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風営法とAV新法について考えます。X→https://twitter.com/nsbe…

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風営法とAV新法について考えます。X→https://twitter.com/nsbengo

最近の記事

AV新法概論

AV新法の全体像を解説します。 アダルトビデオ・個人撮影AV動画・同人AVの制作者向けです。 AV新法の趣旨 AV新法の趣旨は「性に関する自己決定権を守ること」です。 この趣旨を実現するために、AV新法では、 ・説明書面を渡し、一般的情報を提供する ・出演契約書を渡し、制作物ごとの情報を提供する ・公表後の影響を踏まえて再度判断できるように、公表後も一定期間解除可能とする ことが定められています。 AV新法の構成 AV新法を所管するのは内閣府男女共同参画局です。 内

    • 【AV新法】説明書面と出演契約書の渡し方

      AV新法の趣旨は「性に関する自己決定権を守ること」です。 この趣旨を踏まえ、AV新法では、出演者に対し、説明書面と出演契約書を渡すことになっています。 説明書面の渡し方 説明書面のひな形については、note記事「【AV新法】説明書面の書式」をご参照ください。 出演者に対し、説明書面のPDFデータを送信して渡します。 送信する時期は、出演者との間で出演契約を締結しようとするときにおいて、「あらかじめ」です(AV新法5条1項柱書)。 出演契約書の渡し方 出演契約書のひな

      • AV新法における「性行為」とは

        問題の所在 AV新法は、性行為映像制作物(AV新法2条2項)の制作公表を対象とする法律です。 そこで「性行為」の定義が問題になります。 「性行為」にあたらなければ、その映像の制作公表には、AV新法の規制が及ばないことになるからです。 「性行為」の定義 AV新法における性行為とは、「性交若しくは性交類似行為又は他人が人の露出された性器等(性器又は肛門をいう。以下この項において同じ。)を触る行為若しくは人が自己若しくは他人の露出された性器等を触る行為」です(AV新法2条1項

        • 【AV新法】出演契約書の書式

          AV新法において、出演者に対し交付または提供する出演契約書のひな形です。 アダルトビデオ・個人撮影AV動画・同人AVを制作公表する際に使用します。 使い方 「内容」欄を埋めます。 「制作公表者記名または署名」欄を埋めます。記名とはテキスト入力すること、署名とは氏名を手書きすることです。 出演者に署名してもらってください。 出来上がった出演契約書を出演者に交付または提供します。交付とは紙を渡すこと、提供とはデータで送付することです。 ポイント1 iPadにダウンロ

        マガジン

        • AV新法
          8本

        記事

          【AV新法】説明書面の書式

          AV新法において、出演者に対し交付または提供する説明書面のひな形です。 アダルトビデオ・個人撮影AV動画・同人AVを制作公表する際に使用します。 紙を交付するよりも、LINEやメールにPDFを添付して提供した方が、説明書面を渡したことを証拠化しやすいでしょう。 説明書面に加えて、作品ごとに出演契約書も交付または提供してください。 (第1版 2024年2月4日作成) (第2版 2024年3月10日改訂) (第3版 2024年5月3日改訂)

          【AV新法】説明書面の書式

          AV新法における出演契約の解除

          AV新法における出演契約の解除について考えます。 ①任意解除 AV新法の規制を守ってアダルトビデオが制作された場合、出演者は、公表から1年間(2024年6月22日までに締結された契約については2年。AV新法附則3条1項)に限り、任意に、出演契約を解除できます(AV新法13条1項)。 ②「1ヶ月4ヶ月ルール」違反による解除 AV新法には「契約から撮影まで1ヶ月、撮影から公表(販売)まで4ヶ月」という規制(AV新法7条1項、9条。以下「1ヶ月4ヶ月ルール」とします。)があ

          AV新法における出演契約の解除

          AV新法の「1ヶ月4ヶ月ルール」と刑事罰

          「1ヶ月4ヶ月ルール」違反は刑事罰に問えないように見える AV新法については、当初「契約から撮影まで1ヶ月、撮影から公表(販売)まで4ヶ月」という規制(AV新法7条1項、9条。以下「1ヶ月4ヶ月ルール」とします。)がメインと考えられていました。 しかし実は「1ヶ月4ヶ月ルール」より、①契約書と説明書面を交付すること(AV新法6条、5条1項)、および②契約書と説明書面の内容に虚偽がないこと(AV新法21条2号、1号)の2点の方が重要なようです。 なぜなら上記①②が守られて

          AV新法の「1ヶ月4ヶ月ルール」と刑事罰

          公務員が風俗で働くときに注意すべき2つのこと

          注意点その1 承認または許可一般職の公務員(以下、単に「公務員」とします。)が風俗で働くときには、承認または許可を得なければなりません。 例えば、国家公務員法には以下の規定があります。 風俗店との契約が業務委託であるなら国家公務員法103条が適用されるので人事院の承認が必要となり、風俗店との契約が雇用であるなら国家公務員法104条が適用されるので内閣総理大臣およびその職員の所轄庁の長の許可が必要です。 なお非常勤職員については、国家公務員法104条の規定は適用されないの

          公務員が風俗で働くときに注意すべき2つのこと

          デリヘル業者がレンタルルームを使用した営業を行い風営法違反とされた裁判例

          デリヘル(無店舗型性風俗特殊営業)の経営者が、隣接するレンタルルームの個室を使用して性的サービスを提供する営業を行い、風営法違反の禁止区域営業で有罪となった裁判例があります。 裁判例によると、判断基準は以下のとおりです。 デリヘル店とレンタルルームの位置関係・構造 出入口付近の外観 広告の態様 個室の利用料金についての取り決め・優遇措置 キャストの待機および客の受付・案内の仕組み レンタルルームの利用状況など この中で、特に4.は要注意です。 個室の利用料金は

          デリヘル業者がレンタルルームを使用した営業を行い風営法違反とされた裁判例

          メンズエステと店舗型ファッションヘルスの違いを判断した裁判例は見当たらない

          メンズエステ メンズエステは、通常のマッサージを行う店です。 店舗型ファッションヘルス 店舗型ファッションヘルスは、個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業です。風営法上の店舗型性風俗特殊営業にあたります。 風営法2条6項2号の文言中、「性的好奇心に応じて」とは、警察庁の通達によると「当該客の性的な感情に応えて」という趣旨です。 警察庁の通達は「性的好奇心に応じて」について、これ以上のことは述べていません。 争いに

          メンズエステと店舗型ファッションヘルスの違いを判断した裁判例は見当たらない

          メンエス店の摘発理由は無届営業ではなくなぜ禁止区域営業なのか

          無届営業 メンズエステ店が個室を設けて性的サービスを行う場合、店舗型性風俗特殊営業に該当するので、風営法上の届出をしなければなりません。 無届で営業をすると、刑事罰の罰則があります。 禁止区域営業 メンズエステ店が個室を設けて性的サービスを行うと店舗型性風俗特殊営業に該当するところ、店舗型性風俗特殊営業は禁止区域で営業することはできません。 禁止区域営業をすると、刑事罰の罰則があります。 無届営業の法定刑より禁止区域営業の法定刑の方が重い メンズエステ店が個室を

          メンエス店の摘発理由は無届営業ではなくなぜ禁止区域営業なのか

          AV出演契約書に記載する事項

          アダルトビデオの出演契約書に記載する事項について、AV新法4条3項が定めています。 条文にしたがい、以下の各記載が必要です。 ①契約当事者 制作公表者および出演者の氏名または名称その他制作公表者および出演者を特定するために必要な事項(AV新法4条3項柱書前段) 「制作公表者」とは、性行為映像制作物の制作公表を行う者として、出演者との間で出演契約を締結し、または締結しようとする者をいいます(AV新法2条7項)。 AV新法の内閣府令4条1項3号との対比から、出演契約書の

          AV出演契約書に記載する事項

          ソープランド開業資金を融資した信金の支店長を売春防止法違反とした裁判例

          「場所の提供」と「資金等の提供」の禁止 売春防止法11条2項は「売春を行う場所を提供すること」を業とすることを禁止しています。 売春防止法13条1項は、情を知って、売春防止法11条2項の業に要する資金を提供することを禁止しています。 ソープランド開業資金1000万円の貸付 被告人は、信用金庫の神戸駅前支店の支店長でした。 被告人は、昭和62年3月25日、神戸市福原地区の個室付浴場業者に対し、ソープランドの開業資金として1000万円を貸し付けました。 「情を知って」

          ソープランド開業資金を融資した信金の支店長を売春防止法違反とした裁判例

          デリヘルの利用が離婚事由としての不貞行為に当たらないとされた裁判例

          民法上、不貞行為は離婚事由です。 デリヘルを利用して性的サービスを受けたことが、離婚事由としての不貞行為に当たるか否かが問題になります。 この点について判断を示したのが、横浜家庭裁判所平成31年3月27日判決(事件番号 平30(家ホ)6号)です。 認定事実 判決では、夫である被告について、以下の事実が認定されています。 それぞれ異なるデリヘル業者に計8回電話をかけた デリヘルの性的サービスを1回受けた 夫は発覚当初から妻に謝罪した 夫は今後利用しない旨を約束し

          デリヘルの利用が離婚事由としての不貞行為に当たらないとされた裁判例

          ピンクサロンで客の男が公然わいせつで逮捕

          ピンクサロンで客の男が公然わいせつ容疑で逮捕されました。 公然わいせつは社会的法益に対する罪公然わいせつ罪を規定している条文は刑法174条です。 公然わいせつ罪は健全な性秩序や性的風俗を保護法益とするものであり、社会的法益に対する罪です。 本件のように、ピンクサロンで公然とわいせつな行為をした場合、店側だけでなく客も逮捕されることがあります。 売春防止法との対比売春防止法では売春をすることが禁止されており、売春の相手方となることも禁止されています。 売春防止法3条に

          ピンクサロンで客の男が公然わいせつで逮捕

          警察庁がAV問題の通達でSNSを利用したスカウト行為の検挙に言及

          警察庁は令和4年6月22日付で通達「アダルトビデオ出演被害問題に係る対策の推進について」(以下「新通達」とします。)を発表しました。 新通達は、令和4年3月24日付の通達「アダルトビデオ出演強要問題に係る対策の推進について」(以下「旧通達」とします。「出演被害問題」と「出演強要問題」とで通達名に違いがあります。)をわずか3ヶ月足らずで改訂するものです。 AV新法、すなわち、「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止

          警察庁がAV問題の通達でSNSを利用したスカウト行為の検挙に言及