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中小企業支援の備忘録として①

これまでいくつかの取引先の品質問題であったり管理職教育などの支援  を行ってきましたが、参考として最近の事例を備忘録として残します。

工場の問題

品質問題が生産都度、度々発生している

会社概要

会社事業は大手メーカーから電装ユニットの実装組立を委託されている  中小企業グループ会社の幾つかある事業所の1工場である
仕事量は取引先の海外展開や事業縮小の影響で減少し現在に至る 
従業員もピーク時から減少し現在総勢40名弱
工場長以下課長2名、課長代理2名、主任2名、一般職の工場
 

製造部門実態

N製品を新規に生産するにあたり品質部長F氏が現場立合いを行った。
ある工程の作業者を見ると、いきなり作業を始めようとして質問、    その工具の設定はどうなっていますか?
作業者G「??」
F氏「設定値確認してください」
作業者G「350です」
F氏「作業手順書では320ですけど、読んでいないのですか?」
作業者G「読んでいません」
F氏「え?」

出荷検査工程では
F氏「出荷検査を実施してください」
作業者H「わかりました」
作業者Hが完成品を目視検査始める
F氏「何を検査しているのですか?」
作業者H「え?」
F氏「決められた検査項目は無いのですか?」
作業者H「特にありませんけど」
F氏「え?」  

F氏「Y課長、今回の新規生産準備はどのようにしていたのですか?」
Y課長「すいません。すいません。準備不足でした」
F氏「生産計画随分前から決まっていましたし、立合い日程も事前に
  決まっていましたよね?」
Y課長「すいません。」
F氏「工場長呼んでください」
F氏「X工場長、事前の準備はすることになっていましたよね?」
X工場長「準備不足ですいません」
F氏「・・・・」

工場長からの弁明

2週間後今回の問題点について、X工場長から回答がきた。
X工場長の回答してきた問題点
①品質管理課と兼務として生産技術課とを1名で切り盛りし          ておりますので、監視が行き届かない実態があります。

②工程内検査と出荷検査
 出荷検査においては、品質管理課からの委託により、製作           課内の検査員が実施しており、人員の都合もあり、工程内検査      と同一の検査員により検査実施となっている実態があります。

③プロバーの管理者を管理部門へ配置しているため、製造部門の      監督者、リーダクラスの経験や教育の不足が否定できず、工程管     理面や不具合に対する予防処置等において理解度や知識の不足を       感じております。

品質部長F氏は工場長の弁明に質問した

①品質管理課と生産技術課の兼務
 ・監視がいき届かないのはなぜか?
 ・担当者1人なのはなぜか?

②工程内検査と出荷検査
 ・工程内検査と同一検査員だと何故問題なのか?

③プロパーの管理者
 ・製造部門の監督者が何故教育不足なのか?

X工場長から質問に対する回答

①品質管理課と生産技術課の兼務
・監視がいき届かないのはなぜか?
Ans.生産技術課の業務を兼務しており、生産設備のデータ           作成や社内品質(特にSMT)の把握のため、外観検査機の運用      も行っています。そのため、製造現場で不良を出さないための      製造工程の管理(監視)、問題点の改善が計画出来ていない現状     があります。
・担当者1人なのはなぜか?
Ans.製品検査としては、現場の検査員で対応しているため、社内
管理、客先対応として1名で対応している流れでした。
但し、品質管理の現状、生産技術面の兼務の実態もあり、少々       長期的ですが、今年6月頃から、1名補充を検討しております。

②工程内検査と出荷検査
・工程内検査と同一検査員だと何故問題なのか?
Ans.工程内検査を実施し、最終的な出荷検査を実施する際、同一     人物が検査することで確認が甘くなるのではないか、との考えから、
問題としました。

③プロパーの管理者
・製造部門の監督者が何故教育不足なのか?
Ans.プロパー管理者から、現製造部門管理者への指導を期待しま    したが、取引先や受注量の増加により、管理部門の本業に負荷が     増え、製造部門に寄り添った指導が不足しています。

回答に対する品質部長F氏が再度質問

回答は今起きている現象を捉えているだけなので、問題の本質を     見ていくため更に質問を行った。

①品質管理課と生産技術課の兼務
・監視がいき届かないのはなぜか?
Ans.生産技術課の業務を兼務しており、生産設備のデータ作成や    社内品質の把握のため、外観検査機の運用も行っています。
そのため、製造現場で不良を出さないための製造工程の管理(監視)、
問題点の改善が計画出来ていない現状があります。
⇒質問はなぜ監視がいき届かないのかですが?
 (計画出来ないと監視は違いますよね?)

・担当者1人なのはなぜか?
Ans.製品検査としては、現場の検査員で対応しているため、      社内管理、客先対応として1名で対応している流れでした。
但し、品質管理の現状、生産技術面の兼務の実態もあり、        少々長期的ですが、今年6月頃から、1名補充を検討しております。
⇒質問は担当者1人の理由を聞いていますが?

②工程内検査と出荷検査
・工程内検査と同一検査員だと何故問題なのか?
Ans.工程内検査を実施し、最終的な出荷検査を実施する際、      同一人物が 検査することで確認が甘くなるのではないか、との     考えから、問題としました。
⇒確認が甘くなるとはどういうことか?

③プロパーの管理者
・製造部門の監督者が何故教育不足なのか?
Ans.プロパー管理者から、現製造部門管理者への指導を期待しま    したが、取引先や受注量の増加により、管理部門の本業に負荷が増   え、製造部門に寄り添った指導が不足しています。
⇒教育不足はいつ気づいたのか?

現状の状態(実態)を回答をしてきた。
そうしている(そうした)理由を聞いているのですが、、。

ここまでの問題点

・X工場長の指示に具体的な指示とその回答に対する指導が無い
例えば、品質目標を設定させる場合、品質データ集計結果を分析し
そこから何が見えるのか(言えるのか)?
だから、何を目標とすべきなのか?
こういった一連の指導を常日頃していればメンバースキルが必然的に    向上するものだが。
⇒どの様なスキルを狙っていたか?
・なぜ、業務の連携ができないのか?
 X工場長は、役割分担が連携を踏まえた業務を考慮していない
 業務フローに責任と権限を含めなければならない事を忘れている
 ⇒何を狙った役割分担にしたのか?
・なぜ、この組織編成なのか?
 X工場長は、単純に製品種類別にグループ分けしただけだった
 同様な作業、工程、設備使用を考慮すべきことをしていない
 ⇒何を狙った組織にしたのか?
・なぜ、この業務分担なのか?
 X工場長は、メンバースキルを考慮せず製品種類別業務内容を決めた
 メンバースキルをどのような人材にするかを考えていない
 ⇒何を狙った業務分担なのか?

今後の対応協議

このままでは、取引停止をせざるを得ないとし、工場長と話し合った。
工場長に『品質問題が度々発生しているので従業員教育をしてほしい』  と相談された。
⇒支援を求められる

品質部長F氏は支援計画を作成しX工場長へ実行に移すために訪問した。
実行計画は以下で説明を行った
・中間管理者教育(製造プロセス、文書作成イロハ)
・要素作業教育(組立作業の基礎)
・組織編成見直し(業務の最適化)
・業務文書見直し(組織に合わせた業務フロー)

X工場長への宿題は
・どのような会社になりたいか(何を目指しているか)
・現在の問題点
・要望事項
・現状の組織図と業務内容

    
X工場長のマネジメント能力が工場の組織能力を支配することになる
    
これまでの問題点を踏まえ、そもそもどのような工場にしたいのか?
   
これが決まったら
・役職者役割
・組織図
・業務役割(組織、階層、個人)
・業務フロー
・方針、目標
・教育
・文化、価値観(何があっても曲げないもの)
     
個別に決めるのではなく必ず関連性があるので、全体を俯瞰して
それを実現できる施策を実行し問題あれば軌道修正することになる


中小企業支援の備忘録として②

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