思い出の中に、しっかりと残るひと

私はいろいろなことがありましたが、どれもよき出会いによって対応してきたことが多かったように思います。そのような中で生涯忘れることができない出会いがありました。その方は弁護士でしたが、私が極めてむずかしい問題に直面したときに出会いました。在籍していた企業の顧問弁護士の紹介でした。顧問弁護士の方もすばらしい方で、今でもお付き合いが続いています。

ある企業に在籍していたときに労働基準監督官の臨検を受け、労働基準監督署から是正勧告をもらったことから、弁護士とのお付き合いがはじまりました。
私は、労働基準監督署からもらった是正勧告に納得することができず、経営者と相談したうえで、弁護士と対応していくことになりました。
結論からすれば、是正勧告を取る下げてもらうことができました。経営者と私が進めていた社内改革からすれば、是正勧告に異議を唱えることが妥当だと判断し、それらを明らかにする資料等を集め、その資料をベースに弁護士に専門的な観点から労働基準監督署（労働基準監督官）と向き合ってもらうことでうまくいったケースでした。
中小企業がまねをしても簡単にこのような結果にはなりません。理由は、経営者の社内改革における覚悟と実行力が違うからです。

その企業を退職してからも長くお付き合いが続きました。ほとんどは労務問題、なかでも労働基準監督署関係の相談とその対応でした。そのすべてで問題を解決することができました。すでに弁護士と信頼関係ができていましたから、私が依頼する内容を信頼してくれており、弁護士と話をするだけで方向性を決めることができます。また、労働分野における専門性が高く評価されている方でしたから、私が依頼する内容に関しては、やれるぞ、といつも気持ちよく返事をしてくれました。
弁護士事務所を突然訪問すると、いつも本を書くために勉強されていましたが、訪問すれば、「おーぃ、どうした」と気軽に声をかけてくれて相談に乗ってもらっていました。
帰り際には、私が相談した内容に関連する自らの著作をそっと手渡してくれるようなやさしい方でした。

一昨年１月に突然亡くなられました。
この年、事務所を訪問してみようか、と思っていた矢先でしたら、驚きと同時ショックでした。近頃、それほどお会いする機会がなかっただけに残念としかいえません。ざっくばらんに相談ができ、気さくに労働問題について話ができる方がいてくれるだけで、お会いしていなくとも、なにかあればすぐに相談できるという安心感が私を支えてくれていました。
いわば、私の精神的な支柱になってくれていた方でしょうか。
生涯忘れることができない弁護士であり、今もしっかりと心のなかにあるひとです。その方との数々の仕事の思いでを大切にしながら生きていきたいと思っています。私の人生を豊かにしていただいたひとりです。
そして私の楽しい人生は続きます。