江丑吉(1889-1942)という思想家は「人間はそれぞれ守るべき原則をひとつかふたつ持てばそれでいい。他のことはさっさと妥協してしまえ」と言っていたという。

『雑草はなぜそこに生えているのか』P78

雑草は、自らの姿かたちだけではなく、成長サイクルや花をつける時期さえも自由に変えていく。それが、確実に後世に遺伝子を残す雑草の戦略だということを学び、雑草の生き方へ共感を感じた。

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