ねこのひげ

 大好きなテーマパークに遊びに来た。入園チケットを買うための窓口に並んで、そわそわとしていた。

 作務衣を身に着けた数人のスタッフが、何やら大きな荷物を運んでいるのが目に入る。それをぼんやりと見ているうちに自分の番になったようだ。

 おとな用の入園チケットが一枚、トレーの上に置かれる。

 期間限定のイベントとして、テーマパークのどこかに、ネコの髭を隠したらしい。それを見つけるとなにかいいものが貰えると説明を受けた。

 ネコの髭は小さな長方形のケースに入れられている。なんとしても見つけたい。そんな気持ちになった。

 遊ぶことも忘れて、ネコの髭探しに没頭した。思いつく限りの場所を探したけれど、それは一向に見つからない。

 だんだんむしゃくしゃとして、ふと気づいたとき、車の後部座席に座っていた。時刻は5時23分だった。

 座席の間から身を乗り出して、運転手に話しかける。

「あの、これって夢ですか?」

「そうだよ、これは夢」

 そっか、夢なんだ。

 車を降りて、塀の上を歩いた。ネコの髭のことはすっかり忘れていた。


 

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