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#49 広島市民、“アビが鳴く”を考える

ポルノグラフィティが2023年にリリースした“アビが鳴く”という曲について考えてみる。
この曲はG7広島サミット応援ソングで、まさに“広島と平和のために書き下ろされた”曲。

大好きなポルノグラフィティが私の好きな街“広島”のために作った曲、
それだけで涙腺が緩む。

特設サイトはこちら💁🏻‍♀️↓

この曲についてメンバーのコメント↓

大切な故郷広島が、世界にとっても大切な場所になることを願い歌った曲です。
岡野 昭仁

平和。歌にするには大きすぎるテーマですが、自分の言葉にしてみたらこうなりました。
新藤 晴一

『アビが鳴く』特設サイト
メンバーコメントより引用

はじめに

79年前、世界で初めて原子爆弾が投下された広島。
75年は草木も生えぬなんて言われたが、今ではすっかり緑の綺麗な美しい街になった。

私はそんな広島市で、ありがたいことに平和記念公園内の施設で働いている。世界中から多くの人が訪れるこの場所で仕事ができることを心から誇りに思っている。

まさに歌詞にも出てくる“あの夏を語る者”の証言を継承していく仕事だ。初めて曲を聴いた時、あまりにも身近に感じて思わず鳥肌がたった。(これについては後ほど)

そんな一広島市民であり、一平和事業に携わる私が個人的に「アビが鳴く」、その歌詞を少し考えてみる。(あまり期待はしないで欲しい。ふーん、くらいで笑)

アビは、国の天然記念物に指定されている広島の県鳥なんだとか。正直のところ、この曲でアビを初めて知ったのは内緒にしておいてほしい。

別名・平家鳥と呼ばれ,その鳴き声は壇ノ浦の戦いで敗れた平家の滅亡を悲しむ声とも言われている(らしい。←日本史は中学卒業とともにさよならした民のネット知識)

なるほど、だから曲に登場するのは原爆ドームや慰霊碑ではなく厳島神社だったのか。
さすが詩人晴一、点と点が線になり動揺するオタクがここに一人。

この曲は1年前のロッキンでのポルノが披露した。直接聴くことはできなかったが、あの日、あの時間だけは来場者も原爆犠牲者を追悼し、平和を祈ったことだろう。

イントロ

小さな船で波を切り裂き 朱い大鳥居をくぐれば
あらわれる水上の神殿 見上げて私は祈るよ

『アビが鳴く』より
以下引用も同様

これは言わずもがな、廿日市宮島にある厳島神社と大鳥居のことである。
(イントロのフレーズで号泣民)

広島県民なら一度は行ったことのある宮島
春は桜が咲き誇り秋には美しい紅葉が見られる
そして食べ物も美味しい(ただし観光地価格)

話が逸れたが、ここの冒頭で固有名詞は出さずとも、誰もが“厳島神社と大鳥居”、そして“ヒロシマ”を連想するだろう。
聴く者は一気に曲の世界観に包まれる。

しかし思い浮かぶのは、普段の活気あふれる賑やかな宮島ではない。
静かに海に浮かぶ大鳥居と厳島神社。

あの夏を語れる者も 一人二人と去って
アビの鳴く声だけが 千歳に響き渡る

県外の方に、少し広島についての話を
はじめにも少し触れたが、1945年、世界で初めての被爆地となった広島。
1945.8.6は絶対に忘れてはいけないし、我々市民はこの日は毎年必ず登校日で、平和教育を受けて育った。
8.6が近づくとTVも原爆関連の特集が増える。

来年は被爆80周年を迎える広島。
被爆者の平均年齢も高くなり、当時の証言ができる人が減っていく。

そして私の携わっている事業は“被爆体験の伝承・継承”なのでまさしくこの歌詞とリンクする。歌詞を見た時ブワっと鳥肌がたった。

広島はたった一発の原子爆弾で全てを失った。
家族友達家全部全部
その年に亡くなられた方はおよそ14万人と言われている。

サビ

世界がどんなに変わっても平和を祈る想いだけは
百年先に生まれる子らと同じでありますように

メンバーもおそらくこのフレーズが1番伝えたいことだと思う。
詩人晴一にしては歌詞がストレートだなんて思ったりもするが、テーマがテーマだけにここは伝えたいことをストレートに述べているのかも。

被爆者や戦争を経験された方の数は減っていったとしても
(=世界がどんなに変わっても)
平和を大切にする心を持ち続けてほしい、その一心。

もう何十年も経ったから終わり、ではない。
今も後遺症で苦しんでいる人、放射線の影響でいつ発病するか分からない恐怖と闘っている人…

慰霊碑には
「安らかに眠ってください
過ちは繰り返しませぬから」

と被爆者の訴えが刻まれている

またこの夏、この中に収められいる死没者名簿に名前が加わった。
追加奉納数 5,079名 合計 344,306名
(広島市ホームページより)

我々残された者にできることは、この実相、歴史、平和への思いを後世に繋いでいくことだと思う。

綺麗事が綺麗事となぜか揶揄される現実
おとぎの国に龍宮を見たいわけではなくって
万の言葉の距離を超えて行け この地上を語る綺麗事

綺麗事は“平和”のことだろうか
“平和が大事”なんて綺麗事がなぜか揶揄される
一番大事なことなはずなのに…

込められた想いは

昭仁さんは言葉一つ一つをはっきりと歌うので、この曲に込められた想いが聴く人にダイレクトに伝わるはず。私もその一人。

ただ静かに黙っているだけでは何も変わらない。
自分で動かなければ変わらない。

(なぜかここでエドワード・エルリックの1話目のあの言葉が頭に浮ぶ)

立って歩け、前へ進め
あんたには立派な足があるじゃないか

『鋼の錬金術師』より

話はまた逸れてしまったが、
本曲のフレーズにも

荒れ狂う嵐の夜も水を掻く艪(ろ)を離すなと
アビの鳴く声だけが私を励ました

荒れ狂った海でも、艪を話してはいけない、掻いて前へ進め、自分の力で前へ進め、
そう言われている気がする。
荒れた夜の海を艪(オールみたいなもの?)で進むなんて不可能に近い。それだけ“完全な平和”の実現も難しいってことかしら。

神の島は黙ったまま 私も迎えてくれるの

神が(平和を)叶えてくれるのではないのが肝。
自分で進んでいかなければならない。

過去にあったこの事実が“昔の出来事”で済まされ、いつかは風化されてしまうのではないか。
忘れ去られた歴史とならないように、伝え続けなければいけない。

ポルノグラフィティが今回この曲を生み出してくれたことを心から感謝する。

おわりに

毎日なんとなく過ごしていると、つい“平和”が当たり前になってしまう。
そしてこの曲を聴くと背筋が伸びて気が引き締まる。

テーマが難しいので私もこの記事を書きながら何が書きたいのかわからなくなってしまう。

ただ、“ポルノが平和について歌った曲”で済ませるには少々勿体無い気がした。
背景を知っておくと、「ほぉ、このフレーズはこういう意味が…」なんて思えるかなと。

明日もあなたとあなたの大切な人たちにとって
素敵な1日になりますように🌙

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