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2021年6月の北方領土での軍事演習のまとめ(1)

 色々あって遅れ気味ですが、今回の北方領土でのロシア軍の演習をまとめてみます。

 まず、「着上陸作戦の絶対条件である制空・海権の確保はどうなってるの?」とか「主力部隊の輸送は?」とかの疑問があるでしょうが、それらの高度かつ図星、ガチ筋で泣き所のご意見はスルーさせていただきます。すいません。 
 以前アップしたロシア側の報道のみを素材にしてこの演習の全体図を考察して行こうと思います。分かっているピースから繋げて、広げていくパズルのやり方です。

 取り敢えず、概ね以下の順番で演習自体をまとめて行きます。何しろパズルの全体図が見えていないので、後で変わったらごめんなさい。        

1  演習の枠組
2  演習の背景・目的・想定
3  演習に参加した部隊
4  演習の流れ

今日は、1 演習の枠組です。
 本演習は、東部軍管区司令官代行のセルゲイ・セヴリュコフ大将が統裁官でした。

 東部軍管区と言うのは、ロシアの東部、ざっくり言うとモンゴル・中国・日本・アメリカのアラスカ・北極海を挟んでカナダと国境を接した範囲(シベリアも含みます)に駐留し、管轄するロシア軍の集団です。
 下のオレンジの部分です。地球上の陸地の何分の一とか二とかの広さだと思います。
(ロシア国防省HPから引用https://structure.mil.ru/structure/okruga/east/news.htm?objInBlock=25&blk=10353193)

 ここの司令官代行(トップの司令官がこの時何してるのかは知りませんが)が演習の統裁をしています。セヴリュコフ大将の話は後でしようと思います。
 
 次に統裁官と言うのは、プロデューサーに相当します。映画なんかで製作/総指揮とかクレジットされている人です(大谷さんのDH/Pみたいで、/って良いですね)。 
 映画界ではこのポストの責任が興業成績まで及ぶように、この演習統裁官(東部軍管区司令官ポストの人)の責任は、国家安全保障上の成否まで及んでいます。
 従って、6月25日付けの国防省機関紙の記事が、演習とは別に、北方領土駐留部隊の増強状況を長々と付け加えた理由は、統裁官の意を汲んで「しっかり守ってるけんね、攻めてきたら知らんかんね」的な安全保障上のメッセージを込めたものと考えられます。
 演習は、

 最後にセヴリュコフです。あ、階級間違いですね。中将でした。まず彼のプロフィールです。色々ネット内を探しましたが、ほとんど内容が同じなので、Wikipediaのロシア語版を引用します。

1964年:ロシアのタタルスタン共和国生
1982年:軍学校卒
1986年:戦車士官学校卒
1991~95年:東部軍管区(投稿者注:当時は極東軍管区)で戦車中隊長~副戦車大隊長
1985年:レニングラード軍管区で戦車大隊長
1998年:戦車大学卒(金メダル授章)
1998~2010年:東部軍管区で自動車化狙撃連隊長、軍管区教育センター所長等
2012年:ロシア軍参謀本部大学卒、南部軍管区で第49軍副司令官
2013年:第49軍司令官
2019年:東部軍管区で軍管区副司令官

 誕生日はマッチとほぼ同じで、中瀬ゆかりさんと1ヶ月違いです(何が言いたいのか自分でも分かりません)。結構東部軍管区での勤務も長いようですね。演習統裁は、軍管区副司令官としてでなく、司令官職の代行として参加したので。演習中は「オマエラ全然分かってねぇなぁ!」とか虎の威を借りた古参OBとして部下にとっては面倒臭かったかもしれません。
 さりげなく軍参謀本部大学卒ってありますが、ここを卒業しないと将軍になれません。ここでの教育は陸海空部隊の運用の他国家安全保障戦略等、軍事・外交・政治にわたる最高レベルのものです(どこの国でも)。

ところでこの経歴の中で、不確かで都市伝説みたいなんですが面白そうな話がありました。2016年2月5日報道のウクライナの反ロシアマスコミの「informnapalm」
(https://informnapalm.org/19499-li/)から一部を引用します。
 話は2014年頃、ウクライナで親西欧野党が親ロシア政府から政権奪取する革命が起きた時期に遡ります。それがこの記事の背景です。
「informnapalm」はある個人のSNS内の写真を取り上げ、それが2015年春に第7ロシア軍基地の士官が「勇敢」勲章を授章したとき、同僚が撮影したものと紹介し、以下のように報じました。

Идентифицировать личность награждающего тоже не составило труда. Им является командующий 49-й армии Южного военного округа ВС РФ генерал-майор  Сергей Севрюков, назначенный на эту должность в декабре 2013 года.
勲章授与者個人の特定は簡単である。彼は2013年12月にこの職に就いた南部軍管区第49軍司令官セルゲイ・セヴリュコフ中将である。
Не секрет, что именно войска Южного военного округа и, в частности, 49-я армия ВС РФ стоят в авангарде российской военной группировки, нацеленной против Украины. Командование и войска ЮВО  являются основной опорой гибридной войны и терроризма на Донбассе – об этом неоднократно сообщало ГУР МО Украины, а также такое авторитетное издание, как Bloomberg, а InformNapalm дополнил эти данные важными деталями.
ウクライナ国防省情報部は、ロシア南部軍管区の部隊、特に第49軍がウクライナを標的とする軍グループの前衛であり、ドンバス内でのハイブリット戦とテロの支柱である事は公然の話だと繰り返し発表しており、有力メディアのBloombergもInformNapalmもこれらの情報を重要なデテールと付言している。
Исходя из всего вышеизложенного, в том числе учитывая период награждения (фото Ли и командира с орденом) и статус награды, можно предположить, что орден Мужества старшему лейтенанту С. Дудорову генерал-майор С. Севрюков вручал по итогам дебальцевских событий февраля 2015 года, когда для перелома ситуации и поддержки боевиков «ДНР/ЛНР» российское военное командование активно использовало батальонно- и ротно-тактические группы ВС РФ, развернутые в приграничных с Украиной полевых лагерях Ростовской области. 
表彰の時期、そのステータスを含めた上記の全ての内容から、セヴリュコフのドゥドルフ(投稿者注:表彰された士官)への表彰は、2015年2月のデバリツェヴォ事件、つまり「ドネツク/ルガンスク人民共和国」武装集団の状況打開と支援のため、ロシア軍司令部がロストフ州のウクライナ隣接野営地に展開させた大隊・中隊戦術グループを積極的に活用した功績によって行われたものだと考えられる。
К тому же  подразделения 7-й оккупационной военной базы ВС РФ неоднократно фигурировали в разных эпизодах наших OSINT-расследований в контексте ростовско-украинских командировок.
 また、第7ロシア占領軍基地隷下部隊も我々の公開情報調査に何度も取り上げられている。
А некоторые военнослужащие-контрактники с этой базы и по сей день, параллельно со службой в ВС РФ, числятся в составе НВФ «Новороссии».
一方、この基地出身の職業軍人の何人かは、今日まで軍勤務と表裏一体の不法武装集団「ノヴォロシア」の一員として数えられている。

  細かい事にくどくど苛ついた様子が行間に滲み出て、何かバイト先のおばさんに叱られているような面倒な文章ですね。
 要は、ウクライナ革命の時にウクライナ・ロシア国境辺りに親ロシア派武装集団(ロシア語を話し、ロシア軍の正規装備を保有し、ウクライナと戦っているけど、ロシア軍人ではないと言い張る人達)が突如現れ、クリミアを含むウクライナの一部地域を分離・独立させてしまったのですが、その作戦にセヴリュコフが深く関わっていたに違いないということです。前述の参謀本部大学卒じゃないと出来ない作戦でもあることですし。

 まぁ、ホントかそうでないかは分かりません。当時第49軍がウクライナ近辺にいたかどうかさえ、ロシアの国家秘密レベルの情報ですから。
 ただ、個人のSNSと言う情報ソースは「誰でも何でも勝手に書き込めるが、全くの嘘っぱちを書き込む必然性がない」と考えられます。また割愛しましたが、「informnapalm」はこの記事で単純なでっち上げとは思えないほどSNSの撮影場所や時期等を非常に綿密に調べていること、youtubeにも似たような「セルフイ・ソルジャーズ」(https://www.youtube.com/watch?v=2zssIFN2mso)という「ナゼかウクライナにいるはずのないロシア軍人が自撮りした動画」が、うっかりアップされたりしていることを考えると、私自身はあり得るのかなぁと思います。
 
 この記事の結論は、北方領土駐留部隊の演習は、このような噂のある人物がプロデュースしていたり、結構奥行のあるものということです。
 北方領土返還が達成し、ここで初めての選挙が行われたとしても、日本からの独立・親ロシア政策を訴えるロシア人が自治体の長になったら?

  次は演習の背景・目的・想定等について書きたいと思います。

  

 

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