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自転車で日本一周した高校生 109日・6054kmの軌跡

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文=りあお(N高5期・通学コース)
写真提供=おしるこさん


一人の高校生の挑戦

2月のある日、一人の高校生がとてつもない挑戦を始めた。
自転車にまたがり、颯爽と走り出した彼の名はおしるこ。この春に卒業を迎えるN高生。

彼が挑戦すること、それは、自転車で日本を一周すること。
それを達成するために、スタート地点である愛知県から岐阜県へ自転車を漕ぎだした。

彼がなぜ日本一周に挑戦するのか。それは以前の経験が関係していた。

1年前、彼は紀伊半島を自転車で一周していた。その他にも、名古屋から東京をたった1日で走り切るなど、自転車で多くの挑戦をし続けていた。
しかし、それだけでは物足りなくなってしまったようだ。
「それなら日本一周をしよう!」そう思い、この挑戦を始めたようだ。

旅は岐阜県から三重県へと南下し、日本一周を思い立つきっかけにもなった紀伊半島へ。
強い向かい風に抗いながら、以前知り合ったロードレーサーの方に紹介してもらったという場所へ。

大阪府・りんくう公園マーブルビーチ

遠くに見える橋は、関西空港へと向かう関空連絡橋。
綺麗な景色に癒されながら、大阪府の中心部へと漕ぎ続けた。

電車と勝負

大阪の中心部へとたどり着いた彼は、電車と自転車どちらが先に10km先の目的地にたどり着くか、友達と勝負をすることにした。
とても不利に思えるが、彼は自転車のまま勝負に挑んだ。
結果は惜しくも負けてしまったが、たった1分という僅差の接戦だった。

そんな勝負もしつつ、今度は西に向かう。
当時は世界最長のつり橋だった明石海峡大橋を眺めながら、瀬戸内海沿いを漕ぎ続けた。

兵庫県・舞子公園

さらに西へ進み、岡山県の宇野港へ。人生初の船に乗り、海を越え四国の香川県へたどり着いた。
ここでは無人のキャンプ場で宿泊。朝目が覚めると気温がマイナス3度だったという。
吉野川沿いを西へと進み徳島県をまたぎ高知県へ。この旅で初めて1日の移動距離が100kmを超えたようだ。
順調に旅は続き、仁淀川沿いを北へ進む。

高知県・仁淀川

四国山地を貫く全長5432mの長いトンネルを抜け愛媛県へ。休む間もなく、しまなみ海道へ進み、ついに四国との別れ。
自転車で海を渡ることができるこの道、晴れ渡る空と透き通った海がとても綺麗。

愛媛県・多々羅しまなみ公園

しまなみ海道を抜け、広島県へと入り、再び瀬戸内海沿いを西に向かった。
本州の最西端、山口県から関門海峡を通り、九州の大分県へと向かう。関門海峡は、地下にトンネルがあり、自転車もそこを通ることができた。
関門海峡は、車や電車など、様々な乗り物で通ることができる。日本一周も同じように様々な手段で出来るが、なぜ彼は自転車で日本一周しようと思ったのか。
車やバイクだと体力的に楽で物足りない、電車だと金銭面で不安など色々な理由がありそうなものだが、彼は自転車で行くことしか頭になかったようだ。

山口県・壇ノ浦古戦場・長州砲

ベストショット

関門海峡を越え、九州に入り、大分県へ。
湯布院からは、やまなみハイウェイを通り、熊本県の阿蘇へ。
彼がこの旅で一番楽しかったというこの道。周りが開けていて走るのが気持ちよく、自転車をこぐのが一瞬に感じられたそうだ。

大分県・やまなみハイウェイ

阿蘇から宮崎県へ向かう道の途中、この旅一番の絶景が現れた。
景色は綺麗だったが、坂が急で、漕ぐのが大変だったという。

熊本県・箱石峠

アップダウンを繰り返し山を越え、宮崎県から鹿児島県へ。
途中、自転車がパンクしてしまった。この旅では唯一のパンクだった。
自分でパンクを修理したが、手間取って足止めを食らってしまったようだ。
無事に鹿児島へ到着し、桜島を眺めつつ船へと乗り込んだ。

鹿児島県・桜島

船の中で、同じく自転車で日本一周している人に出会った。その方は、石川県にある和菓子屋の長男という。年齢も近いということもあり、話が弾んだ。
船からの朝日を眺めているうちに、日本の最西端、沖縄県へと到着した。
沖縄をぐるっと一周し、綺麗な海を堪能し、国際通りで観光もしたようだ。

沖永良部島
沖縄本島・ニライカナイ橋

再び船に乗り、九州へ再上陸。そこからすぐに熊本県に入り、公園でキャンプもしながら北へと向かった。熊本城を眺め、船で長崎県の島原へと渡る。
店主が有名バンドの元メンバーという食堂や、展望台からの夜景を堪能し、一気に福岡県へと向かう。

長崎県・稲佐山展望台

長崎新幹線が通る予定の道を走り抜け、福岡県の博多を越え小倉へ。
二度目の関門海峡を越え、再び山口県へ。ここからは日本海側を北海道へ向けて漕ぎ続ける。
島根県に入り、順調に日本海沿いを漕ぎ続けていける...... と思われたが、ここでアクシデントが。
突然自転車が壊れてしまった。
少し先の出雲まで修理する場所がなく、壊れたまま走り続けることに。ようやくたどり着いた出雲では、コロナの影響で新しい部品を取り寄せるのに時間が掛かることがわかり、応急処置だけして走り続けることに。壊れた箇所が走っている最中ずっと気になるようになってしまった。

壊れた箇所を気にしつつ走り続け、鳥取県の魚見台、兵庫県の湯村温泉、京都府の天橋立などの観光地に立ち寄りながら漕ぎ続ける。福井県に入り、長さ1km続く断崖絶壁の東尋坊へ。

福井県・東尋坊

ここまで多くの場所に立ち寄っている彼だが、この旅の最中で、人造物より、自然物の方が好きだということに気づいたそうだ。人工的に作られたものは、すごいと思うが、似たり寄ったりである。自然は自然に生み出されたよさがあって好きだそうだ。また、海沿いを多く走っていたが、海より山の方が好きだということに気づいたそうだ。山の中でも、流れている川が一番好きだそうだ。

この先も海と山が近い場所を走りつつ、沖縄へ向かう船の中で出会った人の家の和菓子屋へ。創業120年の老舗和菓子屋の名物「川端御亭(かわばたおちん)」を食べたそうだ。とてもおいしかったそうだ。

石川県・げんば堂

桜を追い越し

石川県に入り、金沢市の中心部にある金沢城へ。ここではちょうど満開の桜を見ることができた。

石川県・金沢城

金沢の少し先、糸魚川の道の駅で食べた、鱈のあら汁がこの旅で食べた物の中で一番おいしかったそうだ。ここ糸魚川で桜前線を追い越してしまったようで、これ以降は桜を見ることができなかったそうだ。

桜を追い越し、日本一長い信濃川を渡り、新潟県を越え、秋田県へ。風力発電の風車が立ち並ぶ道を通る。

秋田県・秋田潟上ウィンドファーム発電所

本州最北端の青森県から船に乗り、津軽海峡を越え、夜景で有名な北海道の函館に上陸。

北海道・函館市
北海道・積丹半島

小樽や札幌などなど観光地が至る所にある北海道を走っていたが、ついに自転車が完全に壊れてしまい、走れなくなってしまった。
なんとか苫小牧へとたどり着き、再び船で青森県の八戸へ。自転車の修理のために新幹線に乗り、東京へ。無事に修理を終え、八戸へ戻り旅を再開。
岩手県を越え、宮城県の菜の花畑へ。一面菜の花のこの場所は、夏になるとひまわり畑へと変わるそうだ。

宮城県・ひまわりの丘

一気に南下し埼玉県へ。茨城県に50分だけ入り、千葉をかすめて東京都の八王子へ。
神奈川県へ行き小田原へ。そこで、沖縄で出会った日本一周中の人と再会した。
箱根の峠を越えて、山梨県へ。富士山に近いところを走っていたが、雲で被ってしまい富士山を全く見られなかったが、近くの芦ノ湖や山中湖は綺麗に見ることができた。

山梨県・山中湖

長野県へ入り、黒塗りの壁が映える松本城へ。

長野県・松本城

ラストスパート

木曽川沿いを走り、再び岐阜を通る。一度通った時は、冬本番の寒い季節だったが、再び通ると夏の暑さを感じられる季節になっていた。

長野県・寝覚の床

この長い日本一周で、彼は様々な人と出会った。
自転車で本州横断を1週間で達成した人、2月14日に大量のチョコレートをくれたおばあちゃんなど、いろんな人に声をかけてもらったり、彼自身が声をかけたりなど、一期一会の出会いが沢山あった。
同じ日本一周をしている人もいたが、なぜ日本一周をするのか、理由は人それぞれ。
この記事を見ている人にも、日本一周や、長い旅を計画している人がいるのかもしれない。その旅の目的はなんでもいい、結局は今を楽しむのが一番。焦らず、自分のペースで、楽しむ気持ちを忘れずに旅をするのがいい。そう彼は思ったそうだ。

旅を楽しむ気持ちを胸に抱きつつ、日本一周のスタートでもあり、ゴールの愛知県へとたどり着き、この旅は終わりを迎えた。

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