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被災地の生活を支える

Reraの誕生

2011年3月より、札幌市のNPO法人ホップ障害者地域生活支援センター、社会福祉法人札幌協働福祉会を中心に、全国の多くの支援団体と共に宮城県石巻市で支援活動を始めました。当初は泥出しや物資整理等、様々な支援活動を行ってきましたが、4月頃より移動支援を専門とした移送チーム『災害移動支援ボランティアRera』としての活動をスタートさせました。
石巻地区は宮城県でも特に被害が大きく、水没や流失などで県全体の約半数、6万台もの車が被害を受けました。街中の道は流された車や船などが積み重なり、ヘドロまみれの道を多くの人が歩いて移動していました。私たちは、札幌市と福井県からの支援で届いた福祉車輌を使用して、障害者や高齢者のほかにも移動手段を失った全ての住民の方の送迎を行っていました。

避難所から病院へ、お風呂へ、仮設住宅へ…

避難所や被災した自宅の2階などから病院への送迎ニーズがとても多くありました。また、初めの頃に多かったのは、自衛隊や民間ボランティアによる仮設のお風呂への送迎。コインランドリーへの送迎もずいぶんありました。市街地域がほぼ全域水没した石巻は、洗濯機や風呂のボイラーが壊れてしまった住宅ばかりでした。また、身体が悪いため、自分だけでは仮設風呂に入ることができず、2ヶ月、3ヶ月と一度も入浴できないまま避難所で寝ていた方などの入浴介助付き送迎なども行ってきました。
夏には、市内の各所に「仮埋葬」されていた方々の火葬が始まり、火葬場や葬儀場までの送迎依頼が来るようになりました。そのほか、避難所から被災した自宅に通って少しずつ片付ける方の送迎や、市役所への手続き、仮設住宅への引っ越し、引っ越し後の買い物送迎など、被災された方のフェーズの変化に合わせて様々な送迎を行ってきました。

見えてきた地域の課題

“もともとの移動困難者”

被災した移動困難な方の送迎をしていると、地域が“もともと”持っていた問題点が浮かび上がってきます。この地域は、震災前から自家用車頼みの「マイカー社会」で、公共交通機関がじゅうぶんに活かせていませんでした。
震災で車を失い、「もう年齢的にも厳しいから」と免許を返納した方や、仮設住宅が狭いため家族がバラバラに離れて入居し、子供に送ってもらうことができなくなった方などのほか、「震災前から移動に困っていた」お年寄りや障害者の方々もいるのです。

復興をすすめるのは「民間の力」

石巻市は被災された方がとても多くエリアも広いため、中心部については住んでいた地域ごとではなく「抽選」で仮設住宅が決まりました。そのため、浜から遠く離れた内陸の仮設住宅や数千人が暮らすような巨大仮設団地に孤立状態で入居し、今までは顔なじみの「ご近所さん」で助け合っていたのが難しくなった人も出てきました。バスなどがほとんど通らない仮設住宅もたくさんあります。そんな方々をきめ細かくすくい上げていくのは「民間の力」しかないというのが現実です。

地域で、地域を支える

Reraの地元スタッフ

初めの1年間は、北海道や全国各地から集まったボランティアが活動メンバーでした。その後、少しずつ少しずつ地域住民の参加が増え、それが中心メンバーとなり、今はスタッフのほとんどが地元の人です。自らも被災したり震災で職を失ったりしながら、同じ立場の住民の方々を「放っておけない」と活動を続けています。

移動問題を皆で考える場

2012年度は、石巻市や市社協、被災地支援団体や障害者支援団体、タクシー協会、仮設住宅自治連合会等で集まり、『石巻地区災害移動支援連絡会』を開いてきました。移動の問題は、私たちだけで取り組むものではありません。民間も行政も一緒に問題意識を共有して取り組みたい、というのが連絡会の目的でした。
連絡会の連携を活かし、今後も皆で移動問題を考えていこうという点で合意をしています。

私達が目指す未来〜誰もが必要な外出をあきらめずに暮らすことの出来る社会を築く〜

被災地は、“未来の早送り”

被災をきっかけとして移動困難な方が増え、独居や夫婦暮らしの高齢者の増加や公的支援の立ち遅れなど、もともと持っていた問題が“悪化”した形で明るみに出てきました。
専門家はよく、「被災地の問題は、これから超・高齢化を迎える日本の問題を10年後に早送りしたようなもの」だと指摘します。被災地特有の問題でありながら、日本中に共通する問題ともつながっているのです。

Reraとしてできること

“足”のない人を送迎することは、今現在困っている方々を直接手助けする大切な行動です。でも、送迎するだけでは、困っている方々はいつまでも困っているままです。本当は、ボランティア送迎だけを頼りにするのではなく、自分たち、あるいは地域のみんなで支え合う仕組みを強めていくことが大切です。
バスなどを利用しやすくするための「交通案内」を作り自分の力で行きたいところに行けるようにする、カーシェアリング車輌を使って仮設団地での助け合いを後押しするなど、他の団体などと連携を取りながら、直接の送迎だけでないさまざまな試みを行っていく計画です。

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