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塀の中のLGBTQ-受刑者からの手紙

NPO法人マザーハウスは、受刑者・出所者の社会復帰支援をする団体です。

今春、とある受刑者から私たち宛にお手紙をいただきました。その方は刑務所で自傷行為をし、懲罰を受けていました。

お手紙を読んで、代表の五十嵐がその方に面会に行き、お話をいたしました。五十嵐も元受刑者です。「それも問題児で刑務官に逆らってばかりいました」と五十嵐は話します。「でも正直に生きたいと思い、キリストを信じ、出所後は受刑経験をカミングアウトして社会の中で生きています」と。

五十嵐はその方に次のようにお伝えしました。

自分を傷つけるのは止めて欲しいです。どんなに辛くても自分を大切にして歩んでください。そしていつでも助けてと叫んでください。私はその叫び声を聞きます。そして私の信じるキリストに祈ります」

その方は号泣していたそうです。お辛いことでしょう。でも生きていてくれてありがとうございます。

その方は私たちに送ってくださった手紙を公表したいとおっしゃったので、ここに掲載いたします。またこの手紙はNPO法人マザーハウス会報「たより」2023年4月号にも掲載しています。

いつもたよりを楽しく読んでいます。全国にいる同囚の方達の言葉や絵に励まされ、社会の一般の方達や理事長の言葉で社会でこれから生活していく厳しさを学び、育児日記等で子供の笑顔を見て心が和み、そしてマザーハウスに関わっている方達の見えない所での支えで私はこうして毎月たよりを見れているのだと思うと感謝の気持ちで一杯です。

私は今までは見ている側の人間でしたが、どうしても皆さんに知って頂きたい事があり、見ている側の人間ではなく発信する側の人間になろうと思い筆を執らせて貰いました。

突然ですが、皆さんはLGBTQという言葉を聞いた事はありますか?LGBTQとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・クエスチョンの頭文字を取った言葉で、性的少数マイノリティーとも呼ばれています。

私は某女子刑務所に収容されている懲役受刑者ですが、LGBTQの内の1つであるT(トランスジェンダー)です。戸籍上女性で産まれてきましたが心が男性で、心と体が一致しない性同一性障害です。

小さい頃から「何故俺は女の子と言われるんだろう?」と悩みながら生活してきて、小学校に上がってからはその気持ちが強くなるばかりで次第に学校に通わなくなりました。

親からも「気持ちが悪い」と言われ虐待を受ける日々で、小学校4年生の頃から家出を繰り返し犯罪をして生活をし、施設を出たり入ったりの生活でした。しかし、どこに行っても収容されるのは女性の方で、そのたびに自分という存在が否定される気持ちになっていました。

私は未成年の時に2回少年院に入院していました。少年院では学校と同じように制服があり、いやでもスカートを着なければいけませんでしたが、2回目の入院中に法律が少しづつ変わり施設によってはLGBTQの人に対しての処遇がきちんと整備され、私もズボン着用が認められました。

しかし刑務所は違います。私は服役して1年目ですが、逮捕され刑務所に入所するまではホルモン注射という男性ホルモンを体内に取り入れて生活していました。私のような性同一性障害の人は男性ホルモンまたは女性ホルモン(体は男性で心が女性の場合)を取り入れなければ体は戸籍上の性別に戻っていくのです。

なので刑務所に入所してからずっと「ホルモン剤を投与させて欲しい」と訴え続けて来ましたが、刑務所側からは「女性だから必要ない」の一点張りでした。指名医制度を使用して自費でやると申出をしても「打たなくても死ぬような病気じゃない」と言われました。

私は毎月生理が来るたび「お前は女なんだ」と言われている感覚に陥り、とうとうタブーである自殺をしようとし発見され一命をとりとめてしまいました。

調査の先生は男性、女性1名づつの先生がつき調書をとられましたが、自殺をしようと思った理由を聞かれた際「生理が来て体が女になっていくのが苦痛だった。死ぬような病気じゃないと言われたが、体が女に戻っていく恐怖を毎月味わされて心が死んでいっても同じことが言えますか?」と答えたら、女性の先生からは「あなただけじゃなくここにいる女性みんな毎月生理でしんどい思いをしている」と言われ、男性の先生からは「そんな事で死にたいなんて逃げだ」と言われ、普通に心と体が一致して産まれて来た人達には心と体が一致しない人の気持ちは分からないし、理解しようと思う気持ちすらないのだなと改めて実感しました。

刑務官はよく「人の気持ちを考えろ」と言います。人の気持ちを考えず自分勝手な生活を送り、事件をおこし捕まり刑務所に入ったので先生達が言う事は正しいです。しかし「人の気持ちを考えろ」と言う官側は、私達受刑者の気持ちは考えなくてよいのかと疑問に思います。

たよりを読んでいると「これはあまりにも酷いな」と思う処遇の事が書かれており、刑務所は理不尽という所か人権というものは存在しないんだと感じています。

そして私の場合ですと、高齢者の方、持病や疾病の方等刑務所には沢山の人が居てその人それぞれに合った治療受けれますが、何故LGBTQだけ治療不可になるのかが私には理解しがたいです。

私が今回こうして気持ちを伝えようと思った理由は2つあります。

一つは、たよりを読まれている方の中にもしLGBTQで悩んでいる人が居たら、悩んでる人はここにも居て決して一人ではないと伝えたかったからです。偏見や差別的発言が未だ無くなる事はないけど、どこかの刑務所で同じように頑張ってるんだと思って欲しいからです。

そしてもう一つは、誰かが声を上げないと社会の人には何も知られないまま終わってしまうからです。すぐに今の現状が変わるとは思っていませんが、発信する事で閉鎖的な刑務所の事を外に出せるのかと私は思っています。

そして最後に私が伝えたい事は、このたよりを読んでいる方達が少しでもLGBTQという言葉を知って頂き、そしてLGBTQは変な人や気持ち悪い人ではなく一つの個性、また一人の人間として対等に付き合ってくれたら嬉しいです。

刑務所に居る間は私はずっと独居で辛いですが、全国にいる同囚の方達に負けないよう私も弱音を吐かず残刑頑張って勤めます。
皆さんも沢山辛い事あると思いますが挫けず頑張って下さい。

五十嵐は「活動を通して裏切られることの方が多い」と話します。「でも、回復して新しい道を歩もうとしている方の声に勇気をもらい、共に生きて行きたい」とも。

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