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心の健康「独り言」
「心の成長を」
昨年暮れから頻繁に母の所へ行くようになった。正月も、この連休も母を訪ねた。もうすぐ93歳になる母がとうとう寝たきりになった。気丈な母は、人の面倒になる事を嫌う。妻が、母の好きな料理を食べやすいように作り母に届けてくれる。母は、私の名前より妻の名前を呼ぶ回数が多い。「○○さん、手間かけさせてもうしわけないねぇ」「○○さん何してるの?」「○○さん、遅くなるから早く帰って」、常に人を気遣う母は、沢山の感謝の言葉を口にする。それは、介護ヘルパーさんにも同じだ。私は、ベッドで横たわる母の横にいてつくづく感じた。この両親の元生まれ、育てられたことを心から感謝した。「人を想う」、母のこうした生き方から私は心を育てられたのだろう。生真面目な父は、無口で仕事一筋の人だった。将棋が強く、近所の腕自慢も父には適わなかった。頭の良い父であった。その父から、仕事に対する向き方を教わった。今、この母の元を去るときが一番辛い。それまでの想いがこみ上げてくる。
昨日、11日に亡くなられた淡路恵子さんの生前語られたシーンが放映されていた。波瀾万丈の人生の中で何度も死にたいと想われたそうだ。でもできなかった。それは「子ども達がいたから」だと語られていた。この言葉が妙に心に残った。子を思う母の心が痛いほど解る。同時に、平成の今はどうかと問わざるを得なかった。絆という言葉が流行語のように使われたが、現代社会が最も必要としているのは、子どもに対する親の愛情なのかもしれない。
子ども達と接し、彼らのものの見方は昔と変わらず、物事を真っ直ぐ見ていると感じたことがある。都知事選で盛り上がっているが、前東京都知事であった猪瀬氏が都議会で連日追求されている場面を見て、子ども達は「大人のいじめ」だと酷評したのだ。お金の問題以上に、追求の仕方に問題があると感じたようだ。何故なら、大人達はお金のことしか考えていないと言うのだ。子ども達は、猪瀬氏が問題を起こした事実を知っている。その上で双方に問題があると断じた。横浜地検神奈川支部からの逃走事件も、テレビが騒ぎすぎだと断じた。教育現場では、これから「道徳教育」が行われる。しかし、こうした大人社会にモラルハザードの低下が見られるようではどうも大人の発する言葉に説得力がない。このままでは、子ども達は大人の言葉に耳を貸さなくなるだろう。言葉はウソをつく、人を騙し傷つける道具と化している。このままで良いわけがない。
93年生きてきた母が発する感謝の言葉にウソはない。私達は、心の健康にもっと気を付けるべきなのだろう。「子どもの為に死ぬことはできなかった」という故淡路恵子さんの言葉から、人は何を思い感じ取ることができるだろうか。今の時代、その逆のことが起きている。親族殺人も多発している。「人は何の為に生まれ、何の為に生きるのか」故やなせたかしさんのことばが胸に染みてくる。
2013/1/14
著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫
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