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いろいろな声を聞かないスキル


みんな想いのリーダーシップと組織運営


私はNPO・市民活動・地域活動のリーダーたちと話す機会が多い。そして、相談されることもすごく多い。それは15年以上NPO活動をしてきた私の「役割」だと思っているし、誰にもどこにも相談できないようなことを持ち込んでくれることに喜びとありがたさを感じる。(「喜び」と「ありがたさ」って変な表現だけど、相談できる場所があって、相談できてよかった、という感覚。そんな難しい状況に自分が役に立てる喜び)

NPO・市民活動・地域活動のリーダーの中には、心優しくて、みんな想いで、いろいろな人の声に耳を傾けながら、関わりのある多くの人を尊重していこうとするスタイルを持っている人が多くいる。これはNPO・市民活動・地域活動の必然でもあり、この活動・コミュニティが受益者への価値提供のみならず、関わる(働く・活動する・応援する)人たちの自己実現や癒やしやエンパワメントの場でもあることを同時に含んでいることが多いからだ。ただの生業(なりわい)ではなく、問題意識や当事者性を共有して関わっていることが多いのである。

お金が介在の中心である道具的関係であれば、事はそんなに複雑にならないが(時に割り切りもしやすいが)、それぞれが例えば「環境問題」や「教育」や「子育て」などについて考えや想いを持っていて、相互に共感・尊重し合いながら関わる人間的関係であれば、“たまらない感動や喜び”と同時に“組織運営の複雑さや難しさ”は増していく。主要な判断基準が売上・利益などではなくて、関わる人たちの多様な意見や考えを尊重しながら判断することを求められやすい。

そうなると、いろいろな声に耳を傾ける。いろいろな人の意見や考えを尊重しようとする。そのこと自体はとてもとても良いことなのだけど、エネルギーが落ちているときとか、あまりうまく行っていないときには、沈滞の構造的要因にもなりやすい。「あの人はどう思っているだろう」「あの人はこのことについてどう思うかなぁ」といろいろな声や意見が気になってしまって、手を打てなくなったり、エネルギーを失ったり、力強い判断ができなくなったりする。

再起動のとき。だからこそ、ソース(源泉)に耳を傾ける


炎上を覚悟で言うけど(炎上なんかしないか・笑)、「いろいろな声を聞かないスキル」を養ってほしい。活動していたらいろいろな意見があると思うけど、時にかわして、時にスルーして、たくましく前を向いて行ってほしい。代表・リーダーにエネルギーがあって、団体がうまくいっているときは多様な意見を汲んでいった方がいいと思うけど、活動が縮小して元気がないときに多様な意見を汲んでいたら船が前に進まない。あなたのエネルギーは団体のガソリン。ガソリンないままにいろいろな意見を汲んでいたら船頭多くて船動かずになる。

前のコラムでも書きましたが、リソース(経営資源)が多様で不安定で、気持ちで動いている部分も多い非営利組織においては、「真ん中で踊り続ける人」の存在が重要です。そのあなたがいろいろな声に耳を傾けすぎて気持ちがしぼんでいってしまっていたら、船ごと沈んでしまいます。自分のソース(源泉)にもっともっと耳を傾け、そのソースに共感してくれる仲間の声を多めに聞いて、自信と確信を取り戻しながらエネルギッシュなあなたでいてください。

いろいろな声を聞かないスキル。それはリーダーであるあなたを守ることにもなるけど、それ以上にあなたという泉がエネルギッシュになり、その泉から活動が再起動することによって、世の中に価値が生み出され、多くの人の笑顔や居場所や生きやすさにつながるかもしれない。あなたの元気と行動力は、社会が良くなることに変換される可能性を含んでいるのだから、ちょっとわがままにでも我が道をしっかり進んでください。いつも応援しています。またいつでも頼ってください。

by CRファクトリー 呉 哲煥

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