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27歳の大工さんが作ってくれた手すりに、心と体を支えてもらっています

先日、わが家では階段の手すりの取り付けをおこないました。急ぐこともないので一か月ほど待っていたでしょうか、取り付け作業に来てくれた方は、若い方と年配の方でした。私が、「若いですね」と話をすると、この若者は、「ハイ、27歳です」と、さわやかにこたえてくれました。
普段あまりみなれない光景でしょうか、めずらしいくらいに、すがすがしさを感じる若者でした。大工さんで若い人はめずらしいね、といえば、父といっしょにやっています、と返事がありました。

大工の息子だった私には、ぐさっとくる言葉でした。まさに不肖の息子だったからです。私は、元来、不器用なので大工さんにはむかないタイプです。しかも頭もよくないですから、家を建てれば危ない建築物になったでしょう。
幼いときから、不器用な私は、大工の仕事に嫌悪感をもち、逃げるように家をでて、サラリーマン生活にはいりました。私がもう少し器用で大工仕事ができるようだったら、父と同じように大工になることができたでしょう。人間の能力は、だいたい一代限りなのでしょうか。私にはとても荷が重かったです。

その意味では、息子たちは私に似ていませんし、むしろ私の父のように手先が器用で、模型などを制作することが上手でした。だからでしょうか、二人の息子たちは工学部へ進み、現在ではメーカーの技術部門で働いています。息子たちであれば、父の職業である「大工」をつげたのではないか、と思ったりします。

27歳の大工さんのように、息子であっても仕事を引き続くことができるケースもありますが、私のようにできないこともあります。
お二人のように大工仕事ができ、父子で仲良く仕事がやれるようであれば、引き継げばよいと、私は思っています。27歳の大工さんをみていて、ほほえましくもありました。
わが家の手すり工事をみながら、今の時代でも、このような関係ができているお二人の姿をみていて、うらやましさと、父と自分の関係における葛藤を思い出す一日でした。

手すりの取り付け位置など、細かく確認してくれて、本当にやさしさを感じる、よい手すりをつけてもらいました。手すりに支えてもらうたびに、27歳の大工さんのすがすがしい姿とやさしさに触れることができます。
わずかな手すり工事であっても、人生の機微を知り、27歳の大工さんが、これから先も元気によい仕事をされることを願わずにはおれませんでした。私が死ぬそのときまで、忘れない思い出をつくってもらったようです。
手すりのぬくもりは、27歳の大工さんであり、いつも体とともに心をささえてもらっています。
心穏やかに、楽しい日々が続いていきます。



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