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精撰加工とは

荒茶を仕上げ茶にするために、精撰加工という工程があります。
荒茶というのは農家が茶畑で摘み取った葉を蒸して揉んで乾燥させた状態です。漢字の通り荒い状態の葉なので、このまま店頭に並ぶことはほとんどありません。荒茶には様々なパーツが残されており、綺麗な状態ではないからです。

①粉(軽い葉)
②茎
③芽(小さな葉)
④本茶(仕上げの主になる葉)
⑤頭(大きな葉)
⑥古葉・硬葉
⑦異物(茶ではないもの)

荒茶のパーツは大きく分けると上記のように分けられます。⑦異物以外は全てちゃんと飲むことが出来る茶葉なので、入っていることがNGという分けではありませんが、美味しく綺麗なお茶を飲んでもらいたい、と考えるとバランスを取ることが必要になってきます。

基本的には④本茶と呼ばれるしっかり揉まれた葉の部分が主になります。旨味が強い③芽茶と切断して細かくした⑤頭などもバランスを取って配合し完成します。①粉や②茎は選別したあと、粉茶や茎茶(白折)として商品になります。グレードによって除去するレベルや配合の比率が変わってきます。グレードの高い物ほど本茶や芽茶以外のパーツは少なくなっていきます。

ではこれらをどうやって選別していくのか、パーツごとに見ていきましょう。

①粉は唐箕と篩(ふるい)によって選別されます。唐箕とは風を使い、軽い葉を吹き飛ばしていきます。茶の入った箕(み:かご)を勢いよく振り上げ空中に浮かせ、またキャッチすることで重い茶葉はそのまま箕へ、軽い粉は遠くへ飛んでいきます。繰り返すことでしっかりと撚れた葉と軽い粉に選り分けられていきます。また、篩は網の細かさを利用して、細かい粉は網の下に落ち、必要なものは網の上に残ります。

②茎は静電気を利用した物と光の反射を利用した物があります。よく乾燥した茎は静電気に寄せられくっつきやすくなります。静電気を帯びた物体を近づけることで、茎だけを取り除いていきます。でもそれだけでは十分ではありません。細かい溝がたくさん並んでいる機械に少しずつ葉を流していきます。その溝一つ一つに光を照射し、反射してきた光の強度によってセンサーが反応し茎を風で吹き飛ばす機械があります。茎の方が白っぽいので、反射光は強いわけです。これによって更に細かく茎を取り除いていきます。

③芽は葉が伸び始めた頃の所謂小さな丸まった葉です。ここには旨味がぎゅっと詰まっていますが、味に偏りが出てしまうので、バランスを整える為に取り除いて調整することがあります。篩網で細かい部分を網下に落とします。取り過ぎてしまうといけないので、その辺は問屋さんの技術が必要です。

④本茶は製品になるお茶の一番メインの部分です。篩や唐箕、茎の選別機などで余分なものを除去したものです。どこからどこまでを入れるのかは問屋さんの匙具合。茎や粉が少し入っていたり、芽が全くなかったり、それらは製品としてのお茶をどう特徴出したいかで変わってきます。

⑤頭は大きな葉の部分です。芽とは逆に篩の上に残った物です。切断して本茶にすることもありますし、そのまま取り除いて『柳』というお茶として仕上げることもあります。

⑥古葉・硬葉は茶を摘採する課程で、冬を越した硬い葉が混入してしまうことがあり、そのまま乾燥されてしまった物です。苦みが強く香りも悪いので、取り除いてしまいます。茎と一緒に選り分けられたり、篩の上に残ったり、唐箕で外されていきます。

⑦異物は同じく摘採の課程で刈り取られてしまった枝の部分や別の植物、製造の時に混入してしまった金属部品や被覆資材などがあります。篩の上に残りますし、金属除去装置も仕上げ機の各所に取り付けられているので、最終製品には残らないようになっています。

これらは総合仕上機という全自動の機械で、ベルトコンベアで運ばれながら選別・除去されていきます。その細かい設定やブレンド、作業工程を手配するのが問屋、茶師の技量です。同じ機械でも設定・篩網の選定・時間などでまるで違う製品ができるのです。

次回は仕上の中でももっとも気を遣うと謂われる火入れの工程をご説明します。

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