荒茶製造のお話
さて、お茶を淹れる、ってどういうことなんでしょう。
日本茶大好きおじさんとしては、お茶が美味しいから大好きなのであって、淹れるのが楽しいから大好きなのであって、始まりはやはりここからなんです。これまで製造の話ばかりしてきましたが。。。
お茶を淹れるという行為は、お茶の製造をさかのぼる事だとも言えます。なので、お茶を淹れる為にはどうやってお茶が作られているかを考えなければなりません。
あれ? お茶の淹れ方は? また今度ですね。
日本の緑茶は基本的に、3~5月の新芽が伸びてきた頃に摘み取られた柔らかい葉を、蒸して揉んで乾燥させて作ります。緑茶の1分類である煎茶は蒸熱・粗揉・揉捻・中揉・精揉・乾燥という工程を踏みます。漢字を見て分かるように、ほとんどの工程で揉むということをしています。
・蒸熱
生葉に大量の水蒸気をあて、熱を通すことで葉の酸化酵素を失活させます。植物なんでもそうですが、折ったり切ったりしても呼吸は続けています。酸素を吸うことによって酸化が進み、吐き出す息に水分と二酸化炭素が含まれているので、萎れていきます。この酸化を速やかに停止させる為に、熱を与えるのです。この際に水蒸気を使って蒸すのが、日本の緑茶のオリジナリティとも言えます。
・粗揉
まず揉みます。揉むことによって茶の水分を揉み出して、出てきた水分に対して高温の熱風を吹き当てることでお茶の乾燥を進めていきます。この時、風量が多すぎたり風温が高すぎたりすると葉の表面が乾くうわ乾きの状態になってしまうので、揉み出す水分と熱で乾燥する水分量が一定になるようにコントロールしなくてはいけません。
・揉捻
また揉みます。ここでは茶内の水分を均一にするために、熱を加えずに揉んでいきます。茎や葉柄の硬い部分からの水分も十分に揉み出していくことで、全体の形も整っていきます。
・中揉
粗柔と似たような工程で熱風を与えながらまた揉んでいきます。茶の水分をより揉み出していき、茶葉を撚りながらより細くしていきます。茶温が上がりすぎると赤黒みの原因になってしまうので、温度と圧力のバランスが重要になっていきます。
・精揉
形を整える為に熱風ではなく伝熱で乾燥を進めていきます。茶葉の方向を揃えるために複雑な機構を持った機械を使い、熱の伝わった板上で揉まれていくことで、細く撚れていきます。乾燥が進む度に揉み圧を増やし、最後は圧を弱め葉を揃え丸みを与えます。
・乾燥
揉み切ったお茶に熱風を与え続け、乾燥を進めていきます。含水率が5%以下になったら一旦保存が効くようになります。この状態を荒茶と呼び、問屋さんが仕入れをして仕上げてをしていくことになります。
時間をかけて揉み続けることによって、生の葉が乾燥した茶になりました。
揉むことによって、ペラペラだった一枚の葉が撚りきられ、細長い針状の形に変化していきます。この針状に捻れた状態がみなさんがいつも見る製品としての茶の形状です。この撚れた葉を水やお湯を使ってふやかして、元の葉っぱの形に戻してあげよう、というのがお茶を淹れるという行為でもあるのです。
長くなりましたので、淹れ方の考え方に関してはまた次回。
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