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PR効果だけじゃない!スタートアップにこそ効果的な「カオスマップ」作り

「nikkeisha start-up table」では、スタートアップの「1→100」のために、成長期に直面するさまざまな悩みや課題に応えるべく、“社会との対話“の機会を提供しています。

新たなビジネスを興したスタートアップが、その後もさらに成長を続けていくためには、自社を知り市場を知ることで、より高い視座を持つことが必要です。

今回は、自らの市場を俯瞰するための最も効果的な方法として、「カオスマップ」作りを通した学びをご紹介します。

自社が属する市場のプレイヤーを洗い出し深掘りしていく中で、業界全体のカタチや自社の立ち位置を多面的に理解することができ、勝ち筋やリスクも自ずと見えてくるはずです。

1.「カオスマップ」作りで、市場の姿を浮き彫りにしていく

カオスマップとは、「業界の商品やサービスをカテゴライズして一覧化したもの」です。より具体的にいうと、特定業界の全体観を伝えるために、範囲内にある主要プロダクトのロゴを、それを読み手に意味あるよう区分して1枚のスライドに載せた、フレームワークの1つです。

市場の全体像を把握する最初期段階で作られるものですが、見てすぐ「お役立ち」が分かるので、自社のPR目的で公開するスタートアップも多いです。

これを作る過程では、業界をさまざまな視点で徹底的に調べ尽くす必要があります。その際、自分自身の関心と見ている範囲で調べても、知っていることが可視化された以上のものにはなりません。

ある業界の様々な立場のプレイヤーを読み手として想定し、その関心に基づいて範囲を定め、調べ得る限りのプレイヤーを洗い出し、読み手に意味ある観点で分類することが最も重要なポイントです。

自社が考える業界だけでなく、隣接する業界、その業界を顧客とする専門職や投資家など、多様な立場を想定し、各々の関心に基づいて掘り下げていくのです。

表層的な捉え方だけでなく、さらに深掘りして捉えることが出来るので、市場の定義や自社事業の整理ができる点でも、非常に有効な作業となります。

慣れない内は、どう絞ったらよいか、どう図示すれば良いか、悩むかもしれません。

しかし、調べていく内に徐々に、頭の中にカテゴリの全体像が浮かび上がってくるはずです。


2.多様な視点を検証しながら網羅的に調べてみる

まず最初のステップとしては、さまざまな立場のプレイヤーそれぞれの関心を念頭に置きながら、1つ1つのサービスや企業を掘り下げていきます。

その際、分かる情報だけで以下のような仮説を立てます。

⚫︎誰のどんな困りごとや欲望を解決するために、どのような商品を、どう売って、どんな対価と付加価値を得ているか(ビジネスモデル)
⚫︎誰から何を仕入れ、どんなプロセスでどんな付加価値をつけて、どんな商品にして、誰にどう売っているのか(バリューチェーン)
⚫︎どんな客層があり、それぞれにどのような課題や購買行動の違いがあり、どういった理由で、そこの中の誰に絞って商売しているのか(セグメント・ターゲット)
⚫︎この会社が実際に戦っている相手は誰と誰か、外部から見る限り、どちらがなぜ、どれくらい優勢なのか
⚫︎自社の強み・弱みを踏まえて、どのように勝てる/負けない構造を作り上げているのか(ポジショニング)
⚫︎それら既存の儲けや他に対する優位を脅かす競合の戦い方や環境の変化は何か(市場トレンド)

もし、より深く構造を理解するために、裏を取る必要があれば、更に記事などを検索して、自分が考えた仮説を素早く検証します。

書かれていることの裏側、敢えて言っていないこと、異なる場所にある情報の断片を組み合わせて分かること、そこから浮かび上がる、各当事者のものの捉え方と狙いまで考えながら、手を動かしてみます。

そうすると、自社が依って立つ市場の、静的な構造だけでなく、それぞれの思惑と、動的な綱引き、大局的な流れも見えてきます。

その思考訓練を積み重ねることで、1つの世界に対する多面的で深みある全体観を持つことができます。

そうすると、それぞれの相手から見た自社の魅力や、強み・弱みも浮かび上がり、勝ち筋も見えてくるでしょう。


3.市場を創る「パブリックアフェアーズ」にも役立つカオスマップ

別の側面からも、カオスマップ作りに取り組むメリットがあります。

新しいビジネスモデルやプロダクトを世に広めるために、既存のルールを変えていく必要が出てくることがあります。

シェアリング、Fintech、ブロックチェーンなど、法制度が市場に追いつくのを待てないものが増えています。

そのような時、同じ課題意識を持つ他者と業界団体をつくり、政策提言や働きかけを図っていくことも必要です。

ルールメイカー側の立場からすれば、1つの集約した窓口とコミュニケーションを取った方が効率的ですし、業界の総意であれば真剣に聞くでしょう。

一企業の利益ではなく、業界全体の利益とした方が、公共のために仕事をする行政には受け入れやすいともいえます。

「うちの会社/業界のビジネスに邪魔だから、この規制を撤廃してほしい」といった個別の企業や業界の利益のための提案は通りません。

法律は公共の利益のために作られるものですし、補助金や減税も国民から集めた税金が原資である以上、公益や公平の観点で論理を組まなければ、行政には受け入れられません。

選択する事実やその解釈により、主張は変えられます。ポジショントークを公益観点で説明可能にする、とも言えます。

カオスマップは、そのような業界団体の仲間づくりや、公益・公平の視点を持つための業界全体把握にも役立ちます。

読み手を考える段階
⚫その市場に関係するどんなプレイヤーがいて、どんなことに関心があるか
⚫それらを複数の読み手の視点で考える

各プロダクトを調べ、区分する段階
⚫︎各プレイヤーが、現状をどう捉え、未来をどう読み、何をどのようなシナリオで実現しようとしているのかを推測する
⚫︎各プロダクトが、誰にどんな価値を提供し、競合や代替品とどういう違いを出そうとしているのか
⚫︎どのような能力や有形無形の資産で差別化を実現しようとしているのか
⚫︎実際のサービスの出来や、勝負のつき具合はどのようなものか

1つ1つのプロダクトを調べる際に、これらを推理し、必要なら裏付けとなる情報を取りながら掘り下げていくと、異なるプレイヤーの観点で、業界全体の利害構造を複眼的に把握できるようになります。


4.まとめ

スタートアップこそ、「カオスマップ」作りに取り組むことが、有益である理由についてまとめてみました。

深く考えて調べながら理解したものは、長い間頭に残ります。

業界を知り、己を知る。

”社会”を知り、仕掛けていくための第一歩として、この年末休みなどに、まずはカオスマップの作成に取り組んでみてはいかがでしょうか。詳しい作成方法やコツについては、高橋龍征さんがまとめられたnote記事をぜひご覧ください。

※「nikkeisha start-up table」では、カオスマップ作りの「もくもく会」等の開催も準備中です。ご興味ある方は、ご連絡ください。

(共著:高橋 龍征氏)



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