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算数指導

「考えさせる指導」

思考力を重視する新指導要領。考えることの源となる体験や経験をことばを通して表現し記憶に留める、場面やものをイメージするだけでなく、ことばを通した記憶は、単なる暗記と違い、次の情報により変化し加工され活かされていきます。いわゆる「記憶の活用」は、その記憶を使い、加工される等、思考を伴い大きく膨らんでいきます。

この考え方が、かつての「詰め込み主義」とは違う学習のとらえ方です。教育現場の悩み事の第一位が「記憶力」の向上でした。どうすれば記憶力が上がるのか、各先生方から「石川メソッド」と言われている指導の一つがフラッシュカードです。この基本は、リズムとテンポ、そして繰り返しと復唱なのですが、最も大切なことは、子ども達が「意識して見る、聞く」ということです。この状態が構成されていない場合、学習効果は期待できません。「見ていなくても、ちゃんと聞こえていますから大丈夫」などと意識というものを軽んじるケースも見受けられますが、フラッシュカードはBGMではありません。

思考には、イメージしことばにより表現するものもありますが、「もの」を使って思考することもあります。例えば積み木やパズルがそうです。ことばを使った抽象的思考と、ものを使った具体的思考、指先手先を使い操作する行動的思考は遊びの範疇で考えられていました。この遊び感覚こそ学習の元となります。よく教材にゲーム感覚ということばを使いますが、ゲームが主体になっている場合が多く、大人感覚で捉えた教材のゲーム性は飽きられてしまいます。シンプルなものが一番だと思います。

算数指導に於いて、私達が選択したタイルは、積み木やパズルと同じ感覚で使用します。具体物の代わりに、数字の代わりに使用します。1のタイルを手に取る、2のタイルを手に取る、当たり前ですがその大きさの違いを感覚神経を通し理解します。視覚神経である目でも確認できるでしょう。では、幼児が数字で1と3の違いを実感出来るでしょうか。触って感じる算数指導、幼児期の学習は感覚を鍛えるという指導も必要でしょう。

タイルを使用し加法、減法、乗法、除法と進むにつれ、タイルの動きを実感出来ます。加法の時のタイルの動き、減法の時のタイルの動き、この動きを反対にすると、この様に身体を使い計算を動作に変えると計算のイメージは更に広がりを見せます。乗法(かけ算)や除法(割り算)になると更に動きに変化が見られます。具体物をタイルに置き換える考え方こそ「抽象思考」であり、この置き換えの考え方が、絵で表したり、数直線やテープ図等に置き換えて考えることへと繋がるのです。その先には、□やXやYに置き換える文字式となりその広がりを実感出来ます。

パズルも大切な学習です。三角と三角で四角が出来る。三角と三角で大きな三角が出来る。このようなパズルによる構成を三角構成と言いますが、様々な形を作り出すことが平面図形を通した空間認識となります。平面なのに空間と思われるでしょうが、三角をひっくり返すなどの発想は、空間認識そのものです。ここでも扱われる図形はシンプルで、どれも図形の基礎ばかりです。子ども達は、複雑な形より単純な形を選択します。それは、色々な形に変化できるからです。「合わせたらこんな形になった。」「こうしたらどうなるだろう?」ことばで考える思考と、ものを通し操作することで行われる思考、ここに創造性や想像力が生まれてきます。幼児の算数指導は実に面白く、子ども達の奇想天外な発想に驚かされます。この好奇心をその後の算数指導に繋げていくことで算数好きな子どもに育つのです。

幼児期、言語指導と数指導、知覚分野の指導がそれぞれ組み合わさり、子ども達の生きた「知識の枠組み」を形成していきます。数指導は、その後算数指導となり、数学指導へと繋がり論理数学的知性として育くまれていきます。思考の左脳、閃きの右脳、脳全体が偏ることなく働く学習がこれからの子ども達をより賢くする事でしょう。

2013/1/31


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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