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気功生活 Vol.131

2022.7.7 発行

遊ぶ
我を忘れ、
我に返る。

立ち上がる禅密  天野泰司
翠と平和の総会 報告と感想
夏の養生
The Book of Life 6/216/23
暮らしと気功2  静かな一瞬  石田勝巳
つれづれ湯遊記8  あや
気功のひろば いよいよリニューアル
温風至・萬福寺で気功と普茶  吉田純子
講座案内


立ち上がる禅密


                          天野泰司

 「役立つ禅密」オンライン講座が始まりました。実際に役立つレペルまで基礎を練り上げていく全5回。現在約50名のみなさんと同じ学びの時空を共有しています。
 禅密功は、劉漢文先生が公開した密教由来の気功です。シンプルかつ優れた効果が評判となり一世を風靡。私は大学4回生で気功に出会った当初から禅密功を学ぶ幸運に恵まれ、約30年以上に渡って禅密を楽しんできました。大きな転機は1999年末。劉先生が来日されて直接習うことが叶い、以降、私の禅密観も気功観も大きく変わりました。
 そして、時を同じくして、私が事務局長だった関西気功協会が解散し、2000年に「気功協会」が誕生。劉漢文先生が2004年6月に他界されるまで、毎年濃密な研修旅行を重ね、禅密功は自ずと気功協会を支える大黒柱になっていきました。

大乗の気功
 私の初めての著作『からだの自然が目を覚ます 気功入門』(春秋社)は、劉先生に学んだ気功のエッセンスだとも言えます。先生の亡き後、本を書きたいという思いがムラムラと立ち上がり、鵜沼宏樹さんの紹介で、8月に神田の喫茶「さぼうる」で編集の上田鉄也さんとお会いし、9月に正式に執筆を開始、年末には上梓。約3ヶ月の超高速仕上がりに編集歴の長い上田さんも驚かれていました。
 「劉先生の禅密功」を学ぶことで、それまでどうまとめたら良いかわからなかった多くのことが、「自然」というキーワードで見事につながり、一つの本になっていきました。『気功入門』は禅密功の本ではないけれども、そのスピリットが詰まった本。2005年の清明節には、劉漢文先生の墓前に参り、『気功入門』をお供えして天に届けました。

 禅密功を共に学んだ方々の中には、「禅密は教えるのが難しい」とおっしゃる方がありました。確かに、いくつもの型を順々に示して真似てもらう気功であれば、教室で教えるには便利かもしれません。ところが禅密の動きは、「前後・左右・ねじり・自由」のたった四つ。最小限のシンプルな動作を通じて、天地自然と一体となる深い境地へとすっと至ってしまう。そんな気功を教えるのは難しいと思ってしまうのも無理はありません。けれども私は、劉先生が「誰かえらい先生がいるのではなく、私たちはみんな自然を学ぶ生徒だ」と常々おっしゃっていたように、謙虚に自然を学んでいく心持ちで、禅密功や他の気功、心身技法を伝えてきました。そうすると、教えること自体が学びになって楽しくなり、笑う、眠るといった日常のあらゆることがみんな気功だということに気づき、禅密を教えることのハードルはどんどん下がっていきました。
 「心がおちつくやさしい気功」も、誰にでもすぐできますが、とても禅密的な気功です。劉先生は「やさしくて簡単なことが大乗」とおっしゃっていました。ほんとうにその通りだと今は思えます。全ての人たちの幸せを願うのであれば、複雑で難しいことに孤高に挑戦しながら精神性を高めていくより、やさしく簡単に出来て、自分の力で幸せになっていく道を示すことの方が、より本質的なのかもしれません。

禅密の源流
 禅密功は、初期には「中原密功」と呼ばれていました。今の西安あたりを中心とした中原の地域にあった密教が禅密功の源流なのだそうです。
 劉先生はある時、禅密の源流について「スリランカから海路を通じて伝わった」と語っていました。スリランカは小乗仏教と思っていたので意外でしたが、調べてみると大乗仏教が盛んな時期があり、金剛智の弟子、不空金剛は、経典を求めて海路でインドとスリランカへ渡り、重要な経典を中国へ持ち帰ったようです。その不空金剛の弟子が、長安・青龍寺の恵果阿闍梨で、その正式な法灯を引き継いだのが日本からの留学僧、空海でした。
 お遍路さんや真言宗でよく唱えられる「遍照金剛」は、恵果が空海に授けた密号です。禅密功と、空海が日本に持ち帰った密教は、どこかで響き合っているのかもしれません。

宝の鍵
 空海は帰国後に淳和天皇の求めに応じて『秘蔵宝鑰』を記し、密教がなぜ最も素晴らしいかを説きました。その意味は「秘密の蔵の宝の鍵」。例えて言えば、「顕教は身の回りの塵を払うようなもの。密教は蔵を開き、隠れていた宝、誰の中にもある仏性がたちまちに開花し、秘められていたあらゆる徳性が証らかになる」のだといいます。

 禅密を中心とした気功協会での学びも、自らの裡にある、宝のような自然性に目覚めていくこと。「からだの自然が目を覚ます」という表現がまさにそれです。同時に平易で分かりやすく、日々の生活に根ざしたもの、すなわち入門的な気功だとも言えるでしょう。
 劉先生は、晩年にまとめたシンプルな気功の本『動静楽寿』の冒頭にこう記しています。
 「古の玄妙は難解であり、伝えられて既に幾久しく、 今、古きものより新しきものが生まれ、至る処、だれもが知るものとなる」。やさしく紐解かれた密教の精髄をもっともっと平易にして、たくさんの縁あるみなさんに体験していただきたいと思っています。
 コロナ禍で配信講座が始まり、自宅に居ながらにして学べる時代になりました。もちろん教室で直接お会いして共に学びたい気持ちはとても強くありますが、オンラインでも、みなさんと気と気が通じている実感があります。この時代を共に生きていることも、こうして同じ学びを共にするのも本当に奇跡的で、かけがえのないことのように思います。

先天の世界へ
 「役だつ禅密」の配信では、更に、禅密が野口晴哉先生の整体の智慧と溶け合い、「背骨」という天地の間にあるエネルギーの通り道が、くっきりと立ち上がっていくでしょう。
 整体では背骨を通じて体の状態を観て整えますが、禅密では背骨を動かし、背骨に気を通していきます。禅密と整体は、よく気のあったパートナーのよう。ちょうどよく補いながら高め合っていくところがあります。

 6月の第一回目の配信は、禅密の「先天の世界」への入口を開く内容でした。先天とは、生まれる以前からあるもの、赤ちゃんのように純真で、天然で、そのままの感覚です。その先天を学ぶには、努力や堅苦しさは無用です。「頑張って、急いで、もっとたくさん」ということとは反対の方向へ、ほがらかな心持ちで、夢中のまま流れていくのです。そのために、できるだけシンプルな内容にすることはもちろん、学び方も、心構えも、自然にする必要があります。そうすれば、得るものも大きく、本当に役立つ宝物となっていくでしょう。まだ受講が可能です。興味やご縁のある皆さん、どうぞこの学びの輪にお集まりください。

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