見出し画像

『実家本屋改造計画』④「正月」

※これまでのお話。
①「敷地外」
②「待合室の主」
③「腫瘍」

ーーーーーーーーーーーーーー
随分、間が空いてしまった。

寒いのが嫌いなのと雪などで交通機関がマヒしがちなので、冬は基本的に地元にはあまり帰らないのだが、前回の親父の手術の後、兄貴が見舞いに行ったらしく、その時に『今年の正月は家族で集まりたい…』と急に家族の絆パワーみたいなものを発揮した親父と、それを受け取って同じく家族の絆パワーを発揮した兄貴からめちゃくちゃ連絡が来て、それに根負けして正月帰る事になった。酔っ払ってんのか、家族の絆パワーに。ちくしょう。

地元までは、東京から新潟まで新幹線で行き、新潟からは海沿いを走る特急電車に乗る。新潟までは何も問題なかったのだが、特急に乗り換えた後トラブルに遭遇する。そう、乗車中に『能登半島地震』が起きたのだ。突然鳴り響いた乗客達のスマホからの「地震です」の大合唱。一瞬で車内に広がる動揺。電車は、すぐに近くの大きなトンネルに緊急停車した。安全面としては、大変ありがたかったが、スマホが圏外になってしまい、何も情報を拾う事ができなくなってしまった。たまに電波を拾えた人が、「能登で大きな地震があったみたい…」と話していて、何とか状況を知れた感じだが、詳細が全く分からないので、外に出たら漫画の『ドラゴンヘッド』(著:望月峯太郎)みたいになっているんじゃないか、と少しソワソワしていた。車掌さんのアナウンスは、ひたすら「周囲の安全面の確認をしております」というもので、とりあえずどうしようもないな、と思い、持ってきていた本を読みまくっていたら、そのまま手持ちの本も全部読んでしまい、やる事が無くなってしまった。日常生活で電波に依存し過ぎている事を自覚する時間だったが、今思うと電波が来ていたところで何も出来なかったし、錯綜する情報を眺めていたとしても、いたずらに焦るばかりだったと思うので、これはこれで良かったのかもしれない。

数時間して、やっと安全の確認が取れたとの事で、電車が動き出した。トンネルを抜け出した瞬間、電波が入り家族や親戚からたくさんの連絡が入ってくる。とりあえず無事を伝え、どこかの駅に停車したら再度連絡する旨を伝え、ネットで一通り情報を拾う。どうやら山形の海側にも津波警報などが出ているようだった。一番最寄りの駅は何故か通過し、特急の停車駅にやっと停車。この時の、外に出た時の解放感が凄かった。地元には、まだ少し遠いところだが、友人達の地元でもあるところ。見える範囲では、特に被害が無さそうだったのでよかった。自販機で飲み物を買い、一気に飲み干した。食べ物はちょこっと持っていたが、飲み物は無かったので、喉がカラカラだった。車内販売が無くなってしまったのは、こういう時にはキツイな、と思った。これ以上電車は動かないとの事で、先に地元に帰っていた兄貴に車で迎えに来てもらう事に。各所、安全のため交通制限がかかっていたが、遠回りだが、無事に実家に帰れた。

帰ってみると、母と従妹はコロナにかかって寝込んでおり、親父は風邪をひいてダルそうにしていた。家族の絆パワーは、結局病気には勝てず、これは帰らなくてもよかったんじゃないか…?ちくしょう。そんな想いを胸に、おせち料理を食いまくり、酒を飲みまくり、すぐに帰りの日になった。東京に戻る道中、もう特急や新幹線、電車が割と平常運転していて有り難さを実感した。年末年始、トラブルが起きても誰かのために必死に働いてくれている名も知らぬ方達に感謝である。それは、コンビニや定食屋さんでも何でもだ。今年はなるべく『人にやさしく』を心がけるつもりだ。スナックでは、ブルーハーツを歌う。ちなみに、親父の術後は良好で、顔の腫れなどが凄いが、時間の経過と共に良くなっていくだろうとの事。何だか食欲が凄いらしい。食えるなら大丈夫だろう、と、とりあえずは一安心である。

そんな正月を乗り越え、新年会で記憶を失ったり、本のイベントに出店したり、その打ち上げで美味しい豚汁やおにぎりを頂いたり、また酒で記憶を失ったり、酔って家に帰りアイスのスーパーカップを一口だけ食べて、冷凍庫ではなく何故か冷蔵庫に入れていたり、大好きな漫画家の芦原妃名子先生が死んでしまったり、誕生日を迎えたり、今期の花粉症が始まったり、ひたすら映画を観てアニメを観てドラマを観てゲームをして本を読んで漫画を読んだりしまくって、そうしてやっとやっとやる気が出てきたので新刊の制作を開始したり、でも自分のやつが全然書けなかったり、いや、書けないというと語弊があり、いくつか書き出したものがあるのだが、どれも様々な理由からなかなかしっくりこず、筆が進まなかったというのが本音であるのだが、少し自分の中での方向性が見えてきたので、やっと書けそうだな、というのが現状である。そして、それらを書くためのリハビリのような感じでこれを書いた。久しぶりに長めの文を書いて、少し感触を取り戻せた気がするが、どうだろう。また花粉がきたのか、目が痒いし、鼻水がすごいので、ぼんやりしている。明日は、もっといいのが書けるだろうか。

今回、タイトルである『実家本屋改造計画』の計画の詳細を書こうとしていたのだが、思ったより正月の事で文字数が多くなってしまった。また次回を楽しみにお待ち頂きたい。

続く。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ヘッダーは、実家の片付け中に発掘したバイブルの『OH!MYコンブ』。いくつか歯抜けだったので、古本屋で見つけたら買いなおしたい。

#エッセイ #コラム #日記

お読み頂きありがとうございます。コーヒー代と本代に使います。