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BTS "For Youth" この一生を君に捧げる ~日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.050

いつであろうと帰って来るから
ねぇ、心配しないでよ
僕らが歩いているこの道が全て
皆正しいものとなるだろうから

For Youth


もしも
僕が君と出会わなかったら
僕はどんな姿だろうか? ねぇ
いつでも君を想っているよ
口癖になってしまったその言葉(本当だよ)


目を覚ますと10年前
論峴洞ノニョンドンをうろついていた
あまりにもあっけなく涙して、
やたらと訳なく笑っていた頃
たくさんの季節が過ぎて
やっと振り返ってみた時
君はいつも
僕らと一緒にここにいて、
毎瞬間が永遠だったんだ

計り知れない心
上手くいっていなかった僕の人生
枕に頬を預けては
目覚めぬように願っていた夜(起きて!)
今は君がいるこの場所が、
ここが 新しい僕の故郷
いつであろうと帰って来るから
ねぇ、心配しないでよ
僕らが歩いているこの道が全て
皆正しいものとなるだろうから


もしも
僕が君と出会わなかったら
僕はどんな姿だろうか? ねぇ
いつでも君を想っているよ
口癖になってしまったその言葉(本当だよ)
君は 僕の最高の友
この先 生涯ずっと


一、ニ、三
僕らの調和
忘れないよ
全ての瞬間
僕の春の日を担ってくれた花
おかげ様で僕らしくなったよ
僕を 慰めてくれた
君の その数えきれない言葉
それが僕を作り上げたんだよ
そう 君は僕の若さ
また、僕の青春
ありがたい友
僕の誇り、僕の天国、
そしてまた 愛

辺り一面真っ暗だったね
その狭間の 一筋の光
本当にあなたで良かった 本当に
一緒にいることで
僕らは輝くんじゃないか

走って
また 転んで
起こしてくれて
倒れるも 嗚呼
その手を 差し出してくれるかい?
何度だろうと起き上がるだろうから
疲れたら ちょっと休んでもいいよ
君を待ちながら いつも
ここで 思い描いている
僕らが直面していることについて
本当は言いたくないけど でも…


もしも
僕が君と出会わなかったら
僕はどんな姿だろうか? ねぇ
いつでも君を想っているよ
口癖になってしまったその言葉(本当だよ)
君は 僕の最高の友
この先 生涯ずっと


時を戻すことができたらいいのに
全てのことが簡単だったあの頃に
もっと たくさん言えば良かった
その 言葉

僕は君と一緒だよ
残りの人生 全てを懸けて


君は僕の人生の安らぎ


韓国語歌詞はこちら↓
https://music.bugs.co.kr/track/32563087

『For Youth』
作曲・作詞: RM , Imad Royal , Rogét Chahayed , Blaise Railey , Drew Love , 4rest , j-hope , SUGA , Hiss noise , SLOW RABBIT , "Hitman" Bang

※2022.10.16に和訳最終行を改定(詳細は記事末尾に記載)

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今回は、2022年6月にリリースされたアンソロジー・アルバム「Proof」Disc3の最終トラックとして収録されている "For Youth" を意訳・考察していきます。

ディスク3枚全48曲に渡るアンソロジーの大トリであるこの曲は、ゆったりとした3拍子、7人の声色を活かしたボーカル構成が聴き心地良く、様々な意味で(一旦)「幕を下ろす」瞬間を演出するにふさわしい1曲となっています。

音楽番組でのパフォーマンスは横一列に並んで立った上でスタンドマイクを使用しており、歌って踊れる彼らが敢えてこの曲調、この歌唱スタイルを選択することの意味を考えさせられもします。

これまでの楽曲ではあまり見られなかったピアノとコーラスをフィーチャーしたバンドスタイルには、ジャズやブルース、またはドゥー・ワップの香りをも感じます。
ここまでスローなロックバラードを伸びやかに歌いあげるボーカルラインと、絶妙なアドリブ感で難しい場所に音を置いていくラップライン、それぞれの技が結実した、彼らの音楽性を贅沢に味わえる楽曲です。

発売前に発表されたRMのコメントにはこうあります。

'Proof'는 데뷔 9주년을 맞은 방탄소년단이 챕터1을 마무리하는 특별한 앨범이다. 지난 9년을 함께해 준 팬들을 위한 메시지가 중심인 만큼 가사에 가장 공을 많이 들였다
("Proof" はデビュー9周年を迎えた防弾少年団がチャプター1を仕上げる特別なアルバムだ。過ぎ去った9年を一緒にいてくれたファンのみなさんの為のメッセージが中心である分、歌詞に最も功(成し遂げるための努力)が入った。)

https://n.news.naver.com/entertain/article/109/0004634068



1.青春の輝き

―"For Youth"
このタイトルには一体どんな想いが込められているのか。

■For ARMY

まずひとつは、楽曲がARMYの合唱で始まることからもわかるように、タイトルの文字列の中にも含まれている「For You」にあります。

ARMYあなたのために

そんなシンプルでありながら奥深いメッセージがこの楽曲にはあふれています。

「もし君に出会わなければ」という問いは、"길(Road)" の歌詞に通じるものがあります。

俺は変わっただろうか 別の道を選んだならば
立ち止まり振り返ってみたならば
俺は何を見る事になるだろうか
この道の終わりで 君が待っているその場所で

https://note.com/nozomiari/n/n29d988bf5abd

もし歌手を目指していなければ、もしアイドルにならなければ、もしここまで続けていなければ…
「そこ」が分岐点であることを知りながら通り過ぎることができる人はまずいないでしょう。「そこ」から遠く離れ、景色が見渡せるようになって初めて、自分が歩いてきた道が枝分かれしていたことにやっと気付くのです。

とにかく前だけ向いて走り続けてきた、走り続けるしかなかった彼らが今、立ち止まって来し方を振り返る。この時間、この行為にどれ程の重みがあるのかを想像しなくてはならないのだ、と私は思います。

そして、もし出会わなかったらという問いかけを経て、今現在ARMYとの関係をどう感じているかもしっかりと描かれています。
※引用文につけた和訳は直訳

사방이 깜깜했지(四方が真っ暗だったね)
그 사이 한줄기 빛(その隙間 ひと筋の光)
정말 그대여서 다행이야 참(本当にあなたで幸いだよ 本当に)
함께임에 우린 빛나잖아(一緒にいることで僕らは輝くんじゃないか)

https://music.bugs.co.kr/track/32563087

あなたに会えて本当に良かった

SUGAが担当しているこのパートの「暗闇と光」で構成された世界観は "Save ME" の歌詞世界を継承していると言えます。
(ARMYを「너(君)」ではなく「그대(あなた)」と呼んでいる点が個人的にポイントです。→参考:韓国語の「あなた」の使い分け

"Save ME" など、バンタン楽曲で頻出する「手を差し伸べる」というアクションがここで登場します。※引用文につけた和訳は直訳

달리고(走って)/또 넘어지고(また 倒れて)
일으켜주고 쓰러지기도 oh(引き起こしてくれて 倒れるも)
그 손 내밀어 주겠니(その手を差し出してくれるかい?)
몇 번이든 일어날 테니(何度だろうと起き上がるだろうから)

https://music.bugs.co.kr/track/32563087

ARMYが差し伸べてくれる手が、止まりかけた足で前に踏み出す力を与えてくれた。その支えに対する感謝の想いが伝わってきます。

同時に、ARMYが「永遠にそばにいてくれるとは限らない」という現実にも彼らはしっかりと目を向けています。※引用文につけた和訳は直訳

힘들면 잠시 쉬어도 돼(しんどければちょっと休んでもいい)
널 기다리며 언제나 이곳에(君を待ちながら、いつもここで)
Daydreamin' bout us facin' ※1
(空想している 僕らが直面していることについて) 
Really don't wanna say it but(本当は言いたくないけど)

https://music.bugs.co.kr/track/32563087

※1(2022.6.28追記)
→Daydreaming about us facing
・Daydream【動】空想する、ぼーっとする
・facingはface【動】の動名詞で「面すること」「顔を向けること」「対抗すること」「直面すること」の意
「~していること」を表す方法は他にも「to do(不定詞) 」がありますが、
☆不定詞(to do~)→まだ実現していないこと
☆動名詞(~ing)→すでに起こっていること

と意味がことなるとのこと。facingは動名詞なので「すでに起こっていること」を指しています。
なので、動名詞であるfacingを「(私たちが)向き合うこと」とし「(いつか)僕たちが向き合うことを夢見て」と訳すのは幾分矛盾があるかと思います。
私はfacingを「(現実に)直面していること」として、今現在すでに目の前にある問題についてぼんやり考える、というニュアンスで訳すことにしました。

参考:不定詞(to do)と動名詞(~ing)の違い

「しんどければ休んでもいい」とは誰に向けた言葉なのか。
防弾会食の後で考えると彼ら自身への言葉とも捉えることができそうに思えますが、ここではARMYさんたちへ向けられた言葉とする解釈を私はしようと思います。

それは、 "EPILOGUE : Young Forever" にこんな歌詞があるからです。

いつまでも僕のものではない大きな拍手喝采が
こんな僕に言うんだよ 平然と
「君の声を高めて もっと遠くへと」
永遠の観客なんかいなくても 僕は歌うつもりだ

https://note.com/nozomiari/n/n642a8487ae0a

ひとつの物事が長く続いていく上で必ず訪れるであろう断絶や離別について、この時すでに彼らは認識し、覚悟をしていました。それは彼らがいずれ兵役につくという現実も含め、あらゆる場面で起こり得ることです。

楽曲 "Her" で「俺は多分'あなた'の愛であり憎しみ/'あなた'の天国であり地獄/時に誇りであり屈辱」としている通り、彼らはARMYさんたちが自分たちを理解してくれる「最高の友」であると考えていると同時に、その全ての気持ちに100%応えることはできないのだということを認識しながら活動しているのです。

「自分を愛そう」と声を上げている彼らが、ARMYの期待の全てに応えられない自分にジレンマを抱えているという状況はある意味矛盾しており、相当の葛藤がそこにあったに違いないのではと思います。

それでも彼らが信じてくれる人の為に精一杯活動を続けてこれたのは、彼らが「自分の好きなこと」を職業にしたから、職業にできたから、ということがひとつの理由になっているのではないかと私は思います。

好きなこと…とりわけ芸術・芸能に関しては誰もがなろうと思ってなれるものではないことを、練習生として生きた経験のある彼らはきっと身をもって知っています。尚且つその後成功を収めることは自分自身の能力だけでは成し得ないことも。

好きなことで成功「させてもらった」のに、疲れたから休むだなんて自分たちの口から言ってもいいのだろうか、いや、言えない。そんな後ろめたい気持ちが会食でのナムさんの涙の訳のひとつであるのではと思います。

そして、自分たちがこうして「好きなことを続けていくこと」の難しさを知っているからこそ、ARMYたちが防弾少年団を「好きでい続けること」の難しさにも目を向けているのではないでしょうか。

―――活動のペースがこれまでと変化することによって自分たちを追い続けることに負担を感じるなら、ARMYだって一旦ARMYを休んでもいい。自分たちはどんな形であっても音楽を続けながら「君」を待ち続けるよ。

そんな想いが「しんどければ休んでもいい」という言葉には込められているのではないかと思うのです。

ユンギが「好きなことを長く続ける方法は好きになりすぎないこと」と語っている(出典)のも、同じ感覚の元に生まれたひとつの「方法」なのだと思います。

また、「本当はこんな話しなくないんだけど…」とあるようにこの歌詞には、出来ることなら何も変えず、何も変わらずに続けていきたい。でも、その気持ちだけではそれを成し得ることはできない。…といった、今の複雑な心境がありのままに吐露されていることがうかがえます。

きっとARMYならこの気持ちをわかってくれる。
そう堅く信じて書き綴られた「For You」を、私はちゃんと受け止めきれているだろうか。そんなことをふと考えてしまいます。


■For Youth

タイトルをありのままで理解しようとするならば、それは間違いなく
For Youth(青春のために)
ということになるでしょう。

青春、つまり、ここでナムさんの定義を借りるならばそれはイコール〈花様年華〉ということになります。

花様年華:人生で最も美しい瞬間、青春。

https://twitter.com/BTS_twt/status/589403679079276544

彼らにとって防弾少年団のチャプター1とは、それ全体が「青春」であり〈花様年華〉であったと言えるのではないでしょうか。アルバムコンセプトの枠を超えて、彼らのこの9年の歩み自体が「青春」として、〈花様年華〉として刻まれた。そう捉えることができるのだと思います。

歌詞の中ではj-hopeのパートで「青春」に向けられた言葉が並びます。
※引用文に付けた和訳は直訳

하나 둘 셋/우리의 합(1、2、3 僕らの調和)
잊지 못해 모든 순간 Oh(忘れないよ 全ての瞬間)
나의 봄날을 책임져준 flower,(僕の春の日を担ってくれた花)
덕분에 나다웠어(おかげさまで僕らしくなったよ)

https://music.bugs.co.kr/track/32563087

9年間のほとんどの時間を「7人」の調和を第一に過ごして来た彼ら。その全ての瞬間を忘れないでいたいと思えるほど、彼ら自身にとっても「7人」の防弾少年団がこの上なく大切な存在であることはこの歌詞からも明白です。

「책임지다=責任を負う」→「担う」と意訳し、「僕の春の日」は「僕の青春の日々」であると私は解釈しました。
そして「flower」は、花とも華とも書くことができますので、「青春の日々を担ってくれた花」=〈花様年華〉のことであるのだと思われます。
〈花様年華〉シリーズから始まった「魂の地図」の一連の制作活動を通じて、彼らは自分自身を見つめ直し、自分自身を愛する術を得ることができました。おかげで「僕らしくなった」と想いを馳せているのです。

「若さ」の代名詞である10~20代の日々のほぼ全てを丸ごと捧げた「防弾少年団」とは、彼らにとってそのまま「青春」という言葉に置き換えられる掛け替えのない日々であったのだと、「For Youth」としてしたためられた言葉たちによって、あらためて思い知らされるのでした。


2.この一生を君に捧げる

ここで一旦、アルバム「Proof」タイトル曲の "Yet To Come" MVについての話をさせてください。

"Yet To Come" のMVは「過去」への感謝と愛情と慰めが込められており、メンバー各々過去の作品に関連する要素を取り入れた衣装やセッティングで画角に収まっているのも大変胸熱でした。

その中で際立っていたのがVが持つ赤い一輪のバラとスーツスタイリング。
どの曲?どの作品のオマージュ?としばらく自分でも考えたり、ARMYさんたちの考察をのぞかせてもらったりしていたのですが、これだ!というものには出会うことができなくて。

こんな時、私はすぐ花言葉を調べてしまうタイプです(ヲタク習性)。
いくつかのサイトを回ってみると、概ねこのような感じでした。

  • 1本のバラ…「あなたしかいない」

  • 赤いバラ…「あなたを愛しています」

ここで私は歌詞に「僕には君しかいない」「Best of me」とある "Save ME" や "Best Of Me" を思い浮かべました。ティザーを観た直後それに気付いた時は興奮気味にTwitterでつぶやいたりもしたのですが、冷静に考えるとやはりいまいち決め手に欠けます。

あらためて調べてみると、赤いバラは過去の作品のMV("Boy In Luv" "Just One Day(하루만)" )やステージパフォーマンス("Boy With Luv") でも登場しているのですが、テテのばっちり決めたスーツスタイルの理由はなんだろうなぁ、と腑に落ちず。

そして今回、"For Youth" の歌詞を全編翻訳してみて、ああ、そういうことかも…という結論に達しました。

赤い一輪のバラとスーツスタイル。
見たまんまです。これはおそらくいわゆる「プロポーズ」的な要素なのではないでしょうか…?

I'll be with you For the rest of my life
(僕は君と共にあるだろう 僕の人生の残りの間ずっと)

https://music.bugs.co.kr/track/32563087

「the rest of my life(残りの人生)」というフレーズは、ずっとずっとこの気持ち(君と共にある)は変わらないよ、という真摯でロマンチックな想いを託すために選ばれた言葉であり、それをビジュアル化する役に選ばれたのがVその人なのではないでしょうか。そしてあのスーツスタイリングと薔薇の花は、僕には君しかいないと一生を捧げて共にある事を誓う「プロポーズ」のときめきを一瞬で連想させるための仕掛けだったのではないか、と私は思いました。

本来胸の内に在り続ける実体のない想いに、どんな名前(言葉)を与えれば正確に外の世界に伝わるのか、それを視覚的に誤解のないものにするにはどうすればよいのか。
こうして綿密に練り上げられたであろう数秒間の撮影ために、どんな苦労があったのかはMV Shoot Sketchで明かされています。砂嵐と健気に闘うテテ…結局荒天で本撮影は翌日に延びてしまうわけですが、でもあの潮騒が聞こえる砂嵐のカットがティザーの冒頭に入るか入らないかでは、物語の奥行きに大きな差が出たのではないかと思います。

こうしてみると、"Yet To Come" と "For Youth" の2曲は一対の翼のようです。

未来について真正面から怖れずに語り、音楽と共にあった過去を肯定する "Yet To Come"。
懸命に駆け抜けてきた過去を振り返り、ARMYと共にある未来を想う "For Youth"。

この2曲は、1曲ずつで聴いても十分にそのメッセージが伝わってくるのですが、2曲の関係性について考えることなしにはその真の言葉を聞くことができないと言えるのかもしれません。

そしてその真の言葉こそが「ARMY」に対して、また「音楽」に対して捧げられた「一輪の赤い薔薇」の花言葉であり、「I'll be with you For the rest of my life(僕は君(ARMY/音楽)と共にあるだろう 僕の人生の残りの間ずっと)」に他ならないのではないでしょうか。


3.1+7のはてしない物語ネバーエンディング・ストーリー

"For Youth" のクレジットは、作詞・作曲共に「RM」の名が筆頭に挙げられています。
今回はナムさんによるV LIVEでのアルバムビハインドエピ語りは今後も無いのではないかと個人的には確信しているので(歌詞以上のことは語らないと決めていそうな気がします)、どれくらいの比重で彼がこの楽曲の制作に関わっていたのかを唯一推し量れる材料がこのクレジットの掲載順なのではないかと思っています。


■正しい道

"For Youth" のナムさんパートには、バンタン楽曲を語る上で外せない「道」というキーワードが用いられています。※引用文に付けた和訳は直訳

우리가 걷는 이 길이
(僕らが歩いているこのが) 
모두 다 길이 될 테니
(全部道理になるだろうから)

https://music.bugs.co.kr/track/32563087

キル」という単語には「道」という意味の他に「道理」という意味が備わっています。(参考
道理とは「物事の筋道」であり、「筋道」とは「物事を行うときの正しい順序」とあります。(参考)

なので私は上記引用部分の2回目の「길」を「道理」と捉え、「僕らが歩いているこのが全て/皆正しいものとなるだろうから」と意訳しました。

一般人が「だめだったら止めればいい、引き返せばいい」と思い切って挑戦するのとは訳が違い、その一挙手一投足が、一言一句が世界中から瞬時に注目されるワールドワイドグループが、自分たちが選ぶ「道」が「正しい」か否かを見極めながら先へと進むことがどれだけ壮絶を極めるか、考えただけでも息が詰まりそうです。

「信じる夢に向かって進む」からと言って、その道が正しいかどうかなんて誰にもわかりませんし、それは彼らにとっても同じことであるはずなのに。

決して順風満帆とは言い難かった芸能生活を送る中、幾つもの眠れぬ夜を過ごした後にやっと手に入れたARMYさんたちのいる「a new home to me(僕にとっての新しい家(故郷))」。今はそれがあるから、もうどの道を選んでも自ずと正しいものになる。どの道を進んでも必ず「home」に帰って来るから、心配しないで、と、彼は歌っています。

これを聴いたらもう、今後彼らがどんな選択をしようと「きっと大丈夫」と思えるような気がしてくるのです。


■人生の休息

見出し2.で取り上げた「For the rest of my life(僕の残りの人生の間ずっと)」というフレーズにある通り「the rest」と冠詞theが付くRestは「残り」という意味になります。

ところがこの歌詞の最終行で、その冠詞theは取り払われることになります。

冠詞が付かないRestは「休み・休憩・休息」と意味が変化するようです。

(→参考:restの意味・読み方・使い方)

ほぼ同じ意味を持つ単語「Break」との違いについての解説には、Breakが「ひと休み」や「(一旦)休憩」といった比較的短い時間の休みに対して使われるのに対し、Restは「(疲労回復等をはかるために)ゆっくり休む」「休息」というように長めの休みを指すとあります。

参考:BreakとRestのニュアンスの差

防弾会食の公開を経た今、このRestにどんな想いが込められているのかを想像するのに難しいことはありません。おそらくこの最後の一行には、防弾少年団のチャプター1を締めくくる大切な「ピリオド」の役割が与えられているのだと思われます。

Rest of my life(僕の人生の休息)

https://music.bugs.co.kr/track/32563087

ARMYの皆さんがご存じの通り、彼らは決して活動を休止する訳では一切ありません
このRestは、9年間ひたすら格好良く走り続けてきた彼らが、自身のこの先の残りの人生全部(the rest of my life)を俯瞰した上で必要だと判断したひとつの大切な中継地点なのです。

アルバム「Proof」において「歌詞に最も力を注いだ」と語ったナムさんがどうしても伝えたかったことは、本当に歌詞の中に全てあったのだと実感しました。

ピリオドの先には、また新たな物語が既に書き進められています。
しかも、これまでは1つだったストーリーが新シリーズになったとたん更に7つ増え、8つの時系列が同時進行で進んでいくのですから、読む側は相当の覚悟をしなければなりません。

このはてしない物語で彼らは、いずれ砂漠を越えて海にたどり着く日が来るのか、はたまた、宇宙に飛び出して惑星間コンサートを開くのか…、じっくり読み進めてみないことにはわかりませんね。
めっちゃくちゃ楽しみです。絶対長生きします。


最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

💜


2022.10.16 追記
昨晩(2022.10.15)、釜山コンを観て思った事。

この記事を書いた当時は会食を観た直後だったこともあって最終行のthe無し「Rest」を「休息」とすることしか頭になかったのですが、楽曲をパフォーマンスする彼らを観ていると同じtheのつかないrestの意味の中でも「安らぎ」の方が合っているのかも…と思い至りました。

(→参考:restの意味・読み方・使い方)

Rest of my life((君=ARMYは)僕の人生の安らぎ)

釜山コンエンディングでバックモニターに大写しになったこの一行。
うん、この方がしっくりくる!!

…ということで、冒頭の和訳(意訳)も更新しました。

これでより一層、この楽曲にどれほどの愛が込められているのかがわかる意訳となれたのではないかと思います。(あくまでも個人的見解です)