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受刑者も出所者も、塀の中に入ったことのない者と同じ人間―NPO法人マザーハウス会報「たより」2023年4月号Pick Up

NPO法人マザーハウスは、受刑者・出所者の社会復帰支援をする団体です。私たちは会報誌「たより」を毎月発行しています。

塀の中の受刑者から寄せられた手紙(便り)や絵、社会にいる私たちから送りたいメッセージなどを掲載しています。今回は2023年4月号の内容をご紹介します。

「塀の中のたより」~受刑者からの手紙~

受刑者から私たちのもとに届いた手紙のうち一部を抜粋してご紹介します。なお本人の許諾を得て掲載しています。

突然ですが、皆さんはLGBTQという言葉を聞いた事はありますか?LGBTQとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・クエスチョンの頭文字を取った言葉で、性的少数マイノリティーとも呼ばれています。

私は某女子刑務所に収容されている懲役受刑者ですが、LGBTQの内の1つであるT(トランスジェンダー)です。戸籍上女性で産まれてきましたが心が男性で、心と体が一致しない性同一性障害です。小さい頃から「何故俺は女の子と言われるんだろう?」と悩みながら生活してきて、小学校に上がってからはその気持ちが強くなるばかりで次第に学校に通わなくなりました。親からも「気持ちが悪い」と言われ虐待を受ける日々で、小学校4年生の頃から家出を繰り返し犯罪をして生活をし、施設を出たり入ったりの生活でした。しかし、どこに行っても収容されるのは女性の方で、そのたびに自分という存在が否定される気持ちになっていました

(中略)私は服役して1年目ですが、逮捕され刑務所に入所するまではホルモン注射という男性ホルモンを体内に取り入れて生活していました。私のような性同一性障害の人は男性ホルモンまたは女性ホルモン(体は男性で心が女性の場合)を取り入れなければ体は戸籍上の性別に戻っていくのです。なので刑務所に入所してからずっと「ホルモン剤を投与させて欲しい」と訴え続けて来ましたが、刑務所側からは「女性だから必要ない」の一点張りでした。指名医制度を使用して自費でやると申出をしても「打たなくても死ぬような病気じゃない」と言われました。

私は毎月生理が来るたび「お前は女なんだ」と言われている感覚に陥り、とうとうタブーである自殺をしようとし発見され一命をとりとめてしまいました。

(中略)刑務所は理不尽という所か人権というものは存在しないんだと感じています。(中略)私が今回こうして気持ちを伝えようと思った理由は2つあります。 

一つは、たよりを読まれている方の中にもしLGBTQで悩んでいる人が居たら、悩んでる人はここにも居て決して一人ではないと伝えたかったからです。偏見や差別的発言が未だ無くなる事はないけど、どこかの刑務所で同じように頑張ってるんだと思って欲しいからです。

そしてもう一つは、誰かが声を上げないと社会の人には何も知られないまま終わってしまうからです。すぐに今の現状が変わるとは思っていませんが、発信する事で閉鎖的な刑務所の事を外に出せるのかと私は思っています。(後略)

K刑 エンポリオ・イワンコフさん

文通を通して人のやさしさに触れることによって、自分自身がやってしまったことで被害者の方たちや周りの人たちに迷惑をかけたことを深く考えさせられるとともに、自分の周りにもまだ見捨てずに見てくれる人たちがいるんだと思い、次に自分が何をしなければならないのかを考えることができました。

O刑 Gさん

刑務所アート展情報~アンケート結果~

今年2月17日~3月5日に開催した刑務所アート展で、来場してくださった皆様にアンケートへのご協力をお願いしました。その回答の一部を紹介いたします。

Q1.本イベントをどこで知りましたか?

Q2.年齢を教えてください。

Q3.交流型公募展に応募された作品で気になった作品はありましたか? 塀の向こうに伝えたいメッセージなどもあればお書きください。

全ての作品がとても気になるものでした。きわめて細密であったり、繊細であったり、大変想像力を刺激されます。刑務所や死刑制度は、本来あるべき人と人とのコミュニケーションを断つ。その国のあり方は大きな疑問を抱かずにはいられません。

作品一つ一つに想いがあり、それが見る側に伝わっています。本気で人生やり直したい人を応援する社会になることを願います。

全体に色鮮やかで、一色と決められた絵にも鮮やかさを感じた。そこには、どんな心情が表されているのか、率直には感動できない戸惑いを感じた。それは自分の中にある「犯罪者=悪」という思いが消えないからだろう。

Q4.二人の死刑囚とその支援者や関係者の展示について、感想をお書きください。


なぜ色鉛筆が禁止になったのか、その背景をもう少し知りたいなと思いました。被害者と加害者の対話も簡単にことばではまとめられませんが、考えさせられました。命とは何か、ということなのだと思います。

ありきたりな言葉ではありますが、人の命を奪った者、家族を奪われたご遺族、命を奪われた者、命とは何か、罪とはなにか、償いとは何か考えました。答えは出ません。ただ涙が出ます。

どんな状況でも交流はできる。表現もできる。社会の中では交流や表現が容易だと思われがちだが実際それが保障されていなかったのではないか。それができる社会であれば、事件はなかったのかもしれない。

犯した罪は消えないと思いますが、ゆるすこと、ゆるされることはできるのだと感じました。

表現が関係を始めたり続けたりするきっかけになると改めて思いました。

Q5.刑務所や受刑者に対する見方や考え方は何か変わりましたか?

変わりました。獄中にいる人々も私たちも何らかわらない想いを抱いているのだということに改めて気づかせられました。

思っていた以上に普通の人たちなんだなという印象と、思っていた以上に刑務所の生活に理不尽な制約が多いんだなという印象を持つようになりました。

中の人でも本当に更生しようとしている人、ただ時間を過ごしている人で意味が違うと感じました。今の司法制度が適性なのか含めて考える必要があると思います。

最後に、「刑務所アート展」全体については、良い時間だった、もっと見たい、継続開催してほしい、たくさんの人に見てほしいなど、肯定的な感想をたくさんいただきました。ご来場いただいた皆様ありがとうございました。

編集後記

受刑者も出所者も、塀の中に入ったことのない者と同じ人間である。このことを今号から改めて深く感じさせられました。

塀の外で営まれる通常社会でLGBTQの方たちが抱えている困難さを私たちは近年広く知るようになりました。しかし、塀の中で同様に苦しむ人がいることを想像したことがある人がどの程度いるでしょうか。

同じLGBTQの受刑者のために声をあげたエンポリオ・イワンコフさんの勇気に深く敬意を表したいと思います。

人権とは何でしょうか。SDGsが叫ばれ、「誰一人取り残さない」というフレーズをよく耳にします。その中に受刑者や出所者は入っているでしょうか。

この活動にかかわらせていただいている私自身がいつも考えるきっかけをいただいています。

執筆:黒木萌

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ルワンダから仕入れたフェアトレードのコーヒーであり、生産地ルワンダの生活や産業の発展にも貢献しています。マリアコーヒーが使用しているルワンダコーヒーは、日本国内のコーヒーシェアにおいて大変貴重な希少種でありながらも、近年の世界中のカッピングコンテストでは上位入賞の常連です。

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