白いプール

 三月のとある高校。生徒会のメンバーで集まって、次年度の準備をしていた。天気のいい日だった。

 次の学年でも使える机と椅子を残して、他を廃棄するという作業だった。寄せ書きのされた出席簿、手作りの消しゴム判子。机でも椅子でもないものを次々に棄てていく。次にくる生徒には関係のないものだから。

 粗方片付けが終わって、整頓のために机を持ち上げた。中から何かが滑り落ちて、床にぶつかりチャリンと音を立てる。それは古びた鍵だった。

「それって」

「白いプールの鍵じゃないですか」

 私には『白いプール』が何なのかはわからなかったけれど、とても珍しいものだということはわかった。それから、何故か白いプールに行くことになってしまった。

 一階の保健室の隣に、鍵穴だけがあった。鍵を差し込むといつの間にか目の前に引き戸があって、開くことができた。

 足を踏み入れる。いつのまにか私はひとりぼっちだった。溺れたときのように音が遠くなって、ふやけた白い人影が周りを漂っている。辺りは真っ白で、何となくキラキラとしていて、とてもきれいなのに、無性に不安になって息を止める。

 遠い笑い声。反響する残響。

 腑に落ちないまま目が覚める。

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