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算数指導

「記憶力と思考力」

「幼児は記憶の天才」ということばがあります。フラッシュカードを行うと、驚くほどの速さで吸収し、あっという間に覚えてしまいます。学ぶと言う意味はわからずとも、それは人として生きるための本能なのかも知れません。しかし、幼児教育だけでなく、小中学生の指導に於いて先生方から、「記憶」についての質問を受けることが度々あります。それが「記憶」と「暗記」です。

学習においてこの2つの違いは大きく、また、多くの誤解を生んでもいます。中には、暗記と記憶の違いを理解されないまま指導している幼児教育もあります。

  • 暗記=そら覚え、うる覚え

  • 記憶=物事を忘れずに覚えておくこと。もの覚え

この説明にあるように、「うる覚え」と「もの覚え」の違いはそのまま学力に比例していきます。例えば、三角形の面積を出す公式を暗記したとします。これで全ての三角形の面積を出すことは可能でしょうか。三角形の面積を求めるには、底辺と高さの関係が理解されていなければなりません。ここで、記憶を思考へとつなげる事が大切です。記憶にしても、暗記にしても、それを思考に繋げなければ意味はないのです。すると、暗記ではなくより確かな記憶へと導かなければなりません。現実には、記憶力で悩む子ども達は数多くいます。記憶力の差は、聞く力の差であり、見る力の差でもあります。また、興味を持つことと、疑問に想う事の差は、「記憶力+思考力」という学習能力に大きな差を与える事になります。

私達は、このような記憶と思考を学習の場で活かす為の指導を行っています。「読む力・書く力・聞く力・見る力・話す力」の5項目を掲げていますが、これは、教室の飾りではありません。これらは、記憶と思考に結びつき、もう一つの「心の教育」にも貢献しています。これらに加え、昨日も書かせて頂いた、イメージトレーニングとフィジカルトレーニングを平行し授業で行っています。数学習に於けるタイル指導は、見る、触る、操作するという基本手順を踏まえ、タイルを書く、分ける、合わせると身体(指先)を使った指導が入ります。具体的な操作は、実際に触れる事で感覚記憶を刺激します。自分で動かす、または先生のタイル操作を目で追うことで視知覚にも刺激を与えます。これは、後にタイルをイメージ化する際の源となります。

ある塾で、先生方の研修を兼ねて私の授業を見て頂きました。小学3年生に「4のタイルを4つ並べます。すると正方形が出来ます。では全部でタイルは幾つありますか。」という質問をします。かけ算の導入でもタイルを使用しますから直ぐに、4×4=16と答を出してきます。「では、このタイルが16ある正方形を半分にするとタイルは何個になりますか。」と質問をします。答が返ってくる前に、「どのように半分にしたのですか、ことばで説明して下さい。」と質問をします。ここで、ことばによる説明は、彼らの頭の中にタイルがイメージされなければ出来ません。また、説明には論理性が問われてきます。だから思考力が働くのです。この間、すべてことばだけのやりとりで実際にタイルを使いません。「たてに半分にしました。」「横に半分にしました。」と定番の答が返ってきます。「他にはありませんか。」との質問で「斜めにすると半分が出来ます」と答が返ってきました。「そのときに出来た形は何ですか」。「三角形です」「では、マス目くんに、全部で16個の正方形のタイルを書いて3つ書いてみましょう。」ここまでの学習で、子ども達は頭の中でタイルをイメージしています。そのイメージをプリントの上でまとめていきます。最後に、半分になっているタイルの個数を出す式を「ことば」で表現して貰います。勿論、この授業の前には「図形名称」のフラッシュカードが行われます。記憶とイメージ、そして、記憶と操作、最後に記憶と思考、子ども達の中にある暗記されたものではなく、記憶にあるものを引き出す授業、これは一つの例ですが、学習に於いて記憶は思考と結びつけることを前提に組まれるべきです。奇をてらい、大人でも難しい内容のものを暗記させるだけでは真の記憶力は育成できないでしょう。教育は間違いなく科学の時代に入っています。ただ誤った科学の引用だけは避けたいものです。

2013/2/8


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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