関西リバ邸サミットのコピー__3_

「ピン!」を頼りに進む。自分で首輪をつけていた元ひきこもり高校生

「ピン!」と心がときめく瞬間。

私の場合は、街を歩くと目についた洋服。次の季節の予感に「これを着てどこに行こうかな」と一気に考えがめぐります。インスタグラムで見かけた風景も。すっかり心を奪われて、次の休みに旅の予定を組んだりとか。

心がときめく瞬間に出会うと、目標や道筋がなくても心が躍る感覚を頼りにとにかく進んでいける気がします。

でも、そんな「ピン!」とくる感覚に身を任せられないときもあります。追いつかない仕事を進め、溜まった洗濯物を横目になんとか乗り切る日常。「ピン!」と心がときめいたのはいつだっけ…?

心が鈍感になっていくなかでも、「また会いたいな」と思う元高校生がいました。

2018年、高校2年生の冬。台湾・宮古島を巡り年越しを迎えるニューイヤークルーズに参加した「あんちゃん」。高校生を無料で送り出すこのクルーズの募集を見つけた時、一瞬で行こうと決断したそうです。

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「ピン!」とくる感覚を頼りに進むあんちゃんは、自分で何もできなかったときがあったと言います。

首輪つけられていないのに、つけられているみたいな感じ。

幼稚園のときは、めちゃくちゃ人見知りでした。お母さんの後ろに隠れてて、先生から連絡帳に「今日喋りました!」って書かれるみたいな(笑)。小学校に入学して、高学年ぐらいから学校へ行かなくなったんです。当時、クラス崩壊みたいなことがあって。

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授業時間が話し合いになり、クラスのみんながそれぞれに疲弊していきました。同じ頃、家のなかにも居場所がないような気持ちになることがあったそうです。

学校に行かないこともできるんだと思って、休みがちになりました。お父さんは「なんで学校行かないの?」と思ってたと思います。車に乗せられて、校門の前で降ろされたり。学校の先生は「別室登校でもいいよ」と言っていたんですが、結局は教室に戻されるということが続いて。大人を信用できなくなって、どこにも話せる人がいないなって。

別室登校や1日の途中から学校に行きながら小学校の卒業式を迎えます。中学校は、小学校からの友達がほとんどいないところへ行くことになりました。

「それもいいかな?」と思ってたんだけど、入学式以降、結局行かないまま。だから、中学校にはほんとに思い出がひとつもない。なにしてたんだろう…?って感じです。

不登校だったという人に話を聞くと、学校にいけない理由が言えなかったり、家族が不登校状態をどうにかしなくちゃと思うあまり仲違いしてしまうことも多いと聞きます。

私の場合は、だんだんお父さんが諦め始めてて(笑)。結局やめちゃたんですが、塾や習い事に行かせてもらえたり。でも、学校行ってなかったときも、「明日行けるかな?」みたいなのがずっと続いてて。絶対行かないんですけど、「明日は行けるかもしれない」と思ってて。

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学校に行ってないと、ちょっとグレちゃったりする人もいるじゃないですか。それもできなくて。反抗とかしてたんですけど、夜遊びとか友達外でつくるとか、そういうのしてなくて。なんだろう…?首輪つけられていないのに、つけられているみたいな感じ。自分で何もできないときがあって、ずっと家にいました。でも、いつかは変われるかなと思ってたんだと思います。


360日の300日ぐらいは寝てて。一番大きい出来事が、船に乗ったこと。

2016年4月、N高が開校ーー。

旧来の教育システム・教育方針を変える新しい形の「ネットの高校」というキャッチコピー。新しい時代を感じ、何年も前に高校を卒業した私もワクワクしたことを覚えています。

N高に入学したら、イベントがあったんですよ。家の近くだしと行ってみたら、そこで初めてネットで話してた友達や先生に会って。楽しいと思いました。そのあと、他の地域のイベントも参加するようになり、いろんな人と話すようになって。N高って、いろんな子がいるんですよ。すごい子もいっぱい。

わたしはずっと家でゴロゴロしながら、スマホみて、勉強するみたいな感じでバイトもしてなくて。でも、なんかしてみたいな。とりあえず、地元から出たいなって。

高校2年生になる頃から、そう思うようになったあんちゃん。高校生向けのプログラムを探し、地元で体験できる機会に参加してみたり、大阪で行われた国際交流プログラムに参加したりと行動範囲が広がっていきます。

一番大きい出来事が船に乗ったことだったんです!

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応募の際は、「自分の力だけで世界を広げるにはまだ力が足りないからです。色々なことに挑戦したいと思っていても、何をすればいいのか初めの一歩を踏み出すことが難しく迷っていました。これからもっと成長できるように想像もしなかった自分になれるように背中を押してほしいです。」と綴られていました。

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(乗船後には、手書きのレポートが届きました。)

ークルーズから帰って来たあと、一度D×Pの事務所を訪ねてくれたことがあったよね。その時には、「大人と話すのは、楽しい。同世代はあんまり得意じゃない…」と言ってなかったっけ?

あーいいましたね!たぶん反動だと思います。信用できなくなったときから、ずっと話してなかったから。優しい人に出会ってどんどん自分で話していくようになって。つんってしてたのが、今では犬みたいな感じ(笑)。自分から寄っていけるようになって、それがけっこうよかったなって思って。

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(ピースボートから帰ってきた後、事務所に遊びにきたあんちゃんに遊ばれている写真(笑))

ーその時は同世代はあんまり得意じゃなかったんだね。

高校のときは、同い年の子とかと話すのが苦手で。なんでかわかんないんですけど、中学の頃から全然知らない子でも、陰口言われてるように感じることがあって。そういうのがずっと続いてて。だから高校の時は友達がいても、ずっと一緒にいると不安になっちゃって。

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ーそうだったんだ。ピースボートでは同世代と一緒にいる機会も多かったよね。

船も自然と10代の子が一緒に集まるようになってて。一緒にいたんですけど、途中からはいろんな人に話にいくようになって、一人だけめちゃ友達できてるみたいな(笑)。

この前、同じ船に乗った子に話したんです。「あのときは、こうだったんだよね」って。でも、「そこがいいとこだよね」と褒めてもらえて。「いろんな人に話に行くのを見てて、すごいなって思ってた」って言ってもらえて嬉しかったです。

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一番おもしろかったです。あの9日間が、人生で一番。360日の300日ぐらいは寝てて。ずっと、パジャマ着て寝てて、お父さんが帰って来たら、ご飯食べて。家事もしないし。いま、こんなたくさん喋ってるけど…いまやっとふつうの人間になったので。高校生だけど、家にいてニートだったから。バイトも一回もしたことなかったんです。しようとは思ったことはあるんですけど、勇気が出なくて。外の世界と関わることに抵抗があったんです。

自分で何もできなかった中学の頃から、比べたら変わった

最近は、めっちゃ変わったと言われます!自分で何もできなかった中学の頃から比べたら変わったって思うんですが、周りのひとからは見ると高校からも変わったみたい。アヒルだと思ったら、白鳥だったみたいな例えをいっぱいされて、嬉しかった〜。

ー変わったって言われるのは嬉しいんだね。

うん、その時代から言われると。そのとき、どうしたらいいかわからないときで、どう思われるんだろう?と思うと喋れないから、相談しようもないみたいな感じだったんです。

ーいまは、地元を離れファッションを学ぶ大学に通ってるんだよね。

そう。ファッションの仕事をしたいなって思ってたけど、学びたいと考えたのは今通っている大学が開講すると知ったから。行きたいけど、勉強してないしどうしようみたいな感じで。ちょうど、ピースボートに乗ったあとだったから旅もいいなと。だから、全然確定してなかったです。高校3年生から受験するときまで。

N高で企画やアイデアを考える楽しさを知って、ビジネスに興味を持って。でも、大学の募集定員が少なくてビジネス学科は落ちちゃって。絵が下手だし、作ることに苦手意識があって、ううん〜って思いながらクリエイション学科に入ったんです。でも、いまは楽しい。将来的にはビジネスのほうがやりたくても、クリエイションで学んでたらもっとできることがあるかなと思ってます。

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(「クラスではどべぐらいに下手で、いまは泣いてますけどね。毎日できない、こんなのできないって(笑)」というあんちゃん。)

最近の授業では、時間をテーマに対比するものをふたつ考えて、紙の服をつくるっていう課題に取り組んだそうです。

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(「瞬間」をテーマにしているそう。)

わたし的には、「瞬間」はしゅって、すぐに終わっちゃう感じを出したくて。この服は、全部三角でつくっているんですけど、尖っている感じとか、通り過ぎちゃう感じを表現して、もう一つは「永久」をテーマに丸みだして続くように。終わりがないような感じにしたんです。

今までアートって理解できないなと思ってたんですけど、自分が一から考えると面白いって思いました。このデザインはどのようにつくられたのかを、見たり自分で分析したりするのが面白いです。

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寄付で高校生の背中を押してみませんか?

わたしたちは高校生に海外に行くきっかけを届けていますが、一方で旅に出る高校生に連れ出してもらえるような感覚があります。高校生の目線で、世界や自分自身を見つめるような不思議な体験です。

寄付で参加するみなさんのことを「サポートクルー」と呼んでいます。高校生の目線を通じて、ぜひ、あなたも一緒に船に乗り込んでみてください。



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